~第101夜~「ひとりぼっちのドラゴン」
「シェヘラザード様。ようやく100夜を越え、10分の1経過ですよ」と、天使である僕は語る。
「そうねぇ。昔、私も同じようなコトをやったけど。今になって思い返すと、ムチャをやったわねぇ。よくあんなコトができたものよ」と、シェヘラザードは答える。
「まったく。何ごとにおいてもそうですが、1000日も連続で何かを成すというのは、実に大変なコトにございます」
「『千里の道も一歩から』って言うものね」
「その考え方からすると、ようやく百里を越えたばかりですね。それでは、先は長うございますが、今夜も物語を語っていくことにいたしましょう」
そう言って、僕は次の物語を始めた。
*
「ひとりぼっちのドラゴン」
むかしむかし、ある国にひとりぼっちのドラゴンが住んでおりました。
ドラゴンの名は、マロンケッツァー。
マロンケッツァーは非常に優秀なドラゴンであり、才能だけでいえば、長い一族の歴史の中でも、突出したモノがありました。事実、マロンケッツァーの父親はドラゴン族の王であり、他の種族を圧倒する力を誇っていたのです。
ところが、この時代、人間族が急激な力をつけている時期であり、急速に魔法や武器の研究が進んでいきます。
そうして、ついにドラゴンの王を打ち倒してしまいました。
ドラゴン族は人間族に復讐を果たそうと、一丸となって戦いを挑みます。
そんな争いの日々に嫌気が差したマロンケッツァーは、ひとりでどこへやら飛んで行き、深い山の奥で暮らすようになってしまいます。
「お父さん。お父さんは、なぜ死んでしまったの?あんなに強かったお父さんだって、ついに人間には勝てなかった。人間たちは、次々と新しい武器や魔法を生み出してしまう。どんなに強い種族であろうとも、人間の“進化”という能力には勝てはしない…」
そんな風に、山の奥の洞窟の中でメソメソしながら暮らす日々。
何百年の時が過ぎたでしょうか?(ドラゴン族の寿命は非常に長く、軽く数千年以上と言われています)
ひさしぶりに山からおりてみて、マロンケッツァーは驚きました。ドラゴンの一族は、とっくの昔に滅んでおり、世界は人間たちがわがもの顔で支配してしまっていたからです。
ビックリしたマロンケッツァーは、ますます山の洞窟に引きこもるようになり、それ以来、ふもとにおりてくるコトはなくなりました。
それから、また何十年かの時が流れました。
ある時、ひとりの少年が山の洞窟を訪れます。少年もまた、ひとりぼっちでした。
世の中の何もかもが嫌になり、山で死のうと思っていたのです。
少年の名は、ハーティア。
偶然にも、ふたりは出会います。人を恐れ、ひとりぼっちのマロンケッツァー。世をはかなんで死を選ぼうとしているハーティア。
お互いに世界の流れにはついていけないふたりです。気が合わないわけがありません。出会ってすぐに意気投合すると、そのまま一緒に暮らし始めました。
それから、また数年の時が経過しました。
ハーティアは立派に成長し、もはや少年ではなく青年となっています。ドラゴンと人間の青年は、それはそれは仲むつまじく暮らしています。
ところが、そんな夢のような生活にも終わりが来ます。ふたりの間に、第3者が割って入ったのです。
やって来たのは、人間の少女でした。少女の名は、ラキス。ラキスもまた、世をはかなんで死のうと思って、この山を訪れたのです。
ハーティアは、ラキスの姿を見ると、一瞬にして恋に落ちてしまいました。そうして、猛烈にアタックをかけます。
ラキスの方も「死ぬくらいだったら、この人と添い遂げた方がよいかも知れない」と思い直します。
こうして、ラキスとハーティアのふたりは、恋人となって山をおりていきました。
おもしろくないのは、ドラゴンのマロンケッツァーです。
「なんだい!なんだい!あんなに仲良くなったのに、人間の女の子なんかに夢中になって!あっさりと僕のコトを捨ててしまったじゃないか!やっぱり、人間なんて信用できないや!」
マロンケッツァーは気が狂ってしまい、心の中がムシャクシャして、どうしようもなくなってしまいました。
そうして、ついに決心します。
「そうだ!人間の世界なんて、みんな滅ぼしてしまえ!僕には、その力があるはずなんだ。子供の頃から、みんな言ってたもの。『お前には才能がある。誰よりも強く、残忍になれる才能が』と」
それからのマロンケッツァーたるや、鬼気迫るものがありました。
最初から最後までひとりぼっちなら、まだよかったんです。それが、一度、人のぬくもりに触れてしまったものだから、余計にひとりが寂しくなってしまいました。
恨みのパワーは、何よりも強いエネルギーとなります。心の底から無限に湧き上がってくる思いを糧に、マロンケッツァーは必死に自分を鍛え続けました。
みるみる内に筋力は増し、吐き出す炎は強くなっていき、いくつもの強力な魔法を覚えていきます。
さて。最強のドラゴンとなったマロンケッツァー。一体、どうなってしまうのでしょうか?
この続きは、また明日の夜に…




