第6話 姉得(デンジャラス)な1日の終了。だが、姉得(苦難)はまだ続く?
「いや〜、隆君から誘ってくれるなんて嬉しいな! お姉ちゃん冥利に尽きるよ。」
「貴方が誘われ待ちをしていたからでしょ…。」
俺達、3人は夕陽が照らす道を歩く。
「まぁ、せっかくだし、良いじゃない。」
不満そうな俺に対して、委員長が情けのフォローを入れてくれた。
「そうだよ。お姉ちゃんと帰れるなんて、日本、いや世界の弟達が唾を飲み込む程なんだから!」
「世間一般の弟は姉ちゃんを鬱陶しいと思いますよ。」
「そんな事無いよ! ねぇ、委員長ちゃん?」
「ど、どうでしょう? 私には弟がいないのでよく…。」
無茶振りを振られて困る委員長。この人の傍若無人な性格と真面目な委員長じゃ、水と油だ。
「答えんでいい。この人は直ぐに調子に乗るタイプだから。」
「むむ…、なんて言い草。そんな事言う子には、もうお休みのキスをしてあげないぞ!」
「えっ! 広瀬君、そんな事を…。」
「そんな訳無いだろ…。」
とんでもない事を言い触らしやがる。
「てへペロ!」
先輩に反省の色は無く、可愛くほくそ笑んでいる。
(どうにかして、この人を言い負かせる事は出来ないだろうか…。)
「それにしても、お姉ちゃんは驚いたよ。」
「何がです?」
「いやね、隆君…私に仲の良い人以外に姉弟になった事を言うなって、口を酸っぱくしてたのに…。」
「まさか…、そんな間柄の女の子がいるなんて…お姉ちゃん、ビックリだぞ!」
「えっ! そうなんですか! 嬉しいな…。」
「委員長とは高校で出会ったけど…、直ぐに意気投合してな…。きっかけは…なんだったけ…?」
「もう、忘れたの? 私が熱を出して…、プリントを届けてくれたじゃない。」
そうだ、あの時、担任教師から一緒の学級委員だからって理不尽を受けたんだっけ。
「そのお返しに、勉強を教えてもらったんだよな。お陰で中間テストは無事に乗り越える事が出来たんだ。」
「そう言えば、隆君の成績はどんな感じなの?」
「普通っすよ。可もなく不可もないくらい。」
「高校になってから難しくなったもんね。」
「そうそう、この前、中間テストが終わったばかりなのに…再来週にはもう期末だろ? 勘弁して欲しいよな。」
「そ、それならさ! また勉強会でもする?」
「そうさなー、そろそろ手をつけ始めるか〜。佐助も誘って…。」
「そ、そうだね。」
委員長の提案に乗ったつもりだったのだが…、何故か微妙な顔をされてしまった。
「ずるーい!! お姉ちゃんも混ぜて〜。」
二人で会話をしていたのが寂しかったのか、抑揚をつけて先輩がカットイン!
「先輩は2年生でしょ! 俺達とやってもしょうがないじゃないですか!」
「やだやだ! やるの〜!」
駄々をこねる様に、手を振り回す先輩。この姿を観たら、学校の皆はどう思うのだろう。
こんな状況にも関わらず、他の人が観ることの出来ない姿を知っている事に、少しばかりの優越感が顔を覗かせた。
「私もお勉強会、したーい。」
「先輩は成績良いんだから、自分の勉強を頑張って下さい。」
「ほら、でも風街先輩に教えてもらえばいいんじゃない? 私も化学のところ、分からないし…。」
あまりに見苦しい姿に同情したのか、情けを掛けたのか、委員長は助け舟を出す。
「そうそう! 私、学年トップだしー、全部分かるしー、勉強しなくても大丈夫だしー。」
好機とみて、ここぞとばかりに畳み掛ける。
「隆君、苦手なところ多いんじゃない? 全部を委員長ちゃんに任せるのは可哀想じゃない?」
「ぐっ!」
確かに、委員長に頼りっぱなしは良くは無い。だが、そもそも自分一人で出来たら、成績はもっと上がっているだろう。
かと言って、このまま先輩の口車に乗るのは釈だ。…どうしたものか…。
「私は、別に大丈夫だよ! 広瀬君がどんなに分からなくても付き合うから!」
「ありがとう! でももう少しオブラートに包んで欲しいな。」
「あっ! ごめん。」
「ぷっ…、言われてやんの。」
「うるさい!!」
「でも、もし赤点の教科があったら、夏休みに補習だよ。」
「確かにそうだ。」
「せっかくの林間学校も行けなくなっちゃうし…。」
「それは不味いな…。」
うちの学校では、夏休みに林間学校が実施される。
受験生である最上学年を除いた1、2年生が参加す る事になり、海が綺麗な他県に2泊3日の校外学習をする行事となる。
「行けないのは洒落にならないな…。」
「ほら〜、行きたいなら大人しくお姉ちゃんを頼りなさい!」
「背に腹は代えられないか…。仕方無い、委員長もそれでいいか?」
「勿論、私は大丈夫だよ。」
「それじゃ先輩、御鞭撻の程を宜しくお願いします。」
俺達は先輩に向かって、頭を下げた。
「宜しい、私が付いたからには百人力、いや千人力だから安心しなさい!」
こんなやり取りをしながら、俺達は家路についたのだ。
「私、こっちだから。」
「大丈夫か、送って行かなくて。」
「うん、もうすぐだから。じゃあ、また明日!」
それだけ言うと、委員長は駆け足で去っていった。
「それじゃ、俺達も帰りますか。」
「うん。」
こうして、俺と先輩のデンジャラスな初登校日は幕を閉じた。
の様に見えたが、まだまだ今日の受難は続いたのだ!!
「ふふ…! これを着れば、きっと隆君も喜んでくれるはず…! ちょっと恥ずかしいけど。」
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