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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
15/1003

~第14夜~「商人の娘(その2)」「異世界の生理事情」

 上の2人の姉が結婚してあまり幸せそうに見えなかったので、末娘は家を出て都会で暮らし始めます。

 ちょうどこの頃、この世界は神様の気まぐれで、別の世界への道が通じた時期でした。そこで、娘は「地球」と呼ばれる世界へと遊びに行くことに決めました。


 最初は遊びのつもりだった地球暮らしですが、日本語を覚え、仕事を始めてみると妙になじんでいる自分に気づきます。

「もしかして、あたし、こっちの世界で生まれたんじゃないかしら?」と勘違いするくらいに。


 それに、地球の人たちはえらく娘にやさしくしてくれるのです。

 1つには、「異世界人が珍しい時代だった」というのもあるのでしょうね。それに加えて、娘は見た目もよかったので、男の人たちがチヤホヤしてくれたというのもあります。


 喫茶店のウエイトレスをやったり、イベント会場のコンパニオンをやったりしながら、娘は悠々自適な生活を続けました。

 そうして、いつしか恋に落ち、結婚します。


 結婚相手は、片田舎で温泉宿を経営しており、娘も宿の手伝いで忙しい日々を過ごします。

 やがて、子供が生まれ、娘は母となりました。1人は女の子。もう1人は男の子です。


 ところが、幸せな日々も長くは続きません。

 ある時、長い雨が続き、近くの山が土砂崩れを起こして、一家の宿は流されてしまいました。オシャレなログハウスをいくつも持っていたのに、全部全部土の下に埋まってしまいました。


 一家は路頭に迷います。

 ここで借金をして、ログハウスを建て直すという手もありましたが、それには何億円もかかることがわかりました。

 そこで、思い切って一家は異世界への引っ越しを決意しました。

 そう!娘時代に過ごしていたあの世界へ!


 これまで(つちか)った経験をもとに、異世界でも宿を経営し始めます。最初は小さな宿から。徐々に経営を拡大して。

 日本に住んでいた頃も、温泉は大人気でした。そこで、街の人たちと協力して、温泉を掘ることにします。さらに、ドラゴンを呼んできて、地元の名物にすることに決めます。


 時間はかかりましたが、どうにか温泉は湧き出します。捨てられて飼い主のいなかった子供のドラゴンをもらってきて、観光の目玉としました。


 このアイデアが大ヒット!

 日本政府の手も借りて、地球から大勢の観光客を呼び寄せて、一家は幸せに暮らしましたとさ。

 めでたし♪めでたし♪


         *


「異世界の生理事情」


 変な話ではありますが、女性にとっては非常に重要な話題でもあります。

 そう!「生理」です!


 月に1度訪れるやっかいな現象に、長年、女性冒険者たちは悩まされてきました。いや、女性だけではありません。一緒にパーティを組んでいる男性冒険者だって、人ごとではないのです。


「オイ!どうすんだよ、こんな時に!」と、伝説のドラゴンキラーこと、クロワさんが叫んでいます。


「だって、しょうがないでしょ。きちゃったものは!」と、女性魔術師のコッペも反論します。


 ここは深い森の中。

 男性3人女性2人のパーティを組んで「森の王退治」にやって来たクロワさんたち一行でしたが、途中で女性魔術師のコッペが「月のモノ」に襲われてしまったのです。

 月のモノってのは、ぶっちゃけ生理ですね。「アノ日」などとも呼ばれています。

 でも、冗談ではなく、女性にとっては大問題!


「だから女と一緒に組むのは嫌だったんだよ!誰だよ、こんなヤツ連れて来ようなんて言ったのは!」と、クロワさん。


「差別よ!差別!女性差別!」と、もう1人の女性メンバーである僧侶のココロネが声を上げます。


「チッ。そこに関しては謝るよ。けど、ほんとどうすんだよ?ココロネ、お前の回復魔法でどうにかなんねえのか?」


「回復魔法って、そんな便利なモノじゃないですから。戦いで負った傷を治したりはできるけど、体調を回復したりはできません」


「まあ、現実的に見て、置いていくしかないでしょう」と、盗賊(シーフ)のチャパタ。この男、「現実的に」という言葉が口癖なのです。


「オラ、どっちでもいいど」と、力持ちのショクパ。


「現実的に見て、今から1人で街に帰すのは無理があるでしょう。とりあえず、この大きな木の下で休んでもらっておいては?」


「ちょっと~!か弱い女性をひとり置いて、みんなで行っちゃおうっていうの~?誰かひとり残してよ~」


「誰が『か弱い』だ!誰が!」


「あ~、それも女性差別ぅ!」


「今のは差別じゃないだろう。謝らんぞ、オレは」


「じゃあ、アタシが一緒に残りますね♪」と、僧侶のココロネがやさしく言います。


「オイオイ、魔法使いに加えて僧侶まで抜けて、どうやって戦えって言うんだよ!むさ苦しい男3人だけで『森の王』に挑めってか?」


「オラ、どっちでもいいど」


「ま、現実的に見て、延期ですね。今回は素直にみんなで街に帰りましょう」


 多くの物語では語られることがありませんが、実は冒険者というのは、このように生々しいものなのです。


 さて、そろそろ夜明けの時間ですね。

 それでは、この続きはまた明日の晩に。

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