~第19夜~「小学生魔法使い誕生(その2)」
子供というのは不思議な生き物で。
たいした人生経験もないくせに、時として大人顔負けの偉業を成してしまうことさえあるものです。
特筆すべきは、その爆発的な成長力!
興味の対象を決めるやいなや、イノシシが突進するがごとく一目散に突っ走ります。時として、世の常識やルールさえも無視して!
それゆえに…手段を選ばぬがゆえに、その任務達成能力には目を見張るモノがあります。
たとえば、学校の宿題など見向きもしないくせに、妙に鉄道には興味を示し、日本中の駅名を覚えてみたり、古今東西の列車の型番をそらんじてみたり。
「この子は天才ではなかろうか…!?」と両親が勘違いしてしまう気持ちも理解できましょう。
ただし、大抵の場合は熱病に侵されたようなもので、時が来ればその類いまれなる能力も失われてしまうのが世の常です。
ま、「子供時代に一時、天才的能力を発揮しただけ」と、あきらめましょう。
ところが、世の中には極々まれに、生涯その能力を維持し続ける者というのが存在します。
スズキイチロー少年も、その中の1人でした。
イチロー少年が発揮したのは、「魔法」の能力。
つい最近、異世界より伝わってきたばかりの未知の力。
それを、レゴブロックを組み立てるがごとく、次々と組み合わせて新たな魔法を生み出してしまったのです。
「天才」という言葉が存在します。
その言葉は、彼のためにあるようなものでした。「何も知らないから」「若いからこそ」とも言えましたが、「複雑な言葉を操る言語学者」や「数学者」「物理学者」でも解析できなかった魔法をいとも簡単に自分のものとしてしまったのです。
正確に言えば、解析していたわけではないのかも知れません。
子供が公園の砂場で泥遊びをするように(この点においては、イチロー少年はまさに「子供」だったわけですが…)純粋に、ただ純粋に「世界に没頭して遊んでいただけ」なのかも。
それにしても、その吸収速度は恐るべきものがありました。
半分は理解し、半分は経験で学ぶことで、イチロー少年は次々と新魔法を覚えていきます。
もちろん、最初は単純な魔法から。
「炎」「氷」「風」「雷」といった基本魔法。「重力」「浮遊」といった応用技。それらを組み合わせて、炎と雷を同時に発生させたり。水と炎で爆発を起こしたり。風と水で嵐を起こしたりできるようになっていきます。
魔法というのは「テコの原理」のようなもので。小さな基本を組み合わせるだけで、通常あり得ないような大きな力を発揮させることもできるのです。
もちろん、イチローくんが元々持ち合わせていた好奇心や精神力も関係していたでしょう。けれども、1度解明されてしまえば、他の人たちでも利用することができます。
極端な話、誰でも!(以前にお話ししたように、人には向き・不向きというものがあるので、実際に誰でも同じようなコトができるわけではありませんが…)
小学校1年生の時から覚え始めた魔法は、小学校の高学年になる頃には、地球の研究者たちでも、もう誰もついて行けないレベルに達していました。
イチローくんはそのまま成長を続け、15歳を過ぎた頃には、異世界から訪れた高名な魔道士と平気な顔をして会話できるくらいにまでなっていたのです。
もちろん、そんな天才魔法使いを、日本政府も世界も放っておくはずがありません。
世界各地から「うちで働いてくれ!」というオファーが引っ切りなしにやって来ます。そんな中からイチロー少年が選んだのは、やはり「異世界で働く」という選択肢でした。ま、魔法や不思議な生物の本場ですからね。当然と言えば当然の選択です。
「お父さん、お母さん。これまで育ててくれたありがとうございました。僕、向こうの世界に行ってみます。そして、もっともっと勉強して、誰にも負けない立派な魔法使いになってみせます!」と、別れの言葉を残してイチロー少年は、異世界へと旅立っていきました。
「おお、イチローや。この前、生まれてきたばかりだと思ったのに、もう親元を離れていくのかい?」「つらくなったら、帰っておいで。いつでも待ってるからね」と、お父さんもお母さんも寂しがりましたが、仕方がありません。彼らの息子は、もう彼らだけのものではないのです。「世界遺産」とすら言える存在となっているのですから。
異世界へ到達したイチロー少年は、「魔法総合学校」で、専門的な魔法を学び始めます。
15歳でこの学校に入学する者は、こちらの世界でも珍しくはありましたが、前例がないわけではありません。
イチロー少年は、年上の人たちに交じって、勉学に励む日々が続きます。ただし、「子供の頃から自分の世界に没頭し過ぎたコト」と「若い頃に親元を離れたコト」などが重なって、ちょっとばかし変わった性格の大人へと成長していきます。
…とはいえ、充分に許容範囲内でしょう。少々、人づき合いが苦手といった程度のもの。ロイト・ルネバンドール博士あたりと比べれば、変人とさえ言えないレベル。
さて、そろそろ時間となったようですね。
それでは、スズキイチローくんのお話の続きは、また明日の夜に♪




