第10話 やっぱりお姉ちゃんは予測不能だぜ(泣)
「おお…! これは…!!」
俺の不安を吹き飛ばす様に、1段目の弁当箱から飛び出してきたのは、彩り豊かなおかず達。
ブロッコリーやトマト等の野菜類。小さいハンバーグに卵焼き。まさに目で楽しむとはこの事。更には栄養バランスも完璧だろう。
「スゲ〜、めっちゃ美味そうじゃん。」
「栄養バランスも良さそう…。」
各々から感嘆の声が上がる。それに比例する様に俺の口角も上がっていった。
「ドヤドヤ…。どうだ、驚いただろ…!!」
「まさかここまでとはね。広瀬君のお姉さんって何者なの?」
赤井は何の気無しに尋ねてきた。他の2人と違い、コイツは俺と先輩の関係を知らない。
なんやかんや口の硬い2人と違い、コイツの口にチャックはついていない。絶対に知られる訳にはいかんのだ。
「そ、そんな大層な人じゃないよ。栄養士の専門学校に通っているだけだから。」
「ウッソだー!! そんなに自慢して? 広瀬君って実はシスコンだったの?」
確かに…、事情を知らない人からすれば、姉の事をドヤ顔で自慢するシスコン野郎?に違いはない。
「それにしても…、今まで何回かは五十鈴と一緒にお昼したけど…、そんなに凄いお弁当だったけ?」
ギクッ!
「ねぇ…、五十鈴?」
「ドウダッタカナ、ヨクオボエテナイナ。」
委員長はロボットになっていた。
「もう五十鈴〜、何、その反応! あんた心配してたじゃない…!」
「広瀬君もキョドって、何も美人な先輩が急にお姉さんになった…なんてラブコメ展開な訳でもなし。」
ギクギクッ…!! 鋭いってか、本当は知ってるんじゃないか?
「まぁ、良いじゃないか…そんな事。」
「それもそうね。…しかし、大変ね〜、五十鈴。」
「何が?」
「だって、こんなお姉さんがいるならね〜、頑張んないと…ねぇ。」
ニヤニヤした顔で委員長を見つめる。直後に委員長がハっとした表情を見せると、みるみる顔を紅くした。
「別に…私には関係無いし…。」
手をモジモジさせながら、こっちを観る委員長。ふと目が合うと、すぐさま逸らされてしまう。
「え〜、関係無いの〜。それなら、私が言っちゃおっかな〜。」
それを煽る様に赤井は続けた。
「だ、駄目! まゆは黙ってて! もう〜!!」
ポカポカと赤井を叩く委員長。その仕草を観ていると男子から人気があるのが頷ける。
「なぁなぁ…。2段目の中身も見せてくれよ。」
「ああ…、そうだな。皆の衆、刮目せよ。」
「ほら、五十鈴。2段目を開けるって…。」
「もう…。私は許してないからね。」
皆のボルテージも上がっているようだ。
「それじゃ、2段目オープン!!」
その時、俺は漸く思い出したのだ。先輩の凄さを、いかに常識外れなのかを…。
「どれどれ……、うっっ!」
瞬間、手が止まった。それ程の衝撃。角度からしてまだ俺にしか見えていない。
そこには隅まで行き届いた白米。その中心には桜でんぶで色付けされたデカイハートが描かれていた。
海苔で器用に隆君大好き!!と書いてもある。
一瞬で顔が青ざめた。血の気が引くとはまさにこの事なのだと実感出来た。
「どうしたんだよ、隆? 早く見せてくれ。」
「ああ…。」
急かす佐助。だが、このままコレを公開するのはどんな強心臓を持っているスポーツ選手でも不可能だろう。
どうする? 佐助には見えていない…。他のメンバーも丁度良く弁当箱が死角になっている様だった。
(まだ誤魔化せる! まだ舞える!!)
「いやー、実は2段目には何も入って無かったんだよね〜。」
「えっ! マジの助! それは辛いな…。」
佐助は行けた! 他の2人は?
「それは大変!! 私ので良かったら分けるよ?」
委員長もクリアだ。後は……。
「………。」
「どうしたんだ赤井? 考え込んで?」
赤井真由美。委員長の友達でまゆと呼ばれている。
今までも何回か一緒に駄弁る事があったが、妙に感の良いような、鋭いみたいなところがあった。
その赤井が手を顎の下に置き、考え込んでいる。これはいつものお決まりポーズなものでつまりは…。
「ねぇ、広瀬君? その中身、ほんとに無かったの?」
何かが引っ掛かかったという事に他ならない!!
「マジマジ。姉さんもおっちょこちょいだよな〜。」
赤井の視線は鋭さを増す。
「おかずの方に意識が行き過ぎたのかな? まぁ、こうゆう日もあるわな。」
「最初に気づかなかった?」
「へっ?」
俺は素っ頓狂な、間抜けな様な声を上げた。
「弁当箱を持ち上げた時よ。空っぽなら一段目との重量の差で気付きそうなものだけど…。」
ギクッ…!!
「そうじゃなくても…普通、ご飯が入ってる方が重いでしょ。」
ギクギクッ…!
「確かに…。」
「言われれば…。」
他の2人も賛同し始める。この流れひじょーにまずい!!
「でも、嘘をつく必要なんか無いだろ…?」
俺の口からは精一杯の反論が出るが、効力は弱い。
「つまりは…こういう事だろ!!」
佐助は俺から弁当箱を取り上げると、件の物を白日の元に晒した。
「あらまぁ〜、成る程、愛されてますな…。」
「これは隠す訳だ。」
「す、凄い。」
ニヤニヤする赤井と佐助。ただ感心している委員長。
「シスコン野郎にブラコン姉ちゃん…。お似合いですな。」
この日から暫くの間、このネタをイジられ続ける事になった。
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この後も【12:30】【18:30】に更新予定ですので、どうぞよろしくお願いします!!




