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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
28/1003

~第27夜~「港町サーマリン」

「港町サーマリン」


 国によっては(たとえば日本人などは)移民という行為になじみがないかもしれません。

 けれども、アメリカ・ヨーロッパを始めとして、移民は頻繁に行われています。ただ、「合法な移民」と「違法な移民」が存在するだけ。その垣根すら曖昧(あいまい)なモノなのです。

 元々違法な移民であったのが、時と共に法のもとに保護されるようになった…などということは、いくらでも起こっています。


 ギタ、レベック、ウード、サントゥール、ラライカの5人は、グチョーノ国にうさんくさいモノを感じたため、反対側の「サーマル国」の国境を越えました。

 おそらく、この勘は当たっていたでしょう。この時にグチョーノ国に侵入していたら、今頃は命がなかったかも知れません。


 ギタたち5人がたどり着いたのは、サーマル国の首都サーマリン。

 首都とはいっても、サーマル国自体が貧しい国でしたので、特に高い建物もなく、住民も質素な生活を営んでおります。


「うわっ!魚くせぇ」と、一番年下のサントゥールが声を上げます。


 魚の腐った臭いが周囲にプンプンと漂っており、サントゥールでなくとも、この町を初めて訪れた人なら誰でも似たような感想を持つことでしょう。


 サーマリンは港町ということもあり、そこら中で魚介類の取り引きが行われています。いわば、この臭いは誇るべき特徴とも言えました。長いコトこの土地を離れていた地元民にとっては、懐かしの香りなのです。


「エルドンラードは、技術的には遅れていたし、ほこりっぽい風土ではあったけれど、それでも清潔に保たれていた。それに比べると、この町はちょっと…」と、紅一点のラライカも不平めいたセリフをもらします。


「何言ってんだ?これこそが自由だろうが!不満がある奴は、国に帰りゃいい」と、普段からリーダー風を吹かせているギタが吐き捨てます。


「そうそう。これが『世界』ってもんだよ。よその土地に合わないようなら、いつまでも自分の国に引きこもってるしかないね」と、レベックも同意します。


「別に文句があるわけじゃないさ!ただ、素直な感想を言っただけ!だろ?ラライカ?」と、チビのサントゥール。


「そうよ。多少の不満があっても、自由には代えられないわ。たとえ、フカフカのベッドで眠れなくても、どんなに労働がきつくても、あんな国に戻るくらいなら、そっちの方がまだマシよ。耐えられるわ!」


「じゃ、そういうコトで。さっさと仕事を探そうぜ。いつまでも無職でいられるほど、オレたちゃ大金持ちってわけじゃないんだからな」


 リーダー風のギタの言葉に従って、各自、自分の仕事を探し始めます。

 幸いなことに、サーマル国は出稼ぎ労働者や移民に寛容な国でしたので、働き口はすぐに見つかりました。


 ギタとレベックは、漁師たちに混じって漁船から捕れたばかりの魚介類をおろし、その後は魚の仕分け。力持ちのウードは、倉庫で重い荷物の積み下ろし。女性のラライカは、市場の経理担当。チビのサントゥールは、商人や漁師の間を走り回って「小間使い」のようなコトをやっています。


 みんな、故郷のエルドンラードで幼少の頃より鍛えられていたおかげで、一通りの仕事はこなせるようになっていました。今どきの少年少女たちにしては珍しく、文字の読み書きもできましたし。

 そもそも、神に仕える身として経典を読んだり、魔法の勉強もしなければならなかったので、読み書きができないと致命的なのです。


         *


 5人が港町サーマリンに住み着いてから、しばらくの時が経過しました。この町での生活にもだいぶ慣れてきたある日、事件は起こります。


 ドバ~ン!と、何かが弾け飛ぶ音がしたかと思った途端、「キャ~!」という女性の叫び声が上がりました。

 直後、男たちが騒ぎ立てる声が聞こえ始めます。怒声のような大声で、あちこちで漁師たちが何かを叫んでいます。


 港で働いていたレベックが目を上げると、壁に人間の死体が張りついています。いえ、人間かどうかハッキリと確認できたわけではありませんでした。なにしろ、真っ黒な物体でしかなかったのですから。形状から「人間ではないだろうか?」と考えただけです。

 両手両足を大の字に開いた真っ黒な人形が壁に張りついていただけ。そう表現するのが正確でしょうか?


 人形が飛んできたであろう方向に目を向けると、海から巨大なタコのようなイカのような生き物が港へと身を乗り上げているところでした。


「なんだ、ありゃ!?」

 レベックが声を上げると、近くにいたギタも駆け寄ってきます。

 同時刻、ウードとサントゥールとラライカの3人も、港の別の場所から、同じ巨大モンスターの姿を眺めていました。

 (みな)、現実感がありません。この世界では、まだ映画館はメジャーではありませんでしたが、もしも5人が知っていれば「映画でも見ているような気持ちだった」と表現したことでしょう。


 巨大なタコのようなイカのような生き物は、ゆっくりと港に身を乗り上げ、人々が騒ぎ立てている方へと迫ってきます。


「逃げるんだよ!」

 声の主がギタだと気づいたレベックは、瞬間的に走り出していました。


 巨大な化け物が口から火球を吐き出すと、火球はそのまま男をひとり巻き込んで、港の倉庫へと直撃します。また1つ新たな死体が壁に張りついたのです。真っ黒な人形となって…


 おっと、実にいいところですが、残念ながらお時間が来たようです。

 では、この続きは、また明日の晩に。

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