第14話(“火”の勇者学園-1)
次に俺が魔法を使ってやってきた学園近くは、周りが山に囲まれた長閑な田舎の学校、といった雰囲気である。
ただ勇者の学校だけあって、周りの柵に当たる部分は結界しようになっているが……。
「随分古い結界だな。しかもあんまり使われていないようだ」
そう俺が確認して、今回の戦闘はどうしようかと考える。
以前確認した時と同じままで、“魔王クエスト”時には何らかの処置がなされるのでは? などと思ったがそんな事はなさそうだった。
戦闘をすれば流れ弾がまわりに散らばって危険かもしれない。
そのためにも結界などを張ろうか、もう張っておいた方がいいだろうか?
いや、相手の勇者に会って話をしてからの方が良いかもしれない。
一応はその勇者の領域であり、よそから来た俺が何かを勝手にすると矜持が傷つけられてしまうかもしれない。
などと俺が悩んでいるとカタリナが、
「結界はなくても大丈夫よ?」
「そうなのか? だが……」
「ここの“火”をつかさどる“フレア学園”は、昔は確かに炎を扱うちょっと過激な勇者達だったんだけれど、こう、魔王と戦わなくなって平和になったからそちら方面もあまり好まれなくなって……その結果、彼女たちの間であるものが……いえ、以前、魔王に勝利した勇者がいたことからそちらが主流になったの」
「……もしかして“料理”か?」
「正解、よく分かったわね」
「いや、そういった勝負をしたという記録もあるし、事前に様子見しに来た時、校庭で炎を呼び出しながら肉の丸焼きを作っているのを目撃したが」
そう俺が以前様子見に来た時を思い出す。
確かあの時校庭で何人もの女子が謎の肉の丸焼きを作っていたのだ。
いい匂いのする料理だった。
特性のたれをかけていたらしいのも目撃したな、と俺が思っているとカタリナが、
「なるほど。一応事前に“偵察”はしているのね?」
「それはまあ。道に迷って遅れたり、行く場所を間違えたら大変だしな。このイベントは成功させないといけないんだろう?」
「ええもちろん。やる気でいてくれて嬉しいわ」
「引き受けはしたからな。だから、今回も俺の誤解を解くのを手伝ってほしい。また何をやらされるんだろうか……」
そう俺が呻くとそこでそれまで黙っていたサナが俺に、
「そうですね~、やっぱり俺様キャラを求められるだけかと」
「……どうしてそんなのが好きなんだ。分からない」
「女性と男性で色々と違うのですよ~。でもこういう感じも私は“アリ”だと思います」
「……ありがとう」
とりあえずは慰めて? くれているらしいサナに俺は、そう答えた。
だがこういった展開はそろそろやめて欲しいと俺は思ったりする。
と、そこでウェルフが、
「ではまた俺は女の子にかこまれて楽しんでいますので、では」
「……その位置をかわれ。四天王の一人として、俺を倒す前にウェルフを倒すのだとかやってみるか」
「え~、嫌です。女の子に俺は囲まれていたいです」
応援は頑張りますよ、と言われて複雑な気持ちになりながら俺はようやく学園の門の所にやってくる。
と、そこには一人の少女が不機嫌そうに立っていた。
赤い髪のツインテールの彼女だが、俺に気づくと睨み付けて、
「よく来たわね、魔王アイズ」
「……はい、初めまして。アイズと申します。この度は“魔王クエスト”に参加させていただくことになりました。お手柔らかにお願いいたします」
「……」
とりあえず睨まれていたので俺は、そう目の前の彼女に言う。
おそらくは今回の勝負をする人物だろうと思い……“料理”勝負であるので魔力はそれほど関係ないのだろうと考えながら俺はとりあえず、そう答えるとそこで彼女は顔を青ざめさせて、
「え? も、もしかして別人です、か? カタリナ様が一緒に……でも、アイズって……」
「はい、本人です」
「だってこう、『料理? そんなもの……お前の手料理を食べるに決まっているだろう?』とかそんな、自分で作らず他の人に作らせたり口説いたりするような……」
などと聞きながら俺は、また新たな設定が追加されていたことを知る。
誰だ、そんな台詞を俺につけた人物は……絶対に許さないぞ……そう俺が思っているとそこでカタリナが、
「えっと、その美形魔王図鑑に書かれているものは全部作られたもの、創作のもので、本当はそこまで俺様ではなくて……アイズはもっと大人しくて真面目な人物なの」
「え? そ、そうなのですか? みんなそういったセリフを楽しみにしていましたが……いえ、そう見せかけているだけかもしれません」
そう言って彼女は俺の方を見て……そして俺はもしかしてその台詞を言わせられるのだろうか? といった恐怖にさいなまれていると、
「私はこの“火”の勇者である“フレア学園”の勇者シルフィアです。お見知りおきを」
「あ、はい。今日はよろしくお願いします」
そう俺が返すと、シルフィアが俺をうかがうように見て、
「歴代最強魔王とはいえ所詮魔力頼りの脳筋です。“料理”の力であなたを完膚なきまでに倒しましょう」
「え、えっと……」
「他の勇者たちの出番など、必要ないと思い知らせてやります」
などというシルフィア。
これ、イベントとして成立するのだろうか? といった俺の不安が服らがるのもすぐに、それどころではなくなった。
校庭に入ると女性の黄色い声と共に、先ほど聞いた美形魔王図鑑のセリフを言わせられ、その後に実は普通の人なんですといった説明を追加した。
それにがっかりするような声をきいて俺は、かならずや、あの図鑑を作った人物を締め上げてやると、心に誓ったのだった。




