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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
12/1003

~第11夜~「異世界復興物語(その2)」

 異世界復興が始まった当初は、食料や衣料品などの物資が大量に送られてきました。

 もちろん、それはそれでありがたい行為ではありました。使い古した古着ですら、異世界の一般市民からは非常に感謝されたものです。


 ところが、そのやり方は「輸送費がかかるので割に合わない」というコトがわかってきました。

 そこで、「できる限りの物は、現地で作ろう!」という方針へと変わっていきます。


 この時点での異世界の文明レベルは、地球の500年以上前のそれと同じくらいでした(ただし、魔法に関しては現代の地球文明よりも遥かに進んでいるモノもあり、非常にいびつな進化を遂げていると言えます)


 「リープフロッグ現象」というのをご存知でしょうか?

 直訳すればリープフロッグは「カエル跳び」ということになります。カエルがジャンプして飛び越えるように、文明レベルが一気に進んでしまう現象。

 たとえば、先進国が発展途上国に携帯電話やスマートフォンを伝えることで、物理的にインターネット回線を敷設することなく、いきなりインターネットサービスを利用することができます。


 同じように、現代のエネルギー技術を伝えれば、途中の「公害で苦しんだ歴史」をスッ飛ばして、いきなり「汚染物質をあまり排出しないクリーンな火力発電所」を建設することも可能!


 農業であろうが医学であろうが全て同じ!

 人類が苦しみ、苦労して獲得してしてきた技術を、ある日突然導入することができるのです。

 それは、ある種の「チート行為」とさえ言えるでしょう。


「トラゴロウサン、ドウモアリガトゴジャイマス」と、現地の人がカタコトの日本語で話しかけてきます。


「いやいや~、どういたしまして。みなさんの生活が向上すれば、私の方も心があたたかくなりますよ~」と、井上虎五郎が答えます。


 もちろん、これが虎五郎の仕事なのです。国から派遣され「国土復興省」の役人として働くことでお給料ももらえます。

 …とはいえ、虎五郎としても、異世界が発展していく姿を眺めるのは楽しくもありました。人々が懸命に学び、メキメキと進歩していく様子を見守るだけで、なんだか幸せに気持ちになってくるのです。まるで学校の先生が生徒の成長を喜ぶがごとく。


 異世界人は、現代日本人よりもよほどやる気があり、体力もあります。


「言っちゃ悪いけど、現代の日本人は、誰も彼も覇気がなく、生きてるんだか死んでるんだかわかりゃしないヤツも多いよなぁ。うちの息子にしたってそうだが、『人生の目的』みたいなものを感じられない」と、虎五郎はひとりつぶやきます。


「それに比べて、こっちの世界の人たちは、やる気に満ちあふれてる。自分の若い頃を思い出すなぁ。これからの時代を作っていくのは、こういうやる気に満ちた人々だ!」とも思いました。


 その後、異世界にも工業化の波が押し寄せます。

 空気の()んだ異世界は、ほこりを嫌う半導体の製造にうってつけでした。


 同時に、鉄鉱石の発掘が本格化し、鉱山労働者が増加します。

 それまで農家として細々と生活していた一般市民が、まとまった額の収入を得られるようにもなりました。


 鉱山自体は元からあったのですが、ツルハシやシャベル、トロッコなどを使った原始的な採掘方法に過ぎませんでした。

 そこに、異世界(地球人からすると自分が住んでる世界)の人たちがやって来て、大型の掘削機やダイナマイトなど便利な道具をたくさん持ち込んだのです。おかげで、採掘の効率は格段に上がり、鉄製品がちまたに広がっていきます。


 地球では()れないような貴重なレアメタルもいくつも発掘されました。

 基本的な文明で劣る異世界人が、地球人と対等に渡り合うため、この手のレアメタルが取引の切り札として使われるようになります。


「最新型の有機ELテレビはいらんかね~!4K8Kはあたりまえ!今や16K32Kの時代だよ~!」などと、異世界電気屋で店員さんが声を張り上げています。


「今度ボーナスも入るし、55型を買っとくか~」「やった~!」「よ!お父さん太っ腹!」などと、3人家族が話しているのが聞こえてきます。


 ついこの間まで発展途上国並の生活をしていた異世界人も、最新の火力発電所(公害が少ないクリーンなエネルギー)や太陽光発電用のパネルがいたるところに建てられ、電気は使い放題です。


 もちろん、石炭や石油の発掘もガンガン行われています。

 地球の二の舞はゴメンとばかりに、供給量はコントロールされ、星の環境にやさしいエネルギー設計。二酸化炭素の排出量も適度に抑えられ、その上で一般市民の生活はうるおっているのでした。


 工業だけではありません。

 医学や天文学も急激に発展を遂げていきます。地球から顕微鏡や望遠鏡が持ち込まれ、新種のウイルスや化学物質が次々に発見されました。そこから、新しい薬が開発され、今度は地球に逆輸入されていきます。

 十数年の間に、ノーベル賞レベルの発見や発明がいくつもありました。


 ロケットも開発され、宇宙へ衛星がいくつも打ち上げられて、衛星放送やスマホの通信に利用されています。


 最初は、文明レベルの遅れていた異世界でしたが、短期間の内に追いつき追い越し、逆に新しい道具やサービスを地球側へと送り込むことになります。

 結果的には、地球の人々も恩恵を受けることになったのです。


         *


「いかがですか?シェヘラザード様」と、僕は尋ねる。


「そうねぇ。まるで魔法ね。でも、こんな風に上手くいけばいいけれど。現実には、こんなに都合よくはいかないんじゃない?」


「いえいえ、シェヘラザード様。これは現実に起こった出来事でございます!」


「現実に?」


「そうですよ!何を言ってるんですか?私が嘘を申しているとでも?では、明日はその辺のお話を進めていきましょう」


 夜が明ける時間が近づいてきたので、そういって僕は物語を中断することを許された。

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