~第320夜~「退屈な星のサルサラ(その8)」
「まったく、お父さんもお母さんも心配性なんだから…」
サルサラは家出同然に自分の星を飛び出してきてからも、たま~にメールで両親に連絡を入れていました。
ほんとはそんなコトしたくなかったのですが、テーラ商団にお世話になっている時に、団長のテーラから「自分の所で働くなら、それが条件だ!」と言われていたからです。
おかげで、両親に捜索依頼を出されることもなく、なんとなく旅を続けるコトができていました。
…とはいえ、サルサラは弱冠15歳(家を出た時には、14歳でしたが、旅の途中で誕生日を迎えています)
国や世界によっては、このくらいの年齢で働き始める子は珍しくありませんでしたが、ひとり旅となると話は別。どんな危険が待っているかわかりません。
エレフォルティスの街で新たな仲間ソルタリオを加え、ふたり旅となりましたが、相棒はサルサラよりもさらに年齢が低く、まだ12歳です。
ソルタリオは身のこなしは軽く、近所の電子図書館で勉強してきたおかげで知識も豊富でしたが、そこはやはり子供。あまり頼りになりません。特にお金に関してはいい加減で、いつもサルサラに支払いをさせようとするのです。いえ、むしろお金にシビアだからでしょうか?
きっと、幼い頃に親を失い、貧困の中でどうにか生き残ってきたという境遇が、ソルタリオをそのような性格にさせたのでしょう。
遠く離れていても、テーラはいつもサルサラを守ってくれていました。
世界各地に網の目のように張り巡らされたテーラ商団の勢力は、この星にまで及んでいます。大きな都市には必ずと言っていいほどテーラ商団の支部があり、ふたりは自由に寝泊まりすることを許されていました。
おかげで、宿泊費に関してはほとんど必要ありません。それに加えて、各都市間を移動する際には、テーラ商団の巨大トラックに乗せてもらっています。よって、移動費も格段に抑えることが可能!
もちろん、ただおんぶに抱っこというわけにもいかないので、サルサラとソルタリオの2人は、テーラ商団にお世話になる際には、それなりに仕事を手伝います。荷下ろしや在庫の管理など、かつてサルサラがテーラの下でやっていた作業ばかりなので、慣れたもの。
寝泊まりと食事の他に、ちょっとしたおこづかいまでもらえるのでした。
テーラ商団は、かつてのように街丸ごとの機能を有したまま移動するというようなことはなくなっていましたが、それでもかつての“なごり”のようなモノはあります。
大都市間を移動する際には、貨物用のトラックとは別に、生活の全てをまかなえる住居トラックが帯同するのです。「寝室」「キッチン」「トイレ」「娯楽室」といった部屋を備えた巨大なキャンピングカーのような自動車。街ごととは言えないまでも、家一軒がそのまんま移動しているようなものです。
サルサラが今暮らしているのは、そんな居住型トラックのひとつでした。サルサラとソルタリオは、そのトラックの中にあるリビングルームで、ふたり並んでソファーに座っています。
現在は、次の街へと移動する途中。トラックは自動運転で、振動もほとんどなく快適そのもの。
サルサラは、テーブルの上に置かれたタブレット端末を操作してニュースサイトを開いており、ソルタリオは部屋に備えつけのテレビを眺めています。
すると、テレビ画面にある人物が映るのが、サルサラの目に止まりました。
「アラ?この人って…」
「あぁ、有名人だね。各界に影響力を及ぼすメディア王らしいよ」
ソルタリオの言葉に答えるともなしにサルサラはつぶやきました。
「この人が、テーラお姉さんが言ってたチャルラタンって人か…」
そう!テレビの画面に映っていたのは、かつてテーラと一緒に旅をしていた新聞記者のチャルラタンでした。もちろん、今は一介の新聞記者などではなく、インターネットを中心にテレビや雑誌など、様々なメディアに登場する大きな発言力を持つ人物となっています。
そのキッカケとなったのが、テーラと一緒に旅した日々。“テーラ商団”設立の秘話を書いたノンフィクションが一世を風靡して、フォンドゥプロエスト賞まで受賞してしまったのです。
「ミスター・チャルラタン。今やあなたの影響力たるや、絶大なモノがありますね。『チャルラタンが一声発すれば、株価が大変動する』とさえ言われていますが」
テレビ画面の中で、司会者が質問し、それに対してチャルラタンが答えています。
「いやいや、さすがにそれはおおげさ過ぎるでしょう。ただ、僕の発言に世間の人々が大きな関心を持ってくれているのは事実でしょうが」
「…と、言いますと?」
「たとえば、僕の発信した情報を起点に議論が巻き起こるコトがよくあるんですね。人々の心に何らかの感情を呼び起こしてしまう。ザワザワとした波風を立ててしまう。それって、つまり、人々が心の底で“真に関心がある話題”を提供してるってコトなんじゃないかと思うんですよね」
「真実を突くのが上手い?」
「そう表現しても構わないと思います」
さて、この続きは、また明日の晩に語るといたしましょう。




