第2話 お姉ちゃんと一緒の登校! 弟なら当然、嬉しいよね♪
「さて、そろそろ学校に行くか…。」
風街先輩が追って来ていないのを見計らい、裏の出口から公園を後にする。
その瞬間、背後から甘い声で呼び止められた。
「た〜か〜し、君♪」
振り向くと、風街先輩がそこにはいた。
「うわぁぁ〜!!」
俺は大声を張り上げた。こんなに声を出したのはお化け屋敷で友達に驚かされた以来かもしれない。
「ちょっ〜と、幾らなんでも叫び過ぎじゃないかな。ご近所さんの迷惑になるぞ!」
「先輩が気配を消してくるからですよ!」
「ふふふ、驚いたでしょ。まさか、ここまで効果があるとは思わなかったけど。」
「誰だっていきなりだったら、こうなるでしょ。」
「そうかな〜。ひょっとして隆くん、怖がりかな?」
先輩は覗き込む様に、俺の顔を窺う。その仕草は俺の心を許すのには充分な効果となった。
(このままでは、まずい!)
「と、とにかく、俺は学校に行きますよ。」
危機を察知して、足早にこの場から去ろうと試みるが……当然の如く、阻止される。
「ちょっと待って。せっかくだからお姉ちゃんと行こう。」
「えーと…、聴き間違いですか?今、何て?」
「お姉ちゃんと一緒に学校に行こう。」
(うーん、聴き間違いじゃ無かったかー。)
「お姉ちゃんと登校するのは、弟の責務よ。」
「意味の分からない事を言わないで下さい!ずっと、その調子じゃないですか!」
そうだ、思えばこの人の奇行は今に始まった事では無い。
家族となった、一昨日からずっとだ。
「意味が分からないと言われるのが、意味が分からないわ。なんでそんなに邪険にするの。」
先輩は涙を眼に浮かべながら、訴えてくる。もし、第三者がこの場面を観たら、別れ話をしている様にみえるのだろうか…。
「紹介された時も、直ぐに逃げちゃうし…、家でも全然、会話してくれないし…。」
そりゃ、弟にしたいとか言われたらね。憧れの人と一緒に暮らす事になって、その人が奇人で、俺の頭はパニックだよ。
「もしかして…、お姉ちゃんの事、嫌いになっちゃった。」
うるうるとした瞳で、上目遣い。先輩のこれに耐えられる男が果たして存在するのだろうか…。いや、居ない!!
「そんな事ないですよ。僕はただ、まだ心の整理がつかないだけです。」
「じゃあ、お姉ちゃんと一緒に行ってくれる?」
「後半の部分聞いてました!?」
「聴いてたよ。お姉ちゃんの事好き過ぎて、どうしたらいいか分からないんだよね?」
う〜ん、部分的にはあってるげど…、テストなら△といったところだな〜。
「はぁ〜、もうそれでいいですよ…。」
「素直じゃないんだから!そこも可愛いけどね!」
可愛いか…。どうせならカッコイイって思われたいけど…。
「もう…、分かりましたよ。一緒に行けばいいんですね。」
「わ〜い!」
先輩は万歳をして、喜びを表す。
(くそっ!可愛いなもう!)
「あと必要以上にベタベタしない事。これを守ってくれるなら…。」
「ほら! 速く行かないと遅刻しちゃうよ!」
先輩は俺の手を引きながら、公園を駆け抜けて行く。
「先輩!!手を離して!ちょっと、話聞いて下さーい!?」
俺の声は公園に木霊したのだった。
ザワザワ…。
「ねぇ、あれ、風街先輩じゃない?」
「本当だ。今日も綺麗だわ〜。」
「ていうか、隣の男だれだよ!もしかして…。」
学校に近づくに連れて、周囲からは様々な感情が籠もった視線が俺へと注がれた。
「なんか周りが忙しない気がするな〜。まぁ、いつもの事か。」
「流石は先輩。有名人ですね〜、尊敬します。」
棒読みの台詞を吐きながら、俺は生きた心地がしなかった。
学外にもファンがいる程なのに、浮いた噂一つも挙がらない人気者。
女神と名高い彼女がよりにも寄って、こんな地味な男と一緒に堂々凱旋とは、皆の気持ちも分からなくは無い。
「彼氏…とか?」
「ないない。そんな訳無いだろ。」
「そうだよな。全然釣り合って無いし…。」
気持ちは分からんでも無いが…、幾らなんでも言い過ぎだと思う。
「あんな奴が先輩の隣にいる訳…。」
「ちょっといいかしら?」
その時、先輩はこそこそ話す男子達に立ち塞がった。
「か、風街先輩!? な、なんでしょうか?」
先輩に声を掛けられて、男子達は素っ頓狂な反応を見せる。
「さっきから貴方達ね。こそこそとうちの隆君の事を好き勝手に言っていたのは。」
先輩の声色には明らかなる怒りが込められている。
「え、うちの? えーと、それはどうゆう?」
男子達は頭に?を浮かべて戸惑いを隠せない。
「あまり隆君の事を悪く言うの辞めてくれるかな? 流石の私も堪忍袋の尾が切れそうだよ。」
戸惑いも何のその、先輩の怒りは留まる事を知らない。
「ご、ごめんなさい!好き勝手に言ってしまって!」
男子達は迫力に負けて、謝罪を述べていた。優しい先輩に怒られるなんて思いもしなかったのだろう。
「と、ところで…、先輩にとってその人は…。」
やはり気になるのか、踏み込んで聞く。
「…? 当然、私の大事なおと…。」
「わぁ〜、お騒がせしました!!」
俺は先輩の口を塞ぎ、急いでその場から離れた。隙を与えたら、何を言うか分からん!
「大事な…って、やっぱり彼氏なのか!!」
男達の慟哭が、空に響いていた。
第2話をお読みいただきありがとうございました!
本日のラスト、第3話は【18:30】に投稿します。
是非、お楽しみに!




