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第8話(移動)

 約束の日がやってきた。

 とはいっても夏休みに入ってすぐに“魔王クエスト”が始まるわけではなく、二日間ほどの休みがあった。

 夏休みに入る前に、今回俺が向かうはずのすべての勇者向けの高校の配置なども把握するために簡単な下見もすでに行っている。


 戦闘をしそうな場所も事前に様子見をした。

 特に放課後といった時間であったので、移動に、授業が終わってから少し時間をずらし手つくようにしたため、放課後の部活のための着替えなどには鉢合わせしないよう配慮した。

 そうして様子を見ていると、やはり女性が多い。


 どうしてここまで女性ばかりが多いのか? といった疑問が俺をかすめるも、なんでも現在“勇者”としての働き口が少ないらしく、それの影響であるらしい。

 都市などでは結界などをはる専門の魔法使いがいるから安全であり、外に出るにしても魔法の道具や、それ以外にも護衛のような人をつけたり……魔物の討伐隊が周囲の危険な魔物を定期的に刈っている。

 また、予知能力を持つ巫女などが危険な魔物がどのあたりに現れるのかを全部ではないか把握しているので退治しやすいというのもある。


 それでも漏らして、凶悪な魔物が現れたりするのは人間側も魔族側も大差ない。

 それもあって勇者学校の存続が問題にもなっているのだろう。

 ただ魔物関係やその他の事を考えると、魔法使い、治癒士などの方が将来的に安定している。


 しかも、勇者といった余計な勉強を経由するのではなく、受験勉強といったものに集中して大学へ……というのもあり、そちらに行く傾向が強いとの事。

 また、過去何回にもわたり女勇者が偉業を残している、それも女性の多い理由であるらしい。

 その中で有名なのは伝説の女性勇者“アルカナ”であり、この世界では比較的古いものの文字などが作られていたころの時代であり……そしてある意味で、一番魔族との大きな正面衝突をした出来事であったため、二次創作も盛んにおこなわれて人気の高い話であるらしい。


 その二次創作に憧れて? そちらの方に向かってしまう女子もたくさんいるとの事だ。

 といったような話を一通りしたが、それらにもまして重要な彼女たちなりの要因があるらしい。

 それは……女子の制服が、勇者学校は可愛い。


 俺にはあまりよく分からない、そこは女子にとって重要な部分であるらしい。

 その中でも七曜の“日”に当たる学校の制服は大人気だったそうだ。

 つまりあの“勇者王”カタリナの制服がそうなのだろう。


 確かに白を基調とした彼女の服は彼女に似合っていたように感じる。

 ちなみに七曜の月=黒、火=赤、水=青、木=緑、金=黄、土=こげ茶、日=白といったテーマカラーがあるそうだ。

 といった話を俺は思い出しながら、周囲を見る。


 まばらにいる男子生徒は、数少ない男子生徒同士で固まって遊んでいるようだ。

 ただ人数の比率いでいくと、俺が戦う相手は男というよりは女になりそうだ、と気づく。


「出来るだけ戦闘であれば怪我をさせないようにしないとな。もちろん相手が男でもだが」


 と俺は一人呟く。

 平和な時代には平和な時代のルールがある。

 ただでさえ俺は自分の力の制御がなかなかに難しい。


 その制御の練習の一環というのもあって今回の魔王クエストに俺は参加するのだ。

 何かいい方法が見つかればと思いながら見まわして、俺は帰宅する。

 大体の場所は分かったので、当日は迷わずそちらに向かえるだろう。


 といった事を確認してから試験の勉強をして、試験を受けて夏休みに。

 初めの方の二日間は“魔王クエスト”がなく通常の夏休みとなった。

 その間俺は夏休みを満喫すべく、プールに一人で行く。


 流れる巨大プールのある場所で、浮き輪に乗りながら流されていくと全ての日常の疲れが癒され、気が抜けていくようだった。

 ただ流される人生……それもいいのかもしれない、などと哲学的だな~と自分自身で思いながら水に浮かんでいた所、あまりにも気を抜きすぎていたためか、気づけばまたも召喚魔法が発動されて“海蛇シーサーペント”という巨大で危険な魔物を呼び出し、俺が慌てて対処した。

 だがその光景は一般の方々にはアレだったようで、けが人が出なかったものの……俺はプールに出入り禁止となってしまった。


 あのプールでただ流されていくのも気持ちが良かったのに……。

 俺は自分の体質を即急に改善しなければと心の中で決める。

 そして俺は、決意を新たにしつつ、“魔王クエスト”の当日に進んだのだった。










 まず“魔王クエスト”当日、俺はウェルフと俺たちの学校の校門前に来ていた。

 そこにはすでに制服姿のウェルフがいて、


「アイズ~、ここだ~」

「手を振らなくてもいい。すでに見えている。というか早いな」

「当然さ。何しろ美少女と、魔王の戦いっぷりを間近で見れる絶好の機会だからな」

「そうかそうか」


 どうやら美少女が目あてなだけでなく、戦闘にも興味があるらしい。

 以外にもウェルフは勉強熱心なのだ。

 そう俺が好感を持っているとそこでウェルフが、


「ただ、ちょっとした情報筋からの情報ですが、どうもこの“魔王クエスト”には別の目的もあるみたいですね」

「そうなのか? ……別な理由、ね。俺に全員勇者を倒させてて、勇者達から反感を買おうとか?」

「そういったものではなくこう……もしかしたらあるかもしれないし、必要ないかもしれない、でも起こると大変? みたいな何かではあるらしい」

「なんだそれは」

「どうも予知関係に現れているらしいんですが、何というかこう……今までに前例がないとの事で、どうなるか予想がつかないとかなんとか」

「不穏だな」

「ええ。といった“何か”があるかもしれないと念頭に置いておいた方がいいかなとおもってアイズに伝えておくことに」


 とのことだった。ただこう言った話を聞いていて毎回思うことが俺にある。つまり、


「情報集めから何から、ウェルフは本当にすごいよ。俺の場合は大抵力業で解決だから」

「それも解決方法の一つですからね~、もっとも俺の場合は、魔王に使える四天王になるためにはどんな能力が必要か調べまくって手に入れたのがこの能力ですからね。ぜひ活用していただきたいですね~……動力が無駄になるのは嫌ですしね」

「そうなのか?」

「……本当に、アイズに出会うちょっと前まで、俺の魔王に使える四天王レベルの能力って、魔王もいなくなるしどうしようと思っていたんですよ。凸アイズのおかげで色々と使う機会が増えて、ちょっと嬉しいです」

「そ、そうなのか」


 そこでウェルフのある意味切実な願いについて聞いてしまった俺は、微妙な反応になった。

 まさかこんな所でそんな話を聞けるとは。

 だが、と俺は思うのは、


「なかなか外で一緒に遊びに行ったりしてくれないのはなぜだ」

「それが、本当に日程が合わないんですよ。親戚の店を手伝いに行ったりするときに限ってアイズから遊びの誘いがくるし。あれは未だに謎です」

「……」

「やっぱり歴代最強魔王なので、無意識に運命すらも改変しているとか?」

「運命改変は流石の俺でも無理だと思うぞ?」

 

 あきれたように俺が返すと、そうだよなとウェルフが笑う。

 そんな話をしつつ、俺は“魔王クエスト”の会場へとやってきたのだった。 

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