第5話 お姉ちゃん、委員長との蜜月を邪魔する。
「もう、急に引っ張らないでよ!」
「めんごめんご。」
視聴覚室に着くと、委員長はさっきの事についてお説教を始めた。
「またそう言って〜。…そういえば…。」
「どうした? お腹でも空いた?」
「違うわよ。なんていうか…その…。」
急にモジモジしだす委員長。それを観て、紳士である俺はある一つの考えが浮かぶ。
「行ってこいよ。」
「はい?」
「トイレだろ。議事録なら俺が取っておくからさ。」
「はぁ〜、広瀬くん。私だから許すけどね、それセクハラだから。」
「俺だって、委員長以外の女子には言わないよ。」
「き、急になによ! …はぁ〜、なんだか馬鹿らしくなってきたから率直に聞くわ。」
「お、いいぜいいぜ。俺の全てを包み隠さず教えてやるよ。」
「風街先輩と広瀬くんって、どんな関係性?」
おっと、これはストレートに来ましたね。隆君こまっちゅうなー。
適当に誤魔化す事は出来るけど…、
じー……
(真剣な委員長に嘘をつくのは忍びない…。仕方無いか…。)
「実はな…。」
「えっー!!!」
「委員長、声が大きい!」
周りの人の眼が、一斉にこちらを向いた。
「あっ、ごめんなさい。…それって、本当の事なの?」
周囲に聞こえない様に小声で呟く。
「マジマジマジック。俺、嘘つかない、絶対。」
「信用無いけどな…。まぁ、多分、恐らく本当でしょう。信じられないけど…。」
「ひどい…。ぴえん。」
「それにしても、そんな事ってあるもんなんだね。」
「俺も最初はパニックだよ。 思春期男子の気持ちを考えて欲しいよな。」
「やだ、破廉恥よ、広瀬君。」
「いやいや、俺は実に健全な気持ちで向き合ってるとも…。」
「はいはい、それでさっき私にあんな態度を取ったのね…、納得。」
委員長は答え合わせを得て、頷いている。
「まさか、あの完璧超人の風街先輩が弟好きなんてね。」
「むしろ、そのレベルを遥かに超えている気がするが…。」
「そ、それで…、広瀬君はどうなの? そこんところ。」
「どうって? 何が?」
「とぼけないでよ。そんなのあれよ…。その…。」
委員長はどんどん声が小さくなっていく。少し顔も赤みがかってきた。
「抽象的過ぎて分からん。ちゃんと言ってくれ。」
「だから…先輩の事をどう思っているのかよ。」
「どうって、そりゃ……。」
俺の気持ちは決まっているが…、姉弟に、家族になったのだ。やすやすとは口に出来ない…とおもう。
「その辺はお姉ちゃんも気になるな〜。」
「うあっ!! 先輩!?」
俺が躊躇っているのに被せる様に、後ろから風街先輩が出現してきた。
「そんな反応されるとお姉ちゃん、傷付いちゃう。しくしく。」
わざとらしく手を目元にやり、泣き真似をする先輩。そもそもの話、この人は普通に声を掛けられないのだろうか。
「はぁ〜、先輩、いつからそこに?」
「いや〜ついさっきだよ。 隆君が何やら怪しい話をしてたのを聴いてね。」
「怪しいって…。」
「委員長ちゃんに聞かれてたでしょ? どうなの? お姉ちゃんの事、好き? それとも愛してる?」
「それはどっちも同じでしょ。」
「あ、あの先輩!」
委員長は緊張しているのか、上擦った声を挙げたた。
「どうしたの?」
先輩が優しく返す。
「先輩は広瀬君の事をどう思ってるんですか?」
おいおい! 何を尋ねちゃってるの! そんなの俺もめっちゃ気になるけど…!
「そうね…、それは勿論…。」
ゴクリ!
「手の掛かる可愛い弟かな!」
そうですよね…。分かってたけど…、男に観られて無いんだな…、俺。
「でも……、」
先輩は言い切らずに言葉を続ける。
「こう見えても、意外とカッコイイところもあるんだな、とも思ってるわ。」
(おー!! マジか! 眼中に無いと感じてたけど…、めっちゃ嬉しい!!)
意外なプラス査定に俺は喜びを隠し切れず、口元がほころんでいた。
「そうですか…。分かりました。はい。」
委員長は何かを納得したのか、後にこう、言葉を紡いだ。
「私は負けませんから。」
委員長のさっきの一幕よりも強く、しっかりと握られていた。その仕草には一切の迷いが感じられない程に…。
「ふふ、これは手強いわね。」
先輩も不敵に笑っているが、全く俺がついて行けていない!
(二人だけで分かり合わないでくれ! 俺も混ぜてくれー!)
心の声が届くはずも無く、無情にも置いていかる可哀想な俺であったのだ。
「うーし、早速始めるぞ。」
ガラガラとドアが開いた先から、タイミングが良いのか、悪いのか、恰幅の良い教師が入ってくる。
「それじゃ、私は席に戻るわね。」
それだけ言い残すと、先輩はそそくさと指定の席に引っ込んでいった。
「なぁ…、先輩と何の話をしてたの?」
気になるので、委員長に尋ねる。
「もう…、デリカシーが無いんだから…。女の子の会話を聞くなんて野暮よ。」
そう言われ、知らんぷりされてしまった。
(逆に気になるじゃんかー!)
「…で、来月にある林間学校の説明は終わりだな。皆、遅くまでありがとう。そして、早く帰れよ。」
教師はそれだけ言うと、直ぐに教室から出ていった。静まり返えっていた空間に各々の声が入る。
「よし、帰るか! 委員長、せっかくだから一緒にどう?」
「うん、是非一緒に! …それと…。」
チラりと別の方向を観る。
「先輩も誘えば?」
斜め後ろの席かろ、何かを訴える先輩の眼光が鋭く俺に突き刺さっていた。
「仕方が無いな…。」
俺は席を立ち、先輩の元へと向かった。
「先輩…、俺達もう帰りますけど…一緒にどうですか?」
俺の問いに教室中がざわめいく。
「あいつ…! 風街さんとどういう関係だ!!」
そんな声を気にしないかの様に先輩は、嬉しそうにはしゃいで喜んだ。
「私も…! 行く行く!! 」
あまりに嬉しかったのか、先輩は勢いあまって抱き着いてくる。
「ちょっと!! 何してるんですか!?」
急いで突き放すも…時すでに遅し。最早、教室はパニックだ。
「あ〜、何者なんだあいつは〜。」
男子達の怨嗟の声が響く。
「直ぐに準備するから待ってて…!!」
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本日最期になります第6話は18時30分に更新予定です。お楽しみに!




