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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
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~第99夜~「ゴブリン族の商人ネグロ・ヴェルメリオ」

「ゴブリン族の商人ネグロ・ヴェルメリオ」


 地球と異世界の間に道が通じ、文化の交流が始まると、いろいろと不都合も起こります。

 たとえば、怪しい宗教のようなモノが入ってきたり。なにしろ、異世界は魔法の本場です。「異世界発」と頭につけば、何ごとも信憑性が増すもの。

 そんなうたい文句に踊らされて、コロッとだまされてしまう人も多いのも、また事実。

 「このキノコを食べたら、末期ガンが完治しました!」とか「生まれてこの方、ずっと気が滅入って仕方がなかったのに、このサプリメントを飲んだら、途端に世の中が明るく見えるようになりました!」などという商品と同じようなもの。

 「異世界小麦粉」や「異世界ジャガイモ」「異世界ホウレンソウ」などなど。頭に“異世界”とつければ、なんでも体に良さそうな気がしてくる人がいるのです。

 もっとも、経済的な観点から見れば、このような怪しげな商売も、景気の回復に一役買ってくれているので、無下にはできないんですけどね。


 ここにも、そんな怪しげな商売に手を染める(やから)がひとりおりました。

 名は「ネグロ・ヴェルメリオ」

 ゴブリン族の若者でありました。


 ゴブリンといえば、異世界ファンタジーの小説やアニメ、ゲームなどで、一番最初のザコ敵として登場するコトが多い生き物。

 しかし、決して弱いわけではありません。少なくとも、そこら辺の強盗や追いはぎよりかはよっぽど身体能力も戦闘力も高く、並の人間では到底勝てません。

 身のこなし1つ取ってみても、野良猫よりも素早く、2~3メートルの高さから落下しても、クルリと全身を回転させ、勢いを殺して着地することができます。


 …とはいえ、そこそこ腕のある冒険者からすると、やはりたいした敵ではなく、以前は初心者向けのクエストで「ゴブリン狩り」なんてのがよくあったものです。

 地球と異世界「アルファリス」の間に道ができてからというもの、「世界人権団体」の(たぐい)がうるさくなって、現在ではゴブリンもエルフやドワーフと同じように、人権が保障されています。

 なので、安易にゴブリン狩りなど行ったら、逮捕されてしまいますよ。


 話を戻して、ゴブリン族の若者ネグロ・ヴェルメリオについて。

 人権が保障された代わりに、まっとうな商売で生計を立てなければならなくなったゴブリン族は、世界中を渡り歩く商人となりました。中には、彼のようにわざわざ地球にまでやって来てビジネスの手を伸ばしている者もおります。

 商売熱心なコトですね~


 商売熱心なのはいいのですが、元々ズル賢いゴブリン族のことです。

「はぁ~、めんどくせぇなぁ。一生懸命真面目に働くなんてのは性に合わねぇんだよなぁ。どうにか楽して金を儲ける方法はないものかね~?」と、この調子。

「そうだ!アルファリスから持ってきた商品を、適当な売り文句をつけてバカ高い値段で売りつけてしまえ!シッシッシ、オレ様も賢いね~!実に賢い!人は、これを『付加価値』と呼ぶ」


 ネグロは「いかに楽して大金を儲けるか?」に命をかけているような男でしたので、地球にやって来てからも、ビジネスの勉強は欠かしません。そこら辺の大手ブックストアに立ち寄り、中古で100円程度の値札がつけられているビジネス書籍を何百冊と購入し、読み漁っておりました。

 汗水垂らして一生懸命に働くのは苦手でしたが、こういう所は妙に勉強熱心なのです。それも、ある意味で、才能と言えるでしょう。


 そんなでしたから、ネグロは商売の基本がわかっております。

 商売の基本その1「安く仕入れて、高く売る!」を普段から実践していました。

 さらに、商売の基本その2「客が満足していれば、どんな暴利をむさぼっても、詐欺ではない」も応用します。


「さあさ、そこのお姉さん!寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!異世界特産の珍しい薬草があるよ。これさえ飲めば、元気モリモリ、お肌はツヤツヤ!今夜も彼氏は大喜び!彼氏がいないなら、夜のバーで簡単に見つかっちゃう。そんな魔法の薬草だよ~」

 …と、この調子。

 実際には、異世界ならばどこにでも生えているフツーの薬草なんですけどね。もっとも、(せん)じて飲めば、体力くらいは回復するでしょう。完全にウソをついているわけでもありません。


 ゴブリン族は、こういうのが得意でした。

「決してウソではないのだけど、完全に本当でもない。遠回しな表現をして、言葉巧みに相手を誘導し、自分に都合のいい解釈を押しつける」

 まさに商売人には打ってつけの性格です。もちろん、全てのゴブリン族に商売の資質があるわけではありません。中には、引きこもりのゴブリンというのもいて、人とも会いたがらないし、家からあまり出たがりません。


 人や物事には「向き不向き」というものがあって、ネグロは根っから商売人に向いていました。

 薬草だけでなく、異世界の木の実だとか、見た目の美しい石だとか、元手がほとんどかからない物を次から次へと売りつけて、一財産作ることに成功します。


 さて。

 今夜も、そろそろお時間となったようです。この続きは、また明日の夜といたしましょう。

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