~第20夜~「天才魔術師スズキイチロー」「虚神」
イチロー少年は「魔法総合学校」で学び続け、天才魔術師と呼ばれるようになっていました。
「魔法使い」「魔術師」「魔道士」などという呼び名は、人によって使い方が違っており、厳密には使いわけがされているわけではありません。勝手に自称していることも多く、他にも「大魔道士」「賢者」などという呼び方も存在しています。
それでも、一般的には「魔法使い」→「魔術師」→「魔道士」といった順番で成長していくとされていました。
この法則に従えば、イチローくんは、真ん中の部分にあたりますね。
年齢も20歳を超え、日本の法律に従ってもお酒が飲める年齢に達し、「少年」というほど幼くもありません。今後は「イチロー青年」と呼ばせてもらうことにしましょう。
イチロー青年は、マジック・アカデミーにおいて、何人かの親しい友人を作ります。人見知りな性格ではありましたが、「仲良くなれば誰よりも打ち解ける」という一面もありました。それゆえに詐欺師の類に騙されるということもよくあったのですが…
それとは別に、学校外部にも知り合いを増やしていきます。
というのも、「魔法というのは、別の分野と結びついた時に真価を発揮する」と気づいたからです。
たとえば、「医学と魔法の融合」「物理学と魔法」「スポーツと魔法」「ゲームと魔法」といった具合に様々な分野の知識や技術と結びつくことにより、劇的な進化を遂げることに成功します。
イチロー青年は、主にインターネットを使って、人々と連絡を取り合います。それも、音声や映像のやり取りではなく、文字情報で。
これならば、人見知りの性格を気にせず交流を深められますからね。顔が見えない分、精神的にはかえって深い話ができたくらい。
ちなみに、異世界と地球の交流が始まって数年後には、2つの世界の間に巨大な光ファイバー回線が引かれて、スムーズに情報のやり取りが行われるようになっていました。
膨大な量の知識のやり取りがネット回線を介して行われています。専門家同士のみならず、素人も交えながら、突拍子もない発言やアイデアが飛び交いました。
将棋の世界に「振り飛車」という戦法があるのをご存じでしょうか?あるいは「穴熊」という守り方もあります。
振り飛車も穴熊も、最初は素人の将棋指しが思いついた戦法だと伝わっています。もちろん、それらを立派に実戦で通用できるレベルにまで引き上げたのはプロ棋士の功績でありましょう。
それでも、最初のキッカケとなる発想がなければ、ここまでメジャーな戦法として後の世に伝わることもなかったはず。
それと同じように、どのような専門分野であれ、素人の発想というのはバカにできないものがあります。
いずれにしても、イチロー青年の功績は歴史に残ることになりました。「魔法文明の発展」という意味での功績はもちろんのこと。「様々な分野の人々をつなぎ合わせ、飛躍的に文明レベルを引き上げた」という意味でも。
魔法と科学の融合が果たされ、一般家庭でも気軽に「家庭用魔法器具(通称:家法具)」が使えるようになったのも、広い意味ではイチロー青年のおかげです。
いつかどこかで似たような発想が生まれ、いずれは同じような時代が訪れていた可能性もありますが、ここまでのスピードで達成できたのはイチロー青年なくしてはあり得ません。
そんなコトを言っていたら、エジソンやニコラ・テスラ、無線通信のマルコーニ、ダイナマイトの発明者ノーベルといった人々も必要ないということになりますからね。
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「虚神」
さて、ここで1度、全く別の世界のお話をしておきましょう。
遠い遠い昔、愚かにも神に戦いを挑んだ者がおりました。男は「神殺しの剣」を持ってして、神に斬りかかったのです。
悪いコトに、その者はそれなりに強い力を持っておりましたので、神に傷をつけてしまいました。
もしも、もっと力が弱ければ…神の足下にも及ばぬ力ならば、ここまでの怒りを買うことはなかったかも知れません。
けれども、自らに傷を負わせた存在を、神は許しませんでした。
そこで、罪人を捕らえると、罰を与えることにしました。その罰とは、男の知らぬ全くの異世界へと送り込むこと。
男が意識を取り戻すと、周りは見知らぬ景色。
実際に住んでみてわかったのですが、そこは別段どうというコトもない世界でした。地獄というわけでもなく、人々が争い合っているわけでもなく、ただ質素に平穏に生活を営んでいるだけなのです。
男が降り立った土地は小さな港町で、皆、魚や貝などをとりながら、つつましやかに暮らしておりました。
「おかしい…これがオレに与えられた罰なのか?この世界で、ただ平和に暮らすのが神の与えた罰?確かに退屈ではありそうだが…」
『退屈に勝る苦痛なし』という言葉もございます。
神が男に与えたのも、それと同じモノだったのでしょうか?
いいえ、違います。実は、男はもう1つ別のモノを与えられていたのです。
さて、今夜もそろそろお時間となりました。
この続きは、また明日の夜に。




