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第9話(ようやくやってきたわけだが)

 突然彼らの前に転移しては驚かせてしまうだろう、といった配慮から、まずは今回の戦いがある校舎近くの裏路地に転移した。

 人はあまりいないが、校舎の方には人が沢山いるらしくざわめ気が聞こえる。

 随分人が沢山見に来ているらしい。


 魔力の気配から人数を換算すると、だいたい、542人ほどいるようだった。

 その中でひときわ大きな魔力の気配を感じる。


「これがカタリナか。相変わらず強い力を感じるな」


 などと頷いているとウェルフが、


「アイズ、俺、カタリナという人物の魔力を感じ取れないのですが」

「隠しているからな。……ウェルフには荷が重い相手か」

「そうみたいですね~。はあ、今の時代に四天王とかやらずに済んでよかった……。これ、多分俺が勝てないタイプの人物ですね。勇者をなめていました」


 などとウェルフがぶつぶつ言いながら、何とか対処できるだけの力をつけねば四天王を自称できないのではと更に悩んでいた。

 だが俺としては、


「ウェルフはやっぱり勇者よりは強くなりたいのか?」

「それはそうですよ。負けるのもいやですしね。……それに強い方が、よりかわいい女の子にモテるってことでしょう?」


 そこで何かおかしなものが俺は混ざった気がした。

 強い方がモテる? というのは幾らか分からなくはない。

 きっとプロレスなどを見て憧れる女子のようなものだろう。


 だが可愛い子、というのはどこから来たのだろう?

 女の子=可愛いなのか?

 否定はできないような気もするが……と思いつつ、まだカタリナに会うまでは時間があったというか校舎の裏道を歩いていたので、


「どうして可愛い子、なんだ?」

「? ああ、えっと、勇者は美人が多いじゃないですか。だから彼女たちよりも強ければ、可愛い子にモテる?」

「なるほど。一理ある。だが……俺は思う所がある」

「なにかな?」

「先日、俺は自分が美形の類であったと深く自覚させられた。しならなうちに販売された、美形魔王図鑑なる、俺のあずかり知らぬ場所で販売されていた怪しい書物に関してだ」

「……なんか口調がおかしなことになっているというか、ちょっと古風で、魔王が敵対する人物に話しかけるような口調になっていて、俺としては何となく怖い気がするのですが」


 そこで俺の怒りを口調から察したウェルフが引くつきながらそう俺に返してくる。

 だが俺は、


「まさかあのように我が性格から何からを改変してくれようとはよもや……」

「あ~、えっと、それで俺の意見の何が間違っていたんだ? 強ければかわいい子にモテるんじゃないのか?」


 ウェルフがそう言ってきたので俺はとりあえずウェルフの顔を確認してから、


「うむ、お前も一応は“美形”に属する人物だ」

「そうなのですよ~、自分で言うのもなんですが、俺はイケメンです。キリッ」

「でもイケメンチートはなぜか使えなかった。そうだろう?」

「それは……不思議なんですよね。女子の黄色い声が俺の周りにはなかったんですよね。だからひょっとして俺はそこまでイケメンじゃないんじゃないだろうか? と悩んだりもしましたね~」

「校長曰く、女のあしらいがうまくないと、モテないんだそうだ」

「……」

「モテないそうだ」


 とりあえず俺は、大事なことなので二回繰り返した。

 過酷な現実について俺が呟くとそこでウェルフが小さく震える。

 やはり衝撃が大きかったのか、と俺が思っているとそこでウェルフが、


「そうか……四天王として、時に女子をかどわかし自分に魅了して自分の手駒にする話術と行動が俺には足りない……」

「俺、ウェルフがそういった努力をし始めたら、友人を止める」

「あ、はい。さすがにこれは……でも処世術として覚えておくべきか……」

「手口を知るのはいいが、ウェルフは意外に人が良いから逆に酷い目にあいそうだから、悪いことはしない方がいいと思うぞ」

「……実はモテる男のナントカという自己啓発本を買って試してみたのですが、うまくいかなかったんですよね~」


 そこで実は挑戦済みだったことが発覚したウェルフではあったが、そこで、


「おう、兄ちゃん。こんな路地で何をやっているんだ?」


 そう言ってそこで、今時珍しそうな……頭の中心部だけ色を付けている、モヒカンヘッドの人物二人に俺達はからまれたのだった。








 前時代の郷愁を感じるその姿に俺はある種の不思議なものを感じつつ、三人ほどかと思いながら、


「何か御用でしょうか」


 そう聞き返す。

 するとそのうちの一人が、


「今日の一大イベントに来たんだろう? 魔族の国から」

「はあ、そういうことになります」

「自分たちの魔王様でも応援に来たのか? そういう奴らが何人もいてな。しかもこういった裏路地から来ることが多くて、今日はいい“稼ぎ”になっているんだぜ」


 そう得意げにモヒカンの一人がいる。

 どうやら俺たちを応援しに来て呉れた魔族の人達から、お金を巻き上げたりしているらしい。

 魔族であるから人の国ではあまり問題になりにくいだろうと踏んでいるのか……しかし、俺たちを応援しに来てくれた人たちになんてことをしてくれたのだと俺は思う。

 

 これは、少し痛い目にあわせてしまったほうがいいのか?

 だが、ここで問題を起こすと“魔王クエスト”の方にも影響が……などと考えているとウェルフが俺の前に出て、


「今日は大事な日なので、友人の俺が相手をしますよ。この程度ならば怪我をさせずに無力化はできます」

「あ? 随分と自信がありそうだな。俺はこう見えても勇者の学校に一時期は通っていたんだぜ?」


 そう自慢し始めたモヒカン。

 どうやら一時期と言っているので途中で追い出されたのかもしれないと俺が検討をつけていると、そこでナイフを取り出し、そこに炎をまとわせる。

 路地に少し入っているから人目に付きにくいとはいえ、魔法を使えばここは勇者が沢山いるから誰かに気づかれそうだと俺は思ったが……すぐに理由を悟る。


「随分と強力な隠ぺいの魔法が使われているな」

「お、わかるのか? 最近貰った俺のお気に入りの品だぜ」

「貰った?」

「そうさ。俺は優れているからな。この程度のものが使えて……」


 そう自慢気に話し出した所で、路地の先に、何かが飛び跳ねるように現れる。

 やはり気づいたか、そう俺は思う。

 現れたのは鮮やかな金色の長い髪の少女。


 けれどその青い瞳は今、怒りを秘めている。

 勇者王、カタリナ。

 俺が知っているのは笑顔の可愛い少女だったのだが。


 敵に対しては彼女はこんなものなのか、と俺は思ってみているとモヒカンの一人が悲鳴じみた声を上げる。


「“血まみれの希望ブラッディ・ホープ”、なぜこんな所に!」

「私を知っているのね。嬉しいわ。でも……その物騒なものを使って何をしようとしていたのかしら」

「く、こ、この……野郎ども、逃げるぞ!」

「逃げられると思っているの? 私から」


 そう呟いて、カタリナが跳躍し……十秒と経たずに全員叩きのめしてしまったのだった。








 倒した彼らは、学園の方で対処してくれるらしい。

 また、金品の巻き上げといった犯罪も、これから対処してくれるそうだ。


「まさかこんなことが行われているなんて。代表として謝罪するわ。ごめんなさい」

「いえ、カタリナさんのせいでは……」

「でも不愉快な思いをさせてしまったもの」

「でも貴方のせいじゃないです。それに、カタリナさんには笑顔いて欲しいです。可愛いですし」


 そう俺は、こちらは気にしていませんよと伝えるとカタリナがまた顔を赤くして、


「だ、だから可愛いって……」

「え?」

「いえ、言われなれていないものですから。それでそちらの方は……確か、魔王アイズの友人であり自称四天王のウェルフさんだったかしら」


 そうカタリナが声をかけるとウェルフはびくっと体を震わせてから、


「俺のことまでご存じなのですか?」

「情報収集はこちらもしているの」

「こちらも気を付けてはいたのですが、そうですか。俺もまた頑張らないと」


 などと言ってウェルフが落ち込んでいた。

 どうやら自分の情報を隠そうと頑張っていたらしい。

 と、そこでカタリナが、


「難しいと思うわよ? だって一番の本命で探していたのはそちらのアイズの方だし」

「どういうことですか?」


 そこで俺は、どうして俺が? と思っているとカタリナが目を瞬かせて、


「確か、アイズ、貴方って魔王美形図鑑では一番人気キャラなのだけれど……」

「……本人の前でキャラと言われると変な感じなのですが」

「あ、そうね。ごめんなさい。それで、やっぱり生写真が欲しいでしょ?」

「え?」

「というわけで写真を撮ろうとしても全部、魔法を解除キャンセルされてしまって一向に盗撮……写真はとれないのよ。身に覚えはないかしら」


 そう俺は言われて俺は、真剣に考えてみたが……そういえば写真を撮られそうになったので、暗殺や刺客を送り込むためのものがまだ来ているのかと思い、全部消し去ってみたのだ。

 どうやらそれのことを言っているらしいと俺は気づきつつ、そういえばやけにさっきのない変な……こう、絡みつくようにぞわぞ和する視線も感じたようなと俺が思っていると、


「それで一緒にいる美形くんもターゲットになっているから、写されたり、情報が自然とはいってくるというわけ」

「……おまけみたいで嫌だな」


 その話を聞いて呻くようにウェルフが呟いた所で、俺達はようやく俺は、“ムーンライト学園”の入り口にやってきて、そして、


「お待ちしておりました、魔王アイズ様!」


 そう言って、ピンク色の短い髪の少女が、やけに……憧れるような眼差しで、俺の前に飛び出してきたのだった。


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