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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
323/1003

~第322夜~「退屈な星のサルサラ(その10)」

 狂気と芸術の街アルタルソへとやってきたサルサラとソルタリオ。

 地元の住民である白髪混じりの男性は、この街の誇る芸術家アルマ・フォリアについて熱心に語り続けます


「彼が設計した作品は、どれをとっても素晴らしい出来栄えだ。きっと、君たちも気に入ると思うよ。なにせ、彼は天才だから」

「そんなに凄いんですか?」と、サルサラ。

「そりゃもう、凄いなんてもんじゃない!彼の作品には不思議な中毒性がある!そりゃ、最初は理解できないかもしれない。けど、徐々に精神を侵食され、最後には彼の作品なしでは人生に意味を見いだせなくなってしまうんだ」

「そ、そんなに!?」と、ソルタリオ。

「そうさ!そうして、時としてアルマ・フォリアの信者たちは、暴力的になったり争いを起こしたりしてしまう。彼の作品欲しさにね。あるいは、作品に魅了されて廃人になってしまったり。作品を眺めること以外何もしたくなくなってしまうんだ」

「それって、ちょっと危険なんじゃ…?」

 サルサラが口にした疑問も、もっともです。けれども、中年男性はその言葉を聞いても平然と答えました。

「それだけ、彼の芸術が素晴らしいってコトさ!」

 そう言って男性は去っていきました。

「ねぇ、サルサラ。あの人の言ってたことって本当なのかな?」

「わからないわ。ただひとつ言えることは、アタシたちが見るべきなのは彼の作品ではなく、彼の頭の中身だってことよ」

「そうだ。本人に直接会ってみよう!」

「けど、どこに行けば会えるのかしら?」

「ウ~ン…とりあえず、街の人に聞いてみるしかないよね!」


 それから、サルサラとソルタリオは街の住民にたずねながら、アルマ・フォリアのアトリエを探します。

 すると、美術品専門店で画商が教えてくれました。

「えっと、それでしたら、この道をまっすぐ行ってください。そうしたら大きなお屋敷が見えてくるはずですよ。とびきり奇抜な建物なのですぐにわかるはずです」

「よっし!さっそく行ってみよう!」

 ソルタリオの言葉に、画商は待ったをかけます。

「でも、アルマ・フォリア氏は極端な人間嫌いですから、きっとお会いにはなれないでしょう」

「そうなんですか?」と、驚くサルサラ。

「ええ。ただ、お弟子さんの数は多いですからね。その内のどなたかが相手をしてはくれるでしょうが…」

「とりあえず行ってみようか」

 ソルタリオに従ってサルサラもついていきます。


         *


 大きな中央通りを真っ直ぐに進んでいくと、それらしきお屋敷が見えてきました。

 確かに画商の言った通り、特別奇抜な建物です。紫やピンクや蛍光色に塗られたサイケデリックでケバケバしい壁に、ヘンテコな煙突がいくつも生えていて、窓も大きさや形が不ぞろいで見ているだけで頭がクラクラとしてきます。


「ウワァ、これはまた…」

 ソルタリオも思わず苦笑い。

「まぁ、とにかく入ってみましょう」

 そう言うと、サルサラは玄関の扉を押し開けました。すると、その瞬間…

「グヘェッ!まぶしい!!」

 家の中から、カラフルな光線が照射されました!

 サルサラとソルタリオがそっと屋敷の中をのぞくと、無数のカラー光線が飛び()い、天井からカラーボールがつるされていて、まるでディスコのような風景です。

 大音響の音楽が流れ7色に光り輝く大広間では、20人以上の人間が好き勝手に自分の創作活動に熱中しています。ある者は絵画を、別のある者は彫刻を、またある者はオブジェを制作しているといった具合。どれもこれもに共通しているのは、皆、パッと見たところ意味不明な色形(いろかたち)をしているという点。


「これって一体何のお祭りなのかしら?」

 あっけに取られるサルサラとソルタリオ。

「ねぇ、君たち。そこで何をしているのかな?」

 振り返ると、そこには白髪の男性が立っていて、こちらを見つめていました。

「あ!こんにちは」と急いであいさつをするふたり。

「もしかして、君たちも芸術家志望の若者かい?」

 男性の質問に、サルサラは答えます。

「いえ、そうではなくて。実は、アルマ・フォリアさんに会いたくて来たんです」

「ああ、なるほど。そういうコトか」と妙に納得する白髪の男性。

「あなたがアルマ・フォリアさんですか?」とたずねるソルタリオに、男性はうなずきます。

「いかにも。私がアルマ・フォリアだ」

「はじめまして!僕の名前はソルタリオ。こっちはサルサラ。一緒に旅をしてるんです」

「よろしくお願いします♪」と、サルサラも元気よく返事をしました。

「うん。よく来てくれたね。歓迎しよう」

 そう言って、アルマ・フォリアは使用人にティーパーティーの準備をさせます。

「な~んだ。人嫌いだって聞いてたけど、すぐに会えちゃったね」と、こっそり話すソルタリオ。

「ほんと、ほんと。あの画商の言ってたコト、とんだデタラメだったわね」と、小声で返すサルサラ。

「さて、お茶の準備が整ったようだ。どうぞ、こちらへ」

 そう言われてふたりが案内されたのは、先ほどとは打って変わってし~んと静まりかえった部屋でした。

 この続きは、また明日の晩に…

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