第18話 お姉ちゃんの嫉妬は怖いぞ!
「二人は先に隆君の部屋に行っててもらえるかな? 私が案内するから。」
「ちょっと、先輩?」
「隆君には用があるのでリビングで待っていなさい!」
「あっ、はい…。」
有無を言わせぬ剣幕で、先輩は二人を連れて階段を登って行った。
ポツンと一人残された俺…。身体に淋しさが溢れかえる。
「めちゃくちゃ…怒っている。」
独り言も誰もいないリビングへと吸い込まれていった。
「この部屋で待っていてくれる? 私はちょっと隆君に話があるから…。」
「あの…、さっきの事なら私は気にしてませんから…、お手柔らかにどうぞ…。」
「それは隆君次第かな…。」
それだけ言い残すと、直ぐに部屋を出ていった。
赤井は渚が階段を降りていく音を確認すると…、
「よし、宝探しをしよう!」
「えっ! 急にどうしたの!」
私は驚いた声を上げる。
「せっかく同級生男子の部屋にお邪魔したんだし…、こういう機会はそうあるもんじゃないし。」
「勝手に不味いよ!」
「大丈夫よ。あんただって気になるでしょ?」
「な、なにが?」
「決まってるでしょ? エロ本よ。」
さも当然の様にまゆは言う。
「男の子は皆、エロの一冊や二冊を持っているってネットで観たわ。」
「信憑性無いよ〜。」
「そんな事言って…知りたくないの? 広瀬君の好み。」
「知りたくないわけじゃないけど…、でも…。」
「あのお姉さんがいるじゃ、あんたは砂利みたいなものなんだから、出来る事はしないと…。」
まゆは喋りながら、ベッドの下に手を差し伸ばしていた。
体勢が体勢なもので、制服のスカートから大胆に下着が露出している。
「まゆ、下着見えてる。気を付けなさい。」
「おっと失礼。男の子がいないとついね。」
折っていたスカートを伸ばし、左手で押さえながら、探す手を止めない。
私は深呼吸をすると、周りを見渡す。広瀬君の部屋…。彼の物が沢山ある。当たり前なんだけど…。
使い古された机、生活感溢れるベッド、受験用の少しくたびれた参考書、散らかっているゲーム類。それらが広瀬君の日常を語ってくれている様だ。
「あっ…、これ…。」
私は机の上の教科書を手に取った。生物の教科書だ。前から数頁、右下。大きいシミがある。これは私が零した珈琲のものだ。
「ふふ…なんか変なの…。」
「ノスタルジックに浸っているところ悪いけど…。」
「わっ!!」
当然、後ろからまゆが声を掛ける。心臓がバクバク言っていた。
「驚かせないでよ…。それで見つかったの?」
「それがさっぱり。何処に隠したんだか…。」
(隠してるのは確定事項なんだ…。)
「もう、やめよ。仮にあったとしても良くないよ。」
「まぁ…確かに、巨乳ものだったら可哀想だしね。」
「うっ…!」
まゆは私の胸をまじまじと観ながら、吐き捨てる様に呟いた。
(私だって…、それなりにあるもん…! 先輩にはとても敵わないけど…。)
自らの胸元を擦り、強大な戦力差に溜息が出そう…。
「それにしても…、遅いね、二人共。」
「確かに、かれこれ十分以上かかっているかも…、何の話だろ?」
「意外とあれじゃない? 連れてきたのが女子だけだから、それで怒られてるとか?」
「まさか! 先輩に限って、そんな事は無いでしょう。」
「いやいや、ああ見えて、嫉妬深いかもよ…。」
「だったら、親近感湧くけどね。」
リビングにて――――
「隆君、お姉ちゃんに説明しなさい!!」
俺は今、先輩に詰められていた。
「何の事ですか…! 早く行かないと…二人共待ちくたびれますよ。」
大きめの冷蔵庫を背に、女子高生に責められる図を経験した者は、そう多くはないだろう。
「はぐらかさない!! 勉強会って言ってたじゃない!」
「はい…? だから、皆を家に招待をして…。」
「連れてきたのが女の子ばかりなのは、何の冗談かな〜。」
先輩が顔を近づけてくる。相変わらずの顔面の強さに思わず、目が眩みそうだ。
「期末テスト対策の勉強会と聞いていましたが…、一体、何のお勉強をするつもりかな?」
「何を勘違いしているか分かりませんが、誤解です! 佐助の奴が野暮用で来られなくなっただけで…決して、先輩の考えている様な事は…!」
実際、その通りなのだが…、なんか言い訳してるみたいに感じるのは気のせいか?
「へ〜、言い訳するんだ…。お姉ちゃんに。」
「言い訳じゃないですよ…。本当なんですから。」
「お姉ちゃん…、ショックだな〜。この前、あんなに格好良く告白してくれたのに〜。」
「不覚にもお姉ちゃん、キュンとしたのにな〜。もう、飽きちゃったのか〜。」
チラチラとコチラを観る仕草に、先輩の意図を感じ取る。
(…手の掛かる人だな…。そこも可愛いけど…。)
「はいはい…、今でも変わらず好きですよ。」
「投げやり〜、もっと心を込めて!!」
再チャレンジ。
「俺は渚先輩の事を愛してますよ!」
「むふ〜、よろしい!! お姉ちゃんも愛してるぞ〜!!」
先輩は大変満足した顔を浮かべる。どうやら、俺の疑いも晴れた様だ。
(「お姉ちゃん」ってところは少し気になるが…、嫌われてないだけ良しとしよう。)
弟としてと、男として、両立する事の難しさを感じた一幕な気がした。
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