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誰が一番いいコーディネートをできるでshow

 無罪放免された翌日。

 気持ちのいい朝を迎え、着替えを済ましリビングに下りていくと。

 「何でいるんだ?」

 シルフィーさんが堂々と家に居座っていた。

 「あれから、兵士をクビにさせられたからな。行く当てがなかったのだ」

 だからって捕まえてた相手の家を訪ねるのか?

 「安心しろ、すぐに出ていくさ。そんなことより……」

 シルフィーさんは立ち上がると。

 「さっさとこれの脱ぎ方を教えろ!」

 自分の着ているメイド服を指さしながら迫ってきた。

 「別に破ればいいじゃないか。ていうかすでにそうしているものかと」

 「服を破るなんてそんなはしたないことできるはずないだろう! 鎧は兵団に返してしまったからこの格好をさらけ出したままここまで来たんだぞ!」

 なんというかめんどくさい。

 「分かったけど、今着替えは持ってるのか?」

 「持っていないが、いったいなぜ?」

 「だって、そのまま脱がせても下に服を来てないだろ?」

 「っ!?」

 俺はあの時、すぐに脱がれては困るということで鎧はがしをしながら鎧着衣をするという荒業をした。

 ちなみに、目を瞑っていても問題なく発動できるので、シルフィーさんの下着などは一切見ていない。

 「着替えがないならやめといたほうがいいですよ。それでもかまわないというのなら……」

 「え、遠慮しておく。……おいやめろ! 無言でこっちに近づいてくるな!」

 面白い反応をしてくれるシルフィーさんで遊んでいると。

 「あの、シルフィーさん。兵士をやめた今、あなたはこれからどうするのですか?」

 ガーナが心配そうに尋ねてきた。

 「心配はいりません。まだ職は見つかっていませんが、そのうち見つけますよ」

 その言葉を聞き。

 「だったら、ここで働きませんか?」

 ガーナは思ってもみない提案をしてきた。


 「似合ってるよ。メイド長さん」

 「まさか本当のメイドになってしまうとは……」

 シルフィーはこの屋敷で、主にガーナの身の回りのお世話を担当することになった。

 掃除や料理、買い出しに稽古までいろいろなことをやってくれるらしい。

 その引き換えに、この屋敷での衣食住を保証し、さらに給料まででるそうだ。

 ただ、そうなったときになんという役職にすればいいかという話になり、メイド服を着ていたことからメイドになった。

 「いやぁ、僕のおかげで就職が決まってよかったですね」

 「違う。これはガーナ様のおかげであって、決してお前なんかのおかげじゃない」

 「様はやめてください。今は冒険者パーティのガーナですので……」

 「いや、しかし……」

 「あなたはもうこの家の住人です。そこに上下関係はありません」

 「……分かりました。ガーナ様がそこまで言うなら善処します。しかし、まだ慣れないので最初はこの ままでもいいですか?」

 「いいですよ。ゆっくり慣れていきましょう」

 ……これで一件落着かな?

 「みなさん大変ですよ! 今すぐギルドに行きましょう!」

 和んでいた空気のところに突然、ナルファが飛び込んできた。


 「来ましたね。……スズキタイラさん。魔王軍幹部討伐、おめでとうございます!」

 ギルドに到着するや否や、盛大な拍手で迎えられた。

 「なんなんだよ、これは一体……」

 「ほら、カイジを倒した後、私たちがすぐに連行されちゃってお祝いができていなかったじゃないですか」

 言われてみればそうだな。

 俺は自然とシルフィーに目をやり。

 「その、あの時は悪かったよいろいろ」

 謝らせることに成功した。

 「気にすんなよシルフィー。俺はそんなことで怒るような奴じゃないさ」

 「じゃあなぜこっちに目を向けた!」

 激昂してきたシルフィーを適当に流し、俺は再び職員さんの方に目を向けた。

 「十二面相のカイジを倒してくれたタイラさん達には報酬一億トインが支払われます」

 「いっ!」

 その報酬額を聞いて、俺は驚いた。

 俺たちの懸賞金よりも高いじゃないか!

 「やりましたね! これでしばらくはお金に困りませんよ」

 そんな声が聞こえてくるが今はどうでもいい。

 ただ俺は、今日まで頑張ってきてよかったとだけひたすら繰り返していた。


 「それじゃあついでに買い物をして行きましょう。新しい装備だったりいろいろ買いますよ」

 いつになく楽しそうなナルファの提案で俺たちは街で買い物をしていくことになった。

 「それじゃあ、私は屋敷の食材の買い出しに行ってくる」

 「私は新しい防具が欲しいですね。戦士たるもの守りをしっかり固めなくては」

 「私は武器屋に行きたいです。新しい杖で魔法を強化します!」

 「僕は本屋に行きたいですね。楽しみにしていた新刊が今日発売なんです」

 見事に全員ばらばらだな。

 「それじゃあ、各自買い物が終了次第ここに集合な。俺はナルファと一緒に武器屋に行くよ」

 そういって、俺たちは散っていった。

 ちなみに俺が武器屋を選択した理由として、もちろん自分の武器が欲しいのもあるが、何より。

 「武器屋、武器屋、らんらんらーん」

 ものすごく浮かれたナルファをほっとくとめんどくさいことになりそうだからだ。

 「へいらっしゃい。実践向きからお手軽なものまでなんでも揃ってるよ」

 「店主さん。片手剣と杖をくれませんか? 自分便利屋なんで、どっちもいい感じのをお願いします」

 そう、俺は今まで武器という武器を持っていなかったのだ。

 魔法は一応生身でも使えるし、剣はガーナのものを借りていた。

 だがそろそろ自分用の武器が欲しいと思っていたんだ。

 「兄ちゃん便利屋か。それだったらこの剣と杖がおすすめだな。剣の方は軽くて丈夫だ。多分あんたでも十分使いこなせるくらいだろう。そんで、この杖は小さい割に、そこそこの大きさの魔法石が入ってるんだ」

 店主の人は悪い人には見えないし、恐らく信用しても大丈夫だろう。

 「分かった。じゃあ、これを買うよ」

 「まいどあり! それじゃ、そっちの嬢ちゃんはなにが欲しいんだ?」

 俺の買い物は終わり、次はナルファの番だ。

 「この店で一番すごい杖をください」

 「一番っつっても、どんな方面での一番だ? 魔法石の大きさか、かっこよさか、それとも重さか」

 「魔法石が大きくて、かっこよくて、重いものをください」

 それを聞いた店主が迷いながらも一つの杖を指さした。

 「あれがこの店で一番大きい魔法石を使っている杖だ。そしてそれにふさわしいデザインをしている。 だが、魔法石を制御するためにとても重く設計されているんだ。多分嬢ちゃんには持てないかも……」

そこまで言いかけた店主さんをよそに、ナルファは軽々とそれを片手で持ち上げ。

 「それじゃあ、これをください」

 「う、嘘だろ。俺が両手でやっと持ち上げたあの杖を片手で……」

 ごめんなさい店主さん。

 この魔法使い、頭より力なんです。


 「無料でくれるなんて、あの店主さんも粋なことしてくれますね」

 武器屋を後にした俺たちは、まだ時間があるということで防具屋にいくことにした。

 「それにしても、かっこいい杖ですね。私、もうこれ以外の杖を使う気にはなれないかもしれません」

 「そんなの一年もすれば気が変わってるだろうよ。それに、乱暴なお前の杖の扱いにその杖がついてこれるかも怪しいからな」

 そんなことを言ってからかっていると、ナルファは頬を膨らませ。

 「なんですか、かっこいい杖を取られたことへの嫉妬ですか。貸してあげようと思ってましたが、もう絶対に貸しません」

 「いらないよ、そんなゴリラ専用武器」

 ゴリラ専用と言われさらに言い返してくるナルファをよそに、俺は足早に防具屋へ向かった。

 「タイラさんとナルファさんじゃありませんか。お二人も防具屋に用があるのですか? あと、ナルファさんはすごく不機嫌そうですね」

 「そっちは気にしなくていいよ。それより、ガーナはまだ防具屋にいたのか?」

 「いえ、さっきまでシルフィーと食材の買い物をしていたのですが、楽しくて本題の防具屋に来るのが遅れてしまい……」

 正直、元追う身と追われる身で心配だったんだが、意外といいコンビなのかもしれない。

 「タイラさんは何を求めてここに来たんですか?」

 「そろそろ冒険用の服が欲しいなと思ってさ。ずっとこのままでいるわけにもいかないだろ?」

 冒険なんかと無縁だった当初の俺は、異世界での私服は買っていたが装備は買っていなかった。

 カイジの時は何とかなったものの、この先の強敵においては即死攻撃のようなものが普通になっていくだろう。

 そうなったときに、ちゃんとした防具を整えておきたいのだ。

 「それは素晴らしいですね。ぜひ、僕にコーディネートさせてください」

 後ろから突然声を掛けられ振り向くと、そこにはサエルがいた。

 「お前もうちょっと普通に出てこれないのか? お前が来るたびに寿命が縮んでそうな気がする」

 「僕にとってはこれが普通なのですが……。まぁ、善処しておきます」

 絶対に直す気がない返答だな。

 こうなったら、俺が気配に気づくしかないか?

 「あの、もし良かったら私にタイラさんのコーディネートをさせてもらえないでしょうか?」

 そんなことを考えていると、ガーナがそんなことを言ってきた。

 「おや、人の獲物を横取りしようとは」

 「横取りなんてそんな……。私はただやってみたいだけで」

 「おい待てよ。俺はお前らの着せ替え人形じゃ……」

 俺が慌てて二人を止めようとしたところ。

 「だったら、誰が一番いいコーディネートをできるか勝負しましょう」

 ナルファが最悪な提案をしてきた。


 「さぁ始まってまいりました、誰が一番いいコーディネートをできるでshow。実況はわたくし、通りすがりの実況大好きマンがお送りさせていただきます」

 誰だよ実況大好きマン。

 「ルールはシンプル。三人の選んだ防具を実際に来てみて、一番胸に響いた防具をタイラさんの自腹で 買ってもらいます。それでは、主催者兼コーディネート担当のナルファさんに意気込みを聞いてみましょ う」

 「ゴリラ専用とか馬鹿にしてきたのでざまぁないですね」

 くそっ! さっきの仕返しか!

 「それでは、まずはナルファさんのコーディネートを見ていきましょう。こちらです!」

 そして、俺の目の前にあるカーテンが開かれ。

 「おお! とっても強そうな鎧ですね。どんな攻撃でも防いじゃいそうです。それでは、ナルファさんにコーディネートのポイントを教えてもらいましょう」

 「この店で一番頑丈なものを選びました」

 「なるほど。頑丈であることは防具に重要ですからね。では、タイラさんの判定は!」

 「重くて動けん」

 「なんと! 重くて動くことができない! これでは実戦では使えないですね」

 「くっ! 二番目に頑丈なものにしていれば……!」

 「では続きまして、ガーナさんのコーディネートに移っていきましょう。こちらです!」

 またしても、俺の目の前のカーテンが開かれ。

 「ま、まぶしい! なんてきれいな黄金なんだ! では、ガーナさんにこのコーディネートのポイントを教えてもらいましょう」

 「頑丈で、それでいておしゃれな感じにしたいなと思って、黄金を選びました」

 「確かにおしゃれは重要ですもんね。黄金がおしゃれかどうかは知りませんが、タイラさんの判定 は!」

 「成金のボンボンみたいで恥ずかしい。あとついでに動けない」

 「おしゃれ路線は良かったものの、黄金はさすがに恥ずかしいみたいです。ちなみに、店主さんによればこの防具は二番目に固い防具だそうです」

 「黄金じゃなくて、プラチナが良かったかしら?」

 「では最後に、サエルさんのコーディネートを見ていきましょう。こちらです!」

 そして……もうこの説明いらないよな?

 「おや? さっきまでのお二方とは違い、金属はかなり少なめですね。それでは、サエルさんにコーディネートのポイントを教えてもらいましょう」

 「タイラさんは魔法を使えることから、あまりがっちりとしたものを着る必要はなく、急所さえ守れればいいと思いました。かといって、剣も使うので剣と対峙したときに備えて斬撃をある程度緩和してくれる素材の服を選びました」

 「タイラさんの戦闘スタイルに合わせたコーディネートということですね。それではタイラさんの判定は!」

 「今までで一番いいが、お前がまじめ枠なのかよ!」

 「これは決まりましたね。ということで、誰が一番いいコーディネートをできるでshowはサエルさんが優勝! なので、タイラさんはこの服をお買い上げくださいね?」

 「分かってますよ。ちゃんと買いますから」

 「それでは、次回の実況でお会いしましょう。……さらば!」


 「みんな遅かったな。……どうしたんだその防具?」

 「こいつらに買わされてな。サエルが無駄にいいものばっかり選ぶからかなりの金額になったじゃないか」

 「でも、いい買い物ができたでしょう?」

 「だからって、あの黄金装備より高いのはおかしいだろ!」

 「よく分からんが、楽しそうで良かったよ」

 この状況のどこを見て楽しそうに見えるのだろう。

 だが、確かに楽しい一日を過ごせた気がする。

 今日まで、兵士から逃げたり魔王軍幹部を倒したりと落ち着く暇もないくらい忙しかったからな。


 このままずっとこんな日々が続けばいいな。


 そんな俺の願いも虚しくまた騒ぎが訪れる。

 一体の魔物と共に。


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