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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
19/1003

~第18夜~「ロイト・ルネバンドール博士の愉悦(その2)」「新種現る」「小学生魔法使い誕生」

「一生使い切れないほどの大金を稼ぎながら、まだ金を稼ごうというのか?この守銭奴(しゅせんど)め!」などと思わないであげてください。

 博士にとっては研究こそが全てだったんです。決してお金のためなどに働いていたわけではありません。

 自分の研究心を満たしてくれるならば、取引相手など誰でもよかったのですから。善悪に頓着(とんちゃく)のない博士ならではの生き方でした。


 地球と異世界に道ができて、よく思っていない人たちも少なからずいます。次のルネバンドール博士の依頼者も、そのような組織の者でした。


「ああ、博士!ルネバンドール博士よ!我々のために、より強いモンスターを作り出してください!なあに、資金の心配なら要りません。必要な額を言ってください。きっと、ご満足できるだけ用意いたします」


「フン。金か。『金は天下の回り物』というしな。あって損な物でもなし。じゃが、『強いモンスター』と一口に言っても、様々じゃぞ。ただガタイがデカいというだけなら、いくらでも作れる。そんなものでよいのか?」


「そうですねぇ。できることなら、敵を一掃できるタイプがよいですね。『敵』というのは、あなたのかわいい子に危害を加える者たちですよ。たとえば、モンスター狩りを楽しんでいる冒険者どもとか、地球から侵攻してきた軍隊といった(やから)を」


「なるほど、なるほど。じゃが、その『敵』とやらは、いくらでも()いてくるぞ」


「『可能な限り』というコトですよ。無限にエネルギーを生み出し続ける永久機関を生み出すのが不可能なように、『絶対無敵の生物』など誕生させられはしないでしょう。それはわかっております」


「それは、ワシへの挑戦状と受け取ってよいのかな?」


「挑戦状!まさに!ただし、挑戦状を叩きつけているのは、私ではございません。敵は外部にいるのです。冒険者どもが、あなたに挑戦してきているのですよ。ロイト・ルネバンドール博士!」


「フム。なかなかにおもしろそうじゃ。1つやってみるかのう。ワシの身につけてきた知識・経験・勘・反骨精神・欲望、全てをぶつけて…」


 こうして、ルネバンドール博士は弟子たちを総動員し、最高傑作を生み出すため、さらに研究の深みへとハマっていくのでした…


         *


「新種現る」


 冒険者たちは戸惑っていました。


「モンスターの狩り過ぎで絶滅するって話はどこ行った?絶滅どころか、増えてやがるぜ!」


「ヒャッハ~!モンスター狩りたい放題じゃねぇか!こりゃ、嬉しい悲鳴ってヤツだなぁ」などと言っていた戦士が、あっけなく巨大なカバのような生物に踏み潰されてしまいました。


 …かと思えば、すぐ横で中年の魔法使いが麻痺しています。空中を漂っているクラゲのような生き物に刺されたせいで。


「ダ~メだ、こりゃ!てった~い!一時撤退だ!」


 逃げていく冒険者リーダーの声に従って、他の仲間たちも次々と戦場を離れていきます。ゆとりのある者は、気絶したり傷を負って動けない者を連れながら。


 安全な場所まで引いた冒険者たちは、口々に訴えます。

「なんだか急にモンスターの奴ら、強くなってねえか?」

「攻撃力や防御力だけじゃない。毒やら麻痺やら、特殊な攻撃をする魔物が増えてきてやがる」

「もしかして、罰なのかな?私たちが生き物を狩り過ぎたせいで神様がお怒りになられたとか?」

「こりゃ、引退も考えなきゃならんな。オレも、そろそろ年だし。もっと安全な職につくとするか…」


 時代というのは常に移り変わるもの。

 どのような世界、どのようなジャンル、どのような業界でもそうですが、刻々と状況は変化していき、やがて大きな時代のうねりとなって人々を襲ってきます。

 巨大な波に飲み込まれて消えてゆく者。去って行く者。己を成長させ、時代の波を乗りこなす者。様々です。


 ここに来て、異世界のルールは一新されました。

 時代の変化について行けぬ者は、業界を去るしかないのです。かつでどのような栄華を誇った冒険者も、例外とはなりません。より強力なモンスターに対応できぬのなら、魔物討伐の世界から消えゆくのみ。


 逆を言えば、これはチャンスでもありました。

 敵が己を強化するなら、それに合わせて進化すればよいだけ。幸いなコトに、この世界は「地球」という名の別の世界と交流を始めています。そこで得られた新しい技術・知識・文明・文化・人材などを利用して、より強力な力を手に入れればよいだけのこと。

 人類はそうやって際限なく進歩と進化の歴史を繰り返してきたのですから。


         *


「小学生魔法使い誕生」


 地球が異世界とつながって、地球の学校でも「魔法」が教育科目の1つに加わりました。算数・国語・理科・社会・外国語などと一緒に魔法も小学校でまた亡時代の到来です!


 以前に「魔法はプログラムのようなモノだ」と言ったのを覚えていらっしゃいますでしょうか?


 新時代の到来と共に、大人顔負けのプログラミング技術を披露する子供が日本各地、世界各地で散見されるようになっていきました。

 生まれた時からスマホやパソコンが身近にある子供たちにとって、それはあたりまえのコトとも言えます。

 たとえば、計算機が誕生以前と以後では?そろばんが発明された時は?

 みんな同じです。時代の流れと進歩に従って、次の時代の子供たちは新たな能力を獲得するようにできているのです。


 魔法もそれと同じ。

 生まれた時から身近に存在していれば、小学生の低学年で、すでに並の大人よりも上手く扱える子がいても、なんら不思議ではありません。

 スズキイチローくんも、そんな中の1人でした。


 残念ながら、そろそろお時間となったようです。

 この続きは、また明日の夜に…

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