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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
324/1003

~第323夜~「退屈な星のサルサラ(その11)」

 アルマ・フォリア老人に招かれた部屋には、白いテーブルクロスの敷かれたテーブルが1つとイスが何脚かあるだけ。

 テーブルには、すでにお茶の準備が整えられており、紅茶の入った大きなポットに人数分のカップ、それに自由にとって食べられるようにとお菓子までが並んでいます。

「さぁさ、どうぞかけてくださいな」

 言われるままイスに座るサルサラとソルタリオ。

「さて、と。どのようなご用件じゃったかな?」

 老人の問いに素直に答えるサルサラ。

「あなたに会いに来たんですよ。アルマ・フォリアさん」

「おお、そうじゃったな。して、どのような話をすればよいのかな?」

 今度はソルタリオが答えます。

「実は、僕ら。あなたの作品に触れて、いたく感動して。いや、感動って言っていいのかな?なんだか不思議な感覚に包まれたんです。頭が混乱するというか、頭の中に霧がかかるというか。とにかく、よくわかんないなと思って…」

「フム。それは、正しい感覚じゃな。いや、芸術に関して『これが正解!』というモノはあり得んのじゃが。その感覚も1つの正しい感覚と言えるのではないかな?」

「頭が混乱するコトが?」と、サルサラ。

「そう。混乱したり、感動したり、寂しさを感じたり、怒りがこみ上げてきたり、やる気が出たり。時に芸術は人を傷つけてしまうコトさえある。じゃが、それら全て含めて“正解”なのじゃよ」

「それが芸術の役割?」

 ソルタリオの問いかけに、老人はウンと大きくうなずいて見せます。

「その通り。芸術は人々の感情を呼び起こさせる。心の底に眠っておる経験やら思い出やら感情やら、本人が忘れてしまっていたモノまで引きずり出してしまうのじゃ。日常では決して味わえぬ感覚をな」

「でも、それだと日常生活に支障をきたしませんか?」とサルサラが言います。

「もちろん、影響がないわけではない。たとえば、絵を見たり音楽をいたりすると、懐かしさや切なさを感じるコトがあるじゃろう。ふとした瞬間に涙を流すコトもある。これは、脳の記憶回路に作品が直接アクセスしとるわけじゃ」

「それがいい影響なら構わないけど、怒らせたり傷つけたりってのは違うんじゃないですか?」

「怒ったり傷ついたりするコトも、人間が本来持っておる自然な感情なのじゃ。現代社会では、とかく『人を傷つけないように』『人に迷惑をかけないように』と育てられるが、果たしてそれは健全な人間の生活だと言えるかのう?」

「それは…」と、言いかけて、サルサラはメディア王であるチャルラタンの言葉を思い出していました。


(そういえば、チャルラタンさんも似たようなコトを言っていたような…)


「人と人とがケンカして、仲直りして、以前よりも(きずな)が強まるみたいな話ですか?」

 サルサラの言葉に、アルマ・フォリア老人は再び大きくうなずいてから答えました。

「そうじゃな。あるいは、こういうのはどうかな?君は映画を見るかな?ホラー映画とか、人が銃で惨殺(ざんさつ)されるアクション映画とか」

「そうですね。たまに見ます。結構好きかも?」

「それだって、人を傷つけたり恐れさせたりするじゃろ?けど、同時にそれが快感でもある。『ああ~、おもしろかった!』という感情にもなる」

「なるほど。映画は作り物だけど、そこで感じる感情は本物ってコトですね」

「そうじゃ。芸術の役割もそれと同じ。作品自体は作り物でも、作品を見る者・触れる者にとっては、真実を語りかけてくる対象にもなり得るわけじゃ」

「そして、僕たちはアルマ・フォリアさんの作品に、それを感じ取った」と、ソルタリオ。

「その通り。君たちの感性は間違っていない。むしろ正しい。だからこそ、私の作品に触れて混乱をきたしたのじゃ」

「じゃあ、あの建築物を見て不安になった僕の感情はそのまま受け入れてしまっていいんですね?」

「もちろんじゃとも。むしろ、そのような感性を持つ者こそが、次代の芸術家の卵と言えるかもしれん」

 アルマ・フォリア老人の言葉を聞いて、すっかり安心したふたり。別の作品も見せてもらうことになりました。


         *


「さて、ここが私のアトリエじゃよ」

 サルサラとソルタリオのふたりが通されたのは、実に簡素な作りの部屋。ただし、部屋のあちらこちらにガラクタのごとく作品が無造作に置かれています。

「さっきの部屋とは大違いですね」と、ソルタリオが言いました。

「さっきの部屋?」と、アルマ・フォリア老人。

「ホラ、玄関を入ったばかりの大広間。あそこはなんだかケバケバしくて騒がしくて、こことは全然違っていたじゃないですか?」

「ああ。あそこは弟子たちの創作の場にしとるんじゃ。ああいう自由な環境の方が創作意欲が()くらしくてな。私は、こういう静かな部屋の方が好みじゃがな」

「アタシもこういう部屋の方が好きね。芸術に対する意欲がわくかどうかは別として」と、サルサラも同意します。

 それから、ふたりは老人の解説を聞きながら、作品を鑑賞していきます。

 いたく感動するサルサラとソルタリオ。


 ところが…

 この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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