第3話 お姉ちゃんは弟が好き過ぎる!!
「もう、いきなりあんな事するなんて…。」
失言しそうとはいえ…、先輩に自分から触れてしまった…。罪悪感が凄い…。
「そんなにお姉ちゃんが他の男の子と喋っているのが嫌だったの?」
半分当たっているが、それを言っても、恐らく別
の意味に捉えられるだけな気がする。
「違います!先輩、昨日の約束の事をもう忘れてますよね?」
「約束?」
やっぱりだ…。
「そうですよ!言ったじゃないですか。俺達が兄妹になった事は親しい人以外には喋らないって!」
「あ〜!そう言えばしたね!ごめんごめん、お姉ちゃんうっかり!」
たはは、と笑う姿を観ると、恐らく話を聞いていなかったな…。
昨日の事、2人で暮らす様になって最初の日だ。
俺は悶々とする心で先輩を迎え入れたが、当然、正気ではいられるはずがない。
考えてもみてくれよ。自分の好きな憧れの先輩が一つ屋根の下で暮らしているんだぜ?思春期には耐えられないだろう?
とはいえ、それで手を出せば…。どうなるかは火を見るより明らかだ。
先輩からは奇異の目で観られ、家には居場所が無く、噂は広まり、俺は死を迎える事になる。
「お姉ちゃんに手を出す獣よ〜。」
なんて先輩に言われたらと思うと、背筋が寒くなった………のは凄く昔に感じる。
「お姉ちゃん、嬉し過ぎて忘れていたよ。」
(当の本人がコレだもんな…。)
寧ろこのままいくと、俺が襲われる危険性がある気がする。
(…流石に無いか?、いや、どうだろ…。)
「忘れている次いでに私からも…。」
「……なんですか?」
「先輩じゃないでしょ?お姉ちゃん。」
神妙な表情をするから、何かと思えば…。
「はぁ〜、またそれですか…。」
「またか、じゃない!大事な事なの!」
「良いですか、万が一、俺が先輩の事をおね…、姉さんと呼び事にしましょう。」
「うんうん。」
「それを聞いた周囲はどう思うんでしょうか?」
「あの2人、なんて仲の良い兄妹だ!!」
「それ、家族なのバレてますよね?」
「確かに!!またお姉ちゃん、一本取られたよ。」
この人、こんなにポンコツだったけ? ああ、俺の憧れの先輩像が音を立てて崩れ落ちていく。
「というわけで、これからも先輩呼びで行かせてもらいます。では、この話はここで…。」
「ちょっと待っったー!!」
話を切り上げ様とする俺に渾身の異議ありが炸裂する。
「まだ、何か?」
「先輩呼びは分かったよ。でも、それって、つまり…。」
嫌なオーラが、気配が、全身を絶え間なく駆け巡るのを感じる…。まずい!
「2人きりの時になら…呼んでくれるって事?」
ぐあああ、で、出た? 必殺の上目遣い! こ、このままだと俺の理性が! こうなったら!
「ま、また後日という事で〜。」
「あ、ちょっと〜、お姉ちゃんを置いてかないで〜!?」
俺は逃げた。それはもう全速力で学校へと。
「はぁ〜疲れた。朝から走る事になるなんて…。」
教室に着いた俺は、開口一番愚痴を溢す。
「よっす、隆!どうした朝から疲れた顔して…。」
声を掛けたのは友人である佐渡佐助。
背が高く、運動神経抜群、明るくてノリも良い、まさに典型的な陽キャ、人気者だ。
全てが普通の俺とは何もかもが正反対の様にみえるが、席が近い事がきっかけで喋り始め、今では一番仲の良い友人と言えるまでになった。
「ああ、お早う。それが聞いてくれよ…。事の始まりは一昨日に遡って…。」
「その話、長くなる?」
「成る程な〜。」
俺は一昨日から始まった、恐ろしい日常を事細かに語った。
うんうんと腕を組み、頷く佐助。そして、一言。
「このクソラブコメ主人公がー!!」
まさかの一喝。クラス中がざわめく。
「朝っぱらからなんて声を出してんだよ…。それにクソラブコメ? 俺がか?」
疑問を口にすると、佐助はさらに追い打ちをかける。
「当たり前だろ?自分で言ってて気づかないもんかね。」
やれやれとした口調で呆れた様に言った。
「お前が羨ましいよ。俺がお前の立場なら我慢出来ないね、きっと。」
佐助は好き勝手に言っているが、全然分かっていない! 先輩の恐ろしさを体験すれば意見は変わるだろう。
「そりゃ、最初は俺もラッキー!こんな神イベントありかよ! と喜んでいたが…、実情は遥かにシビアだ。」
「かー!! あの風街先輩を姉にした奴の言う事は一味違いますなー。説得力がありますわ。」
「僻むな僻むな。いいか、憧れと言ってもだな…、他人だった異性が家族になるのは…。」
「貴方達、何の話をしているの?」
俺の言葉を遮る様に一人の女の子が入ってくる。
「ああ、委員長。聞いてくれよ、詳しくは話せないが…。」
この人は天宮五十鈴。我が一年二組の委員長だ。
見た目は黒髪ロングのいかにもな、お清楚系。優等生の真面目ちゃんである。
「委員長って…、貴方もでしょ? まさか押し付けられたからって、今日の集会をサボるつもりじゃないでしょうね?」
「そんな事はないよ。押し付けられたのはシャクだが、それで良い出会いにも恵まれたからな。」
「良い出会い? 取り敢えず、放課後に視聴覚室だからね。」
「了解〜。」
それだけ言うと、委員長は自分の席に戻って行った。
「委員長、そんな事言わなくても分かるのに…。」
「隆の事、好きなんじゃないの」
「お前、恋愛脳過ぎない?」
「だって、お前サボった事ないやろ? なのにわざわざ…、つまりは…。」
「はいはい。」
俺は佐助の寝言を受け流しながら、考えていた。
委員会、つまりは先輩と一緒ということに…。
楽しみの反面、何か起こる予感が、身震いとなって、俺を襲った。
「むむむ〜、お姉ちゃん以外の女子と楽しそうにしてるなんて〜。」
初日の3話一挙投稿にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
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