~第319夜~「退屈な星のサルサラ(その7)」
電力化の進んだ星で、ソルタリオ少年と出会った少女サルサラ。エレフォルティスの街を案内してもらうことになります。
案内された安レストランで会話をするふたり。
「それで、これからどうするつもりだい?もう故郷に戻る気はないのかい?」
ソルタリオの質問に少しの間考えてからサルサラは答えました。
「ウ~ン…正直わからないわ。だって、まだ何も成し遂げてないもの」
「何も?たとえば?」
「何事も起こさずに死ぬなんてイヤ。だから、いろんなことをやって、たくさんの人と出会いたい!もしも、故郷の星に帰るとしても、それからでないと」
「具体的に“こういうモノになりたい!”とか“この目標を達成したい!”ってのはあるのかい?」
「そうねぇ…特にお金持ちになりたいわけでもないし、平和とか安定とか全然いらないし。とにかくアタシ退屈が大っ嫌いなのよ!大・大・大・大・だ~いきらいッ!毎日が毎日、違った人生が歩めればそれが最高ね!」
「な~んだ。そんなコトか。それなら簡単じゃないか」
「え?そうなの?」
「そうさ。このまま一生旅をして生き続ければいい」
サルサラはアゴにてをやり天井を眺めながら再び考えました。
「そうねぇ…それができれば、どんなにか幸せなコトか。けど、それだっていつかは飽きちゃうんじゃない?旅するコト自体が安定化しちゃったら?」
「その時はその時で、また新しい生き方を見つければいいだけさ!」
「簡単に言うわねェ。ま、確かに、それもアリかな。それにしてもアンタって本当に不思議な子よね!アタシなんかよりずっと年下に見えるのに、しっかりしてるっていうかさ」
「そうかい?自分ではよくわからんけど。まあ、よく言われるよ」
それからふたりは運ばれてきたパスタやピザに舌つづみを打ち、食後のエスプレッソを堪能してから店を出ました。当然ながら、このレストランの支払いもサルサラがして…
その後、約束通り、エレフォルティスの街をあっちへこっちへと案内されたサルサラ。
生まれて初めて上るような高いビルや、何もかもが電気で動く街の光景に目をまん丸にして驚きます。
「すごいわねぇ。この街って、全てが電気で動いてるんだ!」
「まぁね。この星では『電気は水よりも安い』って言われてるくらいだから」
「水よりも!?」
「そうさ。料金なんてモノは、需要と供給で決まるものなんだ。この星では電気はいくらでも生み出せちゃう。だから安い。逆に、水が豊富な星なら、水の方が圧倒的に安いはず」
「需要と供給…子供なのに難しい言葉を知ってるわね」
「このくらい常識さ!普段から図書館で勉強を欠かしてないからね!」
エッヘン!と偉そうに自慢するソルタリオにサルサラは素直に感心しました。
「アタシ、勉強なんてあんまりやってこなかったからなぁ。でも、教えられたコトはすぐに覚えちゃう性格なのよ。テーラ商団で働いてた時だって『物覚えがいいね!』って褒められてたくらいだから」
「へ~、そうなんだ。けど、こんな街でも、住んでしまえば当たり前になってしまう。きっと、サルサラからしたら、退屈に思えるんだろうな」
(確かにな…)とサルサラは思いました。
どんなに奇抜で変わった国に住んでいようとも、長い間住み続ければ慣れてしまう時が来るはず。そうしたら、きっと退屈さを感じて逃げ出してしまうことでしょう。
「きっと、アタシは1つ所に住み続けられない運命なんだわ。さっきソルタリオが言ってたように一生旅をして生き続けるしかないのかも…」
そんなサルサラのつぶやきを聞いてソルタリオはニッコリ笑いました。
「だったら僕を一緒に連れてってよ!」
「え?ソルタリオを?」
「ウン!どうせ僕はみなしごだし。こんな街、未練なんてないし!」
突然の申し出にサルサラは戸惑いました。
「そ、そんなコト急に言われても…」
「きっと僕なら君を退屈させない!約束するよ!」
「そうねぇ…アタシだって自分の星を逃げ出してきた身だもの。似たような境遇かもね」
こうして、サルサラはソルタリオを連れて旅を続けることにしました。
*
それから、しばらくの間、ふたりは電力化の進んだ星を旅して歩きました。
基本的に、この星ではお札や硬貨などのお金は使いません。ほぼ完全に電子マネー化が進んでおり、支払いは全てデジタルで行われています。
銀行の口座やクレジットカードとは別に「電子マネー専用の財布」というのがあって、この財布にお金を入れておけば、どこでも即座に買い物ができます。財布に入れてある金額しか使えないので、落としたり盗まれたりしても大きな損害にはなりませんが、拾った人が誰でも使えてしまうという欠点もあります。
サルサラがガイド料としてソルタリオに支払ったのも、この財布を使った取り引きでした。
ふたりは、この星にあるテーラ商団の支部を渡り歩きながら、適当に仕事をこなして日銭を稼ぎつつ、旅を続けています。
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




