~第24夜~「ソロモン王と72の悪魔(その2)」「巡る世界」
「さて、確か昨晩は、死刑囚と神が看守の話を聞き始めた所まででしたね。では、ソロモン王はその後どうなったのか?続きをお聞きください」と、僕は前置きをしておいてから、看守の物語の続きを語り始めた。
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ソロモン王は、元々持っておった数々の魔術に加え、72の悪魔の力を借りて、国を統治した。
おかげで、血族との権力闘争にも勝利し、国はうるおい、人々は幸せに暮らしたそうじゃ。最初の内はな。
ところが、ソロモン王はしだいに慢心し始める。その能力の高さゆえ、能力なき弱者の気持ちがわからなくなっていったのじゃ。そうして、民の反感を買ってしまう。重税が課せられ、生活に困窮した国民は盗みを働き、あちこちで暴動を起こした。
そのたびに、72の悪魔たちが駆り出されて、鎮圧していったという話じゃ。
ソロモンの生きている内は、まだよかった。どうにか力で抑え込むこともできておったからな。ところが、ソロモンがこの世を去り、次の王が即位した途端に、民衆の力を抑え切れなくなってしまう。
ついに、国は分断され、内戦が勃発。長い戦乱の歴史の始まりじゃった。
「天使に与えられた指輪」は、どうなったかって?
ソロモンの死に際して失われてしまったのじゃ。盗賊に奪われたり、商人の手に渡ったり、貴族や別の国の王が手にしたという伝説もある。
そのたび、持ち主や周りの人間たちを不幸にしたり幸せにしたそうじゃ。
ある者は指輪の力を恐れ、決して使用しなかった。別のある者は欲望に身を任せ、最大限に指輪の能力を活用した。
ちなみに、持ち主が代わるごとに、72の悪魔の序列やメンツも入れ替わっていったという。
現在、どのような悪魔を使役することができるのかは不明じゃ。そもそも、指輪の居場所自体がわからぬというのに…
じゃが、指輪は今も確実に存在しておる。この世のどこかにな。そうして、時折、歴史上に姿を現しては、世界に変革をもたらしたり混乱をもたらしたりしておるのじゃ。
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「どうかね?なかなかおもしろい話だと思わんか?」と、檻の外から看守が尋ねてきます。
「フム。興味深いな。その指輪さえあれば、オレもこの狭い世界から抜け出せるというわけか」と、死刑囚。
「ワッハッハ!その程度は造作もあるまい。それどころか、世界だって手にできるわ。実際に、そんな物が存在しておればじゃがな。単なる伝承。作り話の一種じゃよ」
「では、続けてもう1つ。今度はオレが話させてもらおう」と言って、死刑囚が再び語り始めました。
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「巡る世界」
人は死んだら、どこへ行くのだろうか?
「天国だとか地獄だとかが存在する」と言う者もいる。生まれ変わりを信じている者もいる。肉体とは別に魂があると主張する者も。
あるいは、そんなモノはどれ1つとしてなく、死ねばそれで終わり。ただ、それだけ…なのかもしれない。
オレの人生は、もうすぐ終わる。生きたくても許してはもらえない。
それ自体は仕方がないとあきらめている。自らの行った行為に対する代償だからな。ただ、「死後どうなるのか?」というのにはちょっとばかし興味もある。
これは、そういう話の内の1つ。
オレが子供の頃に、近所に住んでいた大人から聞いた話だ。
オレたちが住んでいるこの世界とは別に、もう1つの世界があって。それは、天国だとか地獄だとかとは全然違っていて。一見すると、この世界となんら違いはないのだという。
もちろん、建物だとか生活様式だとかに若干の違いはあるかもしれない。たとえば「何を食ってる」だとか「どんな言葉を話している」だとか、その程度の違いはな。
だが、基本的に人は、生まれ、働き、飯を食い、クソをし、そして死んでいく。そういう意味では、この世界と全く同じだ。
人は死後、そちらの世界へ飛ばされて、人生をまっとうし、また別の世界へと飛ばされる。そんな世界がいくつもあって、順繰り順繰り移動しているのだと。
人だけではない。馬も牛も犬も猫もネズミも虫も魚も鳥も、みんなみんな死んだら次の世界でゼロからやり直し。ただ、人が馬になったり、ネズミが鳥になったりすることはあるようだがな。
いわば「生まれ変わり」というヤツだ。
時として、そんな世界同士に「穴」が空くことがあるそうだ。
そうして、生きている内に、別の世界を見ることもできるのだという。穴の大きさが大きければ、そこを通り抜けて別の世界を訪れることさえも。
人類の歴史上でも何度かそのような逸話が残されている。嘘かほんとかはわからんがな。単なる作り話や空想の類かもしれん。
ただ…
「もしも、そんな世界があるならば、行ってみたいな」とは思うかな?
残念ながら、今世でのこのオレの人生は散々なモノだった。この檻の中から出られる見込みはないに等しい。残された時間も、そう長くはあるまい。
ならば、「もう1度、人生をやり直してみたい」と思うのは、人として当然の感情ではなかろうか?
死んだら終わり。壊れた機械みたいに、パッと動かなくなってそれでおしまい…と言うよりかは、その方が希望があってよかろう?
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「正解!」と、神は言いました。
もちろん、その言葉は、看守には聞こえませんでしたけれども。けど、先ほどまで語り続けていた死刑囚の耳にはハッキリと聞こえました。聞き逃すはずなどありはしません。この退屈な独房で、どのような情報であろうとも、聞きもらすわけにはいかないのですから。
さて、この続きは、また明日の晩とさせていただきましょう。
衝撃の結末をお聞き逃しのなきように…




