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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
27/1003

~第26夜~「宗教国家エルドンラード(その2)」

 さて、今回の物語のメインキャラクターは、国王でもなければ軍師でもありません。

 街に暮らす貧しい子供たちなのです。


 ギタ、レベック、ウード、サントゥール、ラライカの5人が空き地に集まって何やら相談しています。


「このクソおもしろくもね~国を根底から変えてやるぜ!」

「けど、変えるってどうするの?」

「革命さ!革命を起こすんだ!」

「革命!?そんな物騒な…」

「オレはちょっとギタの気持ちがわかるな。ただ、革命ってのは違うと思うが」

「じゃあ、どうすんだよ?レベック」

「別に国を変える必要はないだろう。自分たちが出て行けばいいだけのコト。街が気に入らなけりゃ、街から。国が気に入らなけりゃ、国から。オレたちの方から出て行きゃいいだけ」

「フ~ム。そいつはいい考えかもな」

「正直、オレッチもこんな退屈な国、飽き飽きしてたとこやし」

「そうねぇ。なんでもかんでも『しきたり!しきたり!』じゃ、窮屈(きゅうくつ)過ぎるものね」

「じゃあ、決まりだな!」


 若者というのは、いつの時代、どの世界、どこの国でも『自由』を求めるものなのです。

 それこそが若者の特権であり、人類に与えられた「進化の秘訣」でもありました。


 人は誰しもその人生で「生きるコツ」や「成功するための(すべ)」や「処世術」といったモノを身につけていきますが、新生代の子供たちからすれば、それらはみんな邪魔者以外の何ものでもありません。

 「こうすれば、上手くいく!」といった方法論など、大人や老人たちが若者だった頃に通用した「人生の秘訣」に過ぎません。

 次の世代には次の世代の攻略法が必要なのです。世界という名のゲームをクリアするための攻略法が…


 ギタ、レベック、ウード、サントゥールは男の子であり、ラライカだけが女の子でした。いわば、紅一点といったところでしょうか?

 5人とも、まだ10代の子供たちで、レベックが一番の年上で17歳。同い年ではありますが、まだ誕生日を迎えていないギタが16歳。ウード15歳。サントゥールだけが少し年が離れており12歳になったばかり。

 ラライカは、レベックとギタの1つ下の学年で15歳であります。


 5人は、宗教国家エルドンラードに生まれただけあって、(みな)、神に仕える身。ただし、それは「形式上は」というだけ。心の中は自由と経験を求めて、広大な外の世界へと夢を()せるのでした、


         *


 時を同じくして、エルドンラードの外では、急激な技術革新が行われます。「パラダイムシフト」と言えるほどの大きな技術革新です。それこそ、数百年、数千年に1度しか起こらないのではないかと思えるくらいの。


 何が起きたかって?

 みなさんご存じの「神の気まぐれ」ですよ。神様が気まぐれで、この世界に穴を空けて、異世界への扉を開いてしまったのです。


 これにより、世界は激変します。

 それまで世界産業の中心であった農業から、工業・技術職・サービス業へと移り変わり、「家法具(かほうぐ)」と呼ばれる家庭で使える魔法製品が大量に生産されるようになりました。

 文字の読み書きが必須とされ、教師の数も膨大な人数を必要とされる時代に突入。


 代わりに農業は大幅に効率化・大規模集約化されることとなり、農家の数は激減します。大勢が転職に次ぐ転職を繰り返す激動の時代となったのです。


 無論、時代の大きな流れについていけない人々も存在します。

 そういった人たちは、相変わらず旧時代の農業にしがみつくか、誰にでもできる単純労働に従事するしかありません。もちろん、そんな仕事では収入は増えませんから、貧困者も生まれました。

 それでも、収入がある人は、まだマシでした。時代の変化について行けず、仕事にあぶれた者たちは、路上で物乞(ものご)いでもして生きていくしかありません。


 非情に思われるかも知れませんが、歴史の変革期というのはそういうものです。人間だけではありません。あらゆる生き物が急激な進化に耐えられず、歴史から消えていきました。

 「生物は、環境・条件に応じて進化する」という言葉もあります。

 逆を言えば、環境に適応できなかった者は消えゆくのみ!これを「自然淘汰」と呼びます。


         *


 ギタたち5人にとって、時代の変革は好機でもありました。簡単に国から抜け出すことができたからです。


 ちょうどこの頃、エルドンラードの隣に位置する「グチョーノ国」は、異世界への道がつながったこともあり、急激な発展を遂げていました。元々、広大な国土を有していたグチョーノ国は「経済力」という名の力を手に入れて、一気に軍事力を増していきます。

 技術や情報が力を誇るこの時代において「軍事力」は絶対の力ではありません。それでも、周辺諸国ににらみをきかせるには充分でした。


 古代より進化の歴史の止まったような状態にあったエルドンラードも、選択を迫られます。このままでは、いつグチョーノ国が攻め入ってくるかわからないからです。

 選択を誤れば、歴史からエルドンラードの名は消えてしまうかも知れません。


「そんなのは知ったコトか!」と、ギタ、レベック、ウード、サントゥール、ラライカの5人は、さっさと国境を越えて隣の国へと移り住んでしまいます。

 いわば「移民」というヤツですね。


 さて。そろそろ今夜もお時間となったようです。

 それでは、この続きは、また明日の夜に…

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