第15話 お勉強は嫌だけど、女子がいるなら話は別だよね!
期末テスト―――――それは学生では誰でも経験した事のある嫌な記憶。
およそ10以上のある科目を数日に掛けてテストするという狂気の沙汰。
この畏れに身を捧げて、一喜一憂するのが、学生の常であり、定めとなる。
「委員長、頼む! 後生だから!」
当然、この広瀬隆も例外では無く…、委員長に頭を下げている訳だが…。
「どうしよっかな〜、私の事をあんなに馬鹿にしたからな〜。」
先の一件を引きずっているのか、委員長は俺の頼みに耳を貸してはくれない。
「私に頼らなくても…、美人で巨乳で胸が大きくて、乳がデカいお姉さんに頼れば良くない?」
「どんだけ大きいのよ。もはやおっぱいの化身をじゃん。」
これは相当不貞腐れてるな。自分の失言が原因とはいえばそれまでだが…。今の先輩が素直に受けてくれるだろうか。
ちょっと前なら喜んで受けてくれたとは思うが、今は時期が悪い。俺を意識し過ぎている。
それは嬉しい限りなのだが…、この状況では逆効果。まともに授業になるか疑わしい。
(個人的にはまた女教師コスプレを拝謁したいけど…。)
「その顔…、何かエッチな事を考えてたでしょ?」
その考えが顔に出ていたのか、委員長は怪訝な眼を俺に向けている。
「そもそも、勉強会の約束はこの前にしたじゃないか。それを反故にするというのか。」
「それはそれ。私個人が教える文言は含まれていないわ。」
「揚げ足を取りおって〜。」
「誠意が足りないわよ、誠意が。」
何か言いたそうな委員長。つまりはそれを当てろということか…。乙女心は難しい。
「駅前のクレープ屋、夏の期間限定が出てだろ? それでどうだ?」
「期間限定クレープ…。ゴクリ…。」
委員長は甘い物に目が無い。現に、その言葉を聴き、顔色が変わった。
「ええな〜。隆、俺にも奢ってや。」
「今の話聞いてたか? 委員長には勉強を教えてもらう見返りを交渉してるの。」
「ケチ〜。」
ブーブー言っている佐助は放って置こう。
「まぁ…妥当なところじゃないかしら? 広瀬君にしては及第点といった感じかな。」
「よし! 交渉成立。ところで何点満点中?」
「100点満点中70点といったところかな。」
「意外と取れてる! 委員長、俺に甘いよな。」
(本当は放課後とか休日に誘って欲しかったけど…、それは望み薄だよね。)
「それでどうするの? 今日から始める?」
「それなんだけど…それは後日でいいかな?」
「もう…期末テストはもう来週に迫っているのよ。随分、のんびり屋さんね。」
「それがさ…。」
「今日、両親が居ないんだよね。だから…先輩を誘ってさ、家でやらない?」
「……は?」
委員長は呆気に取られていた。
「ちょっとまって! つまりは今日は風街先輩と二人きりの予定だったの?」
「マジか! 羨ましい〜。」
佐助は血涙を流す。
「佐渡君は黙ってて。」
「はい…。」
「二人は何か予定とかあった? あるんなら別の日に…。」
「あるわけないじゃない! 行くわ、必ず!」
「俺も特に無いな。」
「じゃあ、決まりだな。放課後に家に集合だ。」
「何の話〜?」
あまりに騒ぎ過ぎたせいか、赤井が会話に混ざってきた。
「まゆ! 遅刻ギリギリよ。」
「え〜、間に合ったんたからいいじゃん〜。はぁ〜ねむ。」
赤井は眼を擦りながら、委員長の小言をいなす。
「それで〜、何の話をしてたの?」
「ああ、家で勉強会をやらないかって誘ってたんだ。」
俺は赤井に事の経緯を説明した。
「え〜、いいないいな。私も勉強会行きたい〜。」
「俺は別に構わないけど…赤井って確か成績優秀じゃなかった。」
「中間学年1位でござんす。ぶい」
「授業聞いてるだけなのに…。」
委員長は悔しそうに言う。そういえば…委員長は学年2位だったような…。
「なんか分かるんだよね〜。」
「私なんて…予習復習をしっかりしてるのに…!」
歯軋りを立ててる。よっぽど悔しいんだな。
「どっちも凄いよ。俺達と比べればな…。」
「二人の成績は?」
赤井が痛いところを突いてくる。
「平凡。丁度、真ん中くらいだった。」
「俺は佐助より順位が上だったけどな…。」
「変わらんやろ!!」
「いや、大事な事だ。合計点数だって、俺の方が4点ばかし多い。一緒にしてもらっては困る。」
「全然変わらんやん!!」
醜く反論する佐助。
「ははは…、でも確か、広瀬君って…。」
委員長は言い難そうに言葉を詰まらせた。
「赤点…。」
ボソっと、佐助が呟く。
「…何だって?」
「いや〜、赤点の奴が偉そうだなって。」
グサッ!!
「え〜、広瀬君、赤点なの〜。それはまずいね〜。」
赤井は無遠慮に発言した。そして、俺にクリーンヒット!
「広瀬君は数学がちょっと苦手なんだよね…!」
委員長がフォローするが、それが余計に傷付く。
「流石に赤点は無いよな〜。」
「ほ、ほら…! だったら、期末は頑張ろうよ! まゆもいるなら安心だよね!」
「ありがとう委員長。今度こそ、赤点回避する…。」
俺はポケットから携帯を取り出した。
「じゃあ、先輩に連絡するから。」
「うん。そうだ…五十鈴。」
「何よ?」
「これを気に距離縮めないとね。私も協力するから。」
「もう…! 勉強会だって言ってるでしょ〜!」




