第11話(月の学園勇者との戦闘-1)
どうやら俺は、最終的に戦闘となるであろう勇者王カタリナによって『血まみれのぼろ雑巾』にされてしまうらしい。
随分と物騒な言葉ではあるが……俺自身の能力が過小評価されている気がしないでもない。
こう見えても歴代最強魔王の名前をいただいているが、確かに俺のこの能力を存分に生かせたことは一度もない。
今のこの平和な時代にはやはり、凶悪で強大な魔法は必要とされていないのだ……と言いたいところだが、実際のところこの平和を守るのに必要であったりする。
報道もされず、未然に被害を防ぐためにこの力を使うことは多々あった。
同級生たちと組み、実の所人間と魔族の国両方一気に滅ぼされそうな災厄をいち早く察知し、処理を行ったりもする。
そういった時に、人間の勇者たちと協力を……といった話がなかったわけではない。
だがそういった調整をしている暇がない宇ほどの切羽詰まった際役であることが多く、一応は伝えるも各々で行動ということで、合同での戦闘は一度も俺の場合はなかった。
昔はそういった事があったようだが、俺達の世代では経験はなかった。
伝え聞く勇者達はつよかったぞ~、俺達も負けないように頑張らないとなといったような先輩の言葉を聞いた程度である。
実際に力を“隠した”状態でも勇者カタリナや今戦闘をしようとしているサナは敬意を表するに値する人物である。
そう俺が考えつつ、そこで俺はあることを思い出す。
つまり、先ほどのカツアゲをしようとしていた不良? の人物たちだ。
彼らはカタリナを見て“血まみれの希望”と言って逃げようとしていたのだ。
そして確か美少女勇者図鑑だか何かに乗っているプロフィールでも……。
そう考えると別な意味で何となく不安になった俺は振り返ると、カタリナと目が合う。
ちなみに現在俺とサナは、お互いのリボンが奪われたら奪った方が勝者との事で、俺は右手に青いいリボンを手首に巻き、サナは左手に青いリボンを巻いて……学園の校庭の真ん中あたりにきていてる。
そんな俺達を学園の生徒たちが遠巻きにこちらを見ている。
結界のラインがそこのあたりなので、そのあたりに集まってこちらを見ているようだ。
と、そこで目が合ったカタリナがほほ笑み俺に手を振る。
なので手を振り返しながら、
「……カタリナが俺を『血まみれのぼろ雑巾』にするようには見えないんだが」
「人を見かけで判断してはいけません。カタリナ様は猛者です」
「……そうなのか」
俺はそう言ってそちらの方を見る。
周りは学園の女子が比較的多く、先ほどの俺への理想? が壊されてもそこまで大きな影響はなさそうだった。
見かけだけかもしれないが。
ちなみに一緒に来たウェルフは、周りが女の子だらけになっていてどことなく幸せそうだ。
一番いいポジションに彼はいるのかもしれない。
……まずは俺の四天王を倒してから、俺と戦おうではないかと言って、ウェルフとあの位置を代わってもらうのはどうだろうか? といった気の迷いのような言葉が俺の脳裏に走る。
そこで、白線のひかれた場所に俺達はやってきた。
俺とサナの距離は大体、5メートル程度離れている。
そこで向かい合うようにしてから、そこで俺はあることが気になり聞いてみる。
「サナさん、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「さん、は付けなくていいですよ、アイズ様」
「……ではこちらも、様づけはしないでください」
「……アイズ様を呼び捨て……ごくり」
そこでサナが生唾を飲み込む。
しかも目がかっと見開いた気がする。
俺は、今までで一番の恐怖に近い何かを感じた。
そう思っているとサナが、
「それでどうされましたか? 今更怖気づいたというわけではなさそうですが」
「結界が比較的弱めだが大丈夫かと思って聞いてみた」
「ああ、あれですか? ……もっと強化が必要な魔法を私たちが使って戦闘をすると?」
「……サナの力を考えるとそれくらいだが」
「そうですか? これで十分だと思いますが」
そこでサナが好戦的に笑う。
この余裕じみた様子からみるに、俺に勝つつもりであるらしい。
俺からすれば、ほぼ100%で俺は勝利できる自信があるが……。
それとも何か奥の手があるのか。
確かここの勇者は事前調査によると、物理的な力というよりは、補助的な魔法が得意な傾向があった気がする。
何らかのからめ手を俺に使ってくる可能性があるのか?
油断は禁物である。
警戒しなければ、そう俺が思っているとそこで始め、といった合図が聞こえる。
戦闘が始まってしまった。
ならば戦わないといけない、そう俺は思って相手の出方を見るとサナが、
「では、まずは小手調べと行きますか。最強魔王様?」
「……こちらも見極めさせてもらう」
そう返すとサナが横に右手を大きく広げる。
大きな動きがあるとついそちらに意識が向いてしまうが、魔力の気配から俺は即座に防御の壁を張る。
敵の攻撃は、3つ。
炎の小さな親指ほどの球状のものだ。
それに向かって板状の正六角形の氷の壁を小さく作成。
それほど強くないものだが、強かろうがなかろうが、自分の体に魔法攻撃が届く事自体が危険以外の何物でもないと俺は承知している。
これが単純な魔法ならばいいが、もしも危険なものであったなら? という用心による。
だから感じ取った時点で即座に魔法を発動し、属性すらも相反するものに設定を行う。
魔力量からそれほど大きな魔法ではないと予測していたが、その通りであったらしい。
ただ、弱い魔法とはいえ、高速で打ち出されれば、場合によっては防御をする間もなく攻撃を受けてしまうだろう。
こういった手を使う先輩と手合わせをしたが、からめ手に次ぐからめ手はさすがの俺もつらかった記憶がある。
とはいえ、これはまだ序の口、小手調べといった所だろう。
次はどう出てくるのか……俺が警戒しながら様子を見ているとそこで、
「なるほど、今のを防ぎますか。やはりこういった子供だましで倒せるような相手ではなさそうですね」
「そう思ってもらえてうれしいよ」
「ええ。この手で私は、学園内の殺し合いとはいきませんが……バトルロイヤルで、生徒の半分は削りましたからね」
「……なるほど」
そこで会話をしている最中でありながら、先ほどよりもさらに多く、今度は100発ほどこちらに向けて放たれる。
だがその中に紛れ込まされた五つほどの攻撃を俺は見逃さなかった。
それほど強くない解除魔法を防御の魔法に忍ばせて六角形の防御の壁を作り上げ、その五つほどの特殊なものに関してこちらから投げつけるように壁を動かす。
その五つの炎は俺の氷の壁を避けようとするも、避ける前にこちらからの攻撃で消滅する。
防御系の魔法でも使い方によっては攻撃に回せるのだ。
などと俺が思いながら次の攻撃の準備に備える。
そこでサナが、
「防戦一辺倒ですか? そちらから攻撃してきてもよろしいのに」
「まだそちらの出方が分からないからな。無策で飛び込むのは俺の趣味ではないんだ。それに……」
「それに?」
「“魔王クエスト”ですぐに倒されてしまっては、イベントにならないだろう?」
そう俺は返した。
今回の“魔王クエスト”はイベントである。
それ故に、ある程度戦闘をすることで観客を楽しませないといけない。
だから俺が初めに動いて攻撃したなら……』ものの数秒で佐那との戦闘は終わってしまうだろう。
“敵”としての戦闘であれば、サナくらいの相手であれば様子を見ずに倒してしまう。
出会い頭にすぐに倒してしまえば、唐突な戦闘という名の奇襲で倒せてしまうし、からめ手を使われる心配はない。
それを俺はからめ手をよく使う先輩と手合わせをする時に学んだ。
確かに能力は高く、戦闘には苦戦するが……それを使う前に倒すのも手の一つだからだ。
これで俺はあの先輩に手合わせで連勝したから間違いない。
とはいえ、だからと言って油断は禁物だと俺は自分に言い聞かせているとそこでサナが、
「うふ、うふふふふふふふ」
そんな不気味な声を上げ始めた。
どうしたのだろうと俺は思っていると、
「まさかそこまで私は甘く見られていたとは思いませんでした。では……アイズ、私の本気の魔法をお見せしましょう」
そう言ってサナが笑うと同時に、ある魔法が使われたのだった。




