表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
24/1003

~第23夜~「時の子フリージア」「ソロモン王と72の悪魔」

「昨夜は『死刑囚と神の取り引き』のお話だったわね。一体、どのような取り引きをしたのかしら?」とシェヘラザード。


「まあまあ、先をせかさないで。まずは、死刑囚が神に語った物語をお聞きください」と、天使である僕は答える。


「それでは聞かせてもらおうかしら」


         *


「時の子フリージア」


「では、神よ。聞くがいい。このオレの荒唐無稽な空想話を…」と言って囚人は語り始めました。


 むかしむかし、あるところに、年老いた夫婦がいた。夫婦は若い頃から仲むつまじく暮らしていたが、年を取っても赤ん坊ができなかった。

 まだ「不妊治療」なんてものがなかった時代だから、名のある祈祷師(きとうし)に子作りの(がん)かけなどをしてもらったが、残念ながら効果はなかったようだ。

 結果、子供はできなかったが、それでも夫婦は幸せに暮らし続けた。


 そんなある日、若い旅人が老夫婦の小屋を訪れる。

 人が訪ねてくるなど、とんとなかったものだから、夫婦はそれはそれはたいそうなもてなしで旅人を迎えた。

 旅人は思いもかけぬ歓待に喜び、「何が礼ができぬか?」と夫婦に尋ねた。


「そうですね。できることなら、子供が欲しい。けれども、この年では、もはやその願いもかないますまい」と妻の方が答える。


「なるほど、なるほど。子供とな。あいわかった。それでは、しばらくの時、待たれい」

 そう答えると、旅人は老夫婦の住んでいる小屋をあとにした。


 何週間。何ヶ月が過ぎただろうか?

 あの時の旅人が舞い戻ってきた。手には、小さな女の子を連れている。年齢は3歳くらいだろうか?

 旅人は「人さらい」だったのだ。子供を連れてくるなど、お手のもの。


 夫婦は、旅人がどこから女の子を連れてきたのか不思議に思い、なんとなくその理由を察したが、どうしても子供が欲しかったので、喜んで女の子を受け取った。


「それでは、私はこれで…」と言って、旅人は去って行く。

 夫婦は、たいそう感謝して、去って行く旅人の姿をいつまでもいつまでも見送り続けた。やがて、その姿が地平線に消えた頃、ようやく小屋の中に入り、女の子に名前を尋ねた。

 ところが、女の子は黙ったまま何も答えない。

「まあ、そういうコトもあるだろう」と妻も夫も、それ以上は何もきかず、手作りの料理を出してやった。


 それから女の子はスクスクと成長する。夫婦は、その子に「フリージア」と名づけ、それはそれはたいそうかわいがった。実の子以上に。


 フリージアがやって来てから、10年以上の時が過ぎた。年の頃は14~15歳だろうか?正確な年齢はわからなかったが、世間一般の娘と比べると、そのくらいの年齢に思えた。

 フリージアは、相変わらず無口だったが、それでも全く口がきけぬというわけでもなく、時折ポツリポツリと言葉を発することもあった。

 そんなフリージアが、ある日、育ての親である老夫婦に向かって、こう言った。


「お父さん、お母さん。実は、私はこの世界の人間ではありません。元々別の世界で生まれ、時の狭間(はざま)に落ちてしまい、ある男に拾われて、この家にやって来たのです」


 老夫婦は最初、娘の言葉が信じられなかった。何を言っているのかさえ理解できなかった。

 けれども、1つだけわかったコトがある。「この()は、家を出て行く時が来たのだ」と。


「これまでよく育ててくれました。その恩は決して忘れません。それでも、私は元いた世界に帰りたいと思います。その方法さえ、今はまだわかりません。でも、いつまでもこの家にいても、その方法は見つからないでしょう」


 フリージアの言葉に、ふたりは(うなず)いてから答えた。

「そうかい。そうかい。お前がそうしたいというなら、好きにするがいい。親の願いは『愛する子供が幸せになるコト』だからねぇ」


 フリージアは、ふたりの好意に甘え、何度も頭を下げてから旅へと出た。

 その後、自分の世界へ帰れたかどうかはわからない。ただ、旅先で様々な動物を仲間にしながら、多くの人々を救ったという話だ。


         *


「そういうのならば、ワシにもあるぞい」と、(おり)の外で聞き耳を立てていた看守が言いました。


「ほう。では、退屈しのぎに1つ聞かせてもらおうか」と、死刑囚は答えます。


 看守には見えませんでしたが、死刑囚の横に立っていた神も、うんうんと(うなず)いて同意します。


「では、1つ披露させてもらうとするかな…」と、看守は語り始めました。


         *


「ソロモン王と72の悪魔」


 むかしむかし、ある国に王様が住んでおった。王様の名は「ソロモン」

 ソロモン王は「大賢者」とも呼ばれており、卓越した魔術の使い手じゃった。


 ある時、偉大な天使が地上に降りてきてソロモン王に1つの指輪を手渡して言った。

「この指輪を手にした者は、大いなる力を手にし、多くの力ある存在を使役することができるであろう。ただし、死後、その魂に安息の日々は訪れない」と。


 ソロモン王は、何の迷いもなく、天使に与えられし指輪を指にはめた。

 その瞬間、あらゆる動物・植物と会話できる能力を身につけた。生き物と会話する能力のみならず、「悪魔と契約する術」すらも手にいれ、ソロモン王は72の悪魔を呼び出し、(おのれ)の配下に置いたのじゃ。


         *


「おっと。そろそろ今夜も約束の時間となったようですね。では、この続きは、また明日の晩に…」と言って、僕は語るのを終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ