第11話 お姉ちゃんはもっと弟君に愛され愛したい!
「は〜、どうしましょう…。」
2年生の教室で風街渚は黄昏ていた。
「どうしたのよ? これ見よがしに溜息なんてついちゃって…、あんたらしくない。」
一緒に昼食をとっている彼女は、渚の親友である櫻木香織。
渚の友人で唯一、渚のヤバさを理解している人間で隆との関係も知っている。
「クラスの男子が騒ぎ出すわよ…。女神様がどうたら〜…みたいに。」
「おい…!女神様が困ってらっしゃるぞ…!kmmは何をしているんだ…。」
「ね!」
彼女の言った通り、渚の溜息一つでクラスの男子がざわめきを立てる。
「聞いてよ〜、香織。」
「うわ…、面倒くさそう…。一応、聞くけど…。」
「私、隆君に嫌われてるのかもしれない…。」
「はい?」
「最近、素っ気ないの…。私が何をしても冷たくあしらうし…。」
「どうせ、あんたがろくでもない事して、呆れられたんじゃないの?」
「そんな訳無い。私はいつも隆君の事を考えて…。」
「例えば、どんな?」
「コスプレをして勉強を教えてあげたり…。」
「ちょっと待って…! 一行目から意味が分からないんだけど…。」
香織は頭を押さえる。
「渚はそれのどこが彼の為だと?」
「えっ? 弟って…お姉ちゃんのコスプレ姿に喜ぶものでしょ。」
「あんたに聞いた私が馬鹿だったわ…。彼は眠れない夜を過ごしたでしょうね。」
香織はさらに頭を押さえた。
「酷い…! 私だって、恥ずかしいけど頑張ったのに…。」
「酷いのはお前の頭じゃ。」
「親友でも言っていい事と悪い事が…。」
「親友だから言ってあげてんの…!」
「うう…。だって…!」
渚は泣きそうな顔をしながら、香織の説教を聞く。はたから観たらイジメと思われるかもしれないが当然、彼女を想っての行動である。
「は〜、私もガミガミ言いたくないけどさぁ。距離感とか考えたら?」
「距離感?」
渚はキョトンとしている。距離感くらいちゃんとしているが…?と言った具合だ。
「そう、適切な距離感。」
ツッコミを入れず、香織は話を続けた。
「あんた達の場合、珍しいケースだから適切って言い方かは分からないけど…。」
「少なくとも、思春期の男子に姉がとる行動とは思えないわね。」
「そ、そんな…。」
これには渚もショックであった。
「もし私があんたの弟だったとしたら…。」
「したら……?」
渚は真剣な眼差しで香織に向き合う。
「軽く性癖はぶっ壊れるわね。」
「えーっ!!」
「100歩譲っても、ねじ曲がるね。」
「100譲ったのに!!」
「それくらいの破壊力があるのよ。」
「破壊力…?」
香織の眉がピクリと動く。本人はどうも分かっていない様だ。
「あんたのその面と身体に決まってるでしょ。」
怒りを内に秘め、香織は努めて静かに言う。
「ちょっと! それセクハラよ。」
「何がセクハラじゃい!! そんなもん引っさげて義弟に絡んでいる奴が!!」
ついに香織の怒りが爆発!! 女性として友として渚の持つ物は嫉妬の対称なのだ。
「学校の男子もまさかあんたがこんな頭のおかしい変態だって知ったら、どう思うんだろうね。」
「失敬な! 私の愛はそんな不純な物じゃないし、ましてや変態でもありません。」
「へぇ〜、でも、その弟君の事は前から目を付けていたんでしょ。」
「ぐっ!!」
痛いところを突かれた渚は一瞬、固まる。
「ま、まぁ…そうだけど…。別に当時は実害を与えていた訳じゃないし…。」
目線を逸らしながら、ボソボソと呟く。
「だだ、妄想してただけだし…。」
「おい、こっちを向け。」
「こんな子が弟だったら、良いな〜って、みんなやってるでしょ?」
「普通の奴は、赤の他人を弟に見立てて、妄想お姉ちゃんごっこはしねぇよ。」
「えっ!! じゃあ、香織もした事ないの?」
「した事ないし、する常識知らずを世では変態って言うんだよ。」
「知らなかった…。世間がそんな常識の押しつけ合いになってるなんて!」
「お前が自由過ぎるんだよ。」
「そんな…、まだ私のお姉ちゃん計画の30%しか進んでないのに…!!」
「まだ、30%なのか…。流石の私もドン引きだわ…。今日で3回目だけど…。」
香織は買っていたパックジュースを飲み干しながら、こう言った。
「あんたの弟好きは分かったけど…それって弟君の事をどう思ってるの?」
「どうゆう?」
「だから、恋愛対象とか…。出来れば付き合いたいとか…あるじゃない。」
「言われれば…、考えた事無かったわね。」
「無いのかい…! 今更だけど、渚はスーパーモテるんだからさ…。今日だって、男子に告白されたでしょ?」
「うん、速攻断わったけど…。」
「でも、相手ってあの三年生のイケメン先輩でしょ? 勿体無い…、取り敢えず、付き合えばいいのに…。」
「いや、そんなあやふやな動機で付き合うのは相手に失礼よ、香織。」
「確かに…。あんたからまともな事言われると温度差で風邪ひきそうになるわ。」
「それに私、隆君以外の男性に一mmも興味が沸かないから。」
「それは失礼じゃないんかい! …その興味が恋愛なんじゃないのかって、言ってんの?」
「この気持ちが恋愛…?」
「化け物に愛を教えた気分だわ…。」
一方、その頃……。
「ヘックション!!」
「やだ、汚いよ…、広瀬君。」
「悪い悪い…。噂でもしてるんだろ? モテる男は辛いぜ…。」
渦中の男は呑気であった。
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この後、【18:30】に続きの12話を投稿するので、是非、そちらもよろしければどうぞ!




