~第321夜~「退屈な星のサルサラ(その9)」
テーラ商団の長距離移動トラックの中でくつろぐサルサラとソルタリオ。このトラックは家一軒の機能をそのまま持っているのです。
リビングのテレビ画面には、メディア王となったチャルラタンの姿が映っています。
「確かに真実を語るコトは大切でしょう。けれども、真実を突き過ぎてもいけないのでは?時にはウソも必要だと思うのですが…」という司会者の質問に答えるチャルラタン。
「もちろん、その通りです。正しきコトというのは、いつも人の心を傷つける。だから、時にはウソをつくコトも必要でしょう。ただし、そのウソもバレなければの話。そんなものいつか誰かが必ず見破ってしまう。結局、どんなに上手くついたつもりのウソも、いずれは暴かれてしまう時が来る。ならば、最初から本音を突きつけ合って討論した方が早いのでは?」
「そのやり方は世界を混乱させます。事実、人々はあなたの発言によって極論ばかり語るようになり、世界は分裂してしまった。世の中は以前に比べてギスギスしてしまっていますよ。それでもよいと?」
「ギスギス結構じゃないですか。時にはそういう時期も必要ですよ。『雨降って地固まる』という言葉もあります。最初から最後まで誰も傷つけず安全に生きていこうという考え方自体が間違っているのです。お互いの本音をぶつけ、時に傷つけ合い、いずれは仲直りする。人間関係というのは、そのようにして発展していくモノなのです」
テレビ画面を眺めていたサルサラが、ポツリともらします。
「なるほどね。確かに、この人は、人の心をザワつかせる何かを持っている。話を聞いてると、何か一言いいたくなるもの」
「僕は好きだけどな。そもそも、なぜウソなんて必要なのかわからないよ。人を騙したり攻撃するのにウソをつくならわかる。けど、やさしさからウソをつくだなんて、変な話だよ」と、ソルタリオはチャルラタンに対して好意的なようです。
「それは、真実があまりにも残酷で、誰もが受け止められるものではないからよ。みんながみんな正しい言葉に耐えられるわけじゃないの。心の底では正しいとわかっていても、目をつぶったりそらしたりして生きていきたい人たちもいるのよ」
「チャルラタンも言ってたけど、それは意味がないよ。そんな行為は時間稼ぎに過ぎないんだ。いずれにしろ目をそらすことができない時が来る。だったら、早い方がいいんじゃない?」
「そうね。アタシもそう思うわ。ただ、世の中そういう考えの人ばかりじゃないってコト。正論を避けて生きていきたい人たちも大勢いるのよ」
サルサラの言葉にソルタリオは首をかしげます。
「僕にはよくわかんないや。そういう人たちのコトは」
そう言って、ソルタリオはテレビ画面へと視線を戻しました。
*
次にテーラ商団の長距離トラックが到着したのは、アルタルソという高級住宅地でした。この街には、大富豪や芸術家などが数多く住んでおり、個性豊かな奇抜な家が建ち並んでいます。
「え?なにこれ?」
アルタルソの街に立ったサルサラが開口一番、そう発したのも無理はありません。それくらい奇妙な建築物が街中を埋め尽くしているのでした。
「まるで絵の中に迷い込んだみたい!」と、ソルタリオの方は飛び上がって大喜び!
実際にいくつかの公共建築物の中を歩き回ってみて、さらに驚きは増します。
「ウソッ!なんでこんな所に階段があるのよ!」
「見て!見て!サルサラ!こっちの扉はななめに曲がってるよ!」
「開けづらいったらありゃしないわね…」
「ねぇ!見て!向こうにも扉が!今度は縦に傾いてるよ!」
「一体、何を考えたらこんなデザインになるのよッ!!」
こんな調子で、ふたりは街にある様々な建築物を見て回ります。
「いやぁ~、すごい建物ばかりだね。特に、この辺の建物はデザインが飛び抜けてるよ!」
はしゃぐソルタリオにサルサラは少々お疲れ気味の様子。
「デザインセンスは抜群だけど、機能性の方はどうなんだろう?こんな街に住んでる人の気が知れないわ…」
そこに地元の住民がやって来て、話しかけてきます。
「やぁ、君たちこの街は初めてかい?」
話しかけてきたのは、中年の男性。白髪混じりの髪を短く切り揃え、鼻の下に髭を蓄えています。
「ハイッ!とっても楽しいですね♪」と、ソルタリオが返事をすると、男性は続けて言いました。
「ここは、まさに狂気と芸術の街さ。この辺りの建築物は、どれもこれも一風変わった様相を呈しているだろう?どれもみんなアルマ・フォリア一派のデザインなんだ」
「あるまふぉりあ?」とたずねかえすサルサラ。
「そう。ご存じないかな?この街の誇る芸術家兼建築家さ」
「そのアルマ・フォリアって人は、この街出身なんですか?」
ソルタリオの質問に白髪混じりの男性は答えます。
「いや、元は違うんだけどね。遠い国からやって来て、いつの間にか住み着いてたのさ。そうして、次から次へと新作を発表してね。最初は“狂人”だとか“奇人”だとか言われて誰にも相手にされなかったんだが、しだいにその才能が認められていって、今や誰もが認める超一流の芸術家ってわけさ」
「へぇ~、そうなんですね」とサルサラ。
それでは、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




