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親友の元カノに家へと誘われたら、僕が命を救った可憐なJCが妹として待ち構えていた話、します?【長編小説】  作者: 金森 亮
第二章 出会い別れ

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第6話 人として好き……とは

「ねぇ、じゃあさ」

「なんだ?」

「過去ってどうやって乗り越えたらいいと思う?」

「別に無理に乗り越えないで、踏みつけていけばいいんじゃないか?」

「ふ、踏みつけるって……?」

「過去の記憶を引きずって、次に出会う人間に疑心暗鬼になるのは失礼だろ?」

「……うん」


 香織は笑顔を見せつつも、唇と唇を押し合って、悲痛な様子を見せる。


『この切ない感じ、やっぱり既視感があるんだよな……』


「もう、今は昔と違うんだ。北村にも人を見極める力はあるはずだ」

「……そうかもしれないけど、やっぱり私は自分を信用できないわ」


『どいつもこいつも、なんでこんなに自己肯定が苦手なんだよ……』


「良いやつかどうか分からなかったら、すぐに諦めて次の恋に励めば良い」

「たしかに……それはそうね」

「過去は過去、今は今で、未来は未来だ。忘れろとは言わないけど、もう次のステップに進む時期だと思う。違うか?」


 香織は僕と視線を合わせて、取ってつけたような笑顔を見せる。まだ胸の内の悲痛は取り切れていないようだった。


「やっぱり、流石は伊賀先生ね」

「いつから僕は北村の主治医になったんだよ……」


 香織は氷で上側が透明になったカフェラテを飲む。僕もまたコーヒーを二口、口に含み、一息つく。


「それで、こっちからも質問があるんだけど……いいか?」


 そして、ある意味僕にとっての本題に入ることにした。


「なんでもいいわよ」

「お前、兄弟いるか?」

「え、兄弟? 妹がいるけど……それがどうかしたの?」


『……唐突に名前を出すのは気色悪いな』


「い、いや。単に僕は一人っ子だから、兄弟の距離感ってものを知りたいんだ」


 香織は人差し指を頬の下にあてて、「うーん」と言いながら考える時間を作る。


「私と妹は比較的良好だと思うわ。妹が受験生っていうのもあるけれど」


『うん、これ、もう美紀さんで確定だな』


 僕は本の少し顔を綻ばせる。


「女同士、すごいディープな話とかするの。友達にもできないようなね」

「ディ、ディープって……言い方」

「心の置けない友人みたいで、私は妹がいてくれてよかったと思うわ」

「喧嘩はしないのか?」

「もちろん喧嘩もするけど、自分の方が過失が大きかったら折れるようにしているわ」

「なんか……理想の姉妹像すぎて、逆に参考にならないや」

「つまらない姉妹で悪かったわね」

「そんなこと言っていないだろ……」


 すると、香織は突然、笑顔を枯らして困り果てたような顔をする。


「でも……ひとつ悩んでいることがあるの」


『まさか……勉強とか言うんじゃないだろうな』


「受験勉強が全然はかどっていないみたいなのよ……」


『やっぱりな……』


「受験勉強なんて根気でどうにかしないと。未来のため投資なんだから」

「その言葉、そっくりそのまま言ってあげてほしいわ」


『大丈夫だ。たぶんそのうち本当に言うことになるから』


 香織は身体を机に乗り上げて、屈託のない笑みをする。


「じゃあさ、今度家(うち)に来て、妹に家庭教師してよ」

「ん……ん?」

「勉強というより、受験に必要な根気を教えてあげてほしいの」

「う、うん……うん?」

「な、なに。私、なにかおかしなこと言った?」

「自覚がないなら、最寄りの精神科に行くことを勧めるけど」

「な、なんでよ!? カテキョよ?」


 僕は明らかな溜息をついて、香織にそれを見せつける。


「常識的に考えてみろ……。僕はどこの馬の骨かも分からない男だ。それを女子の花園に連れ込むもんじゃないだろ……」

「その骨の原産地は知れているし、第一、伊賀ってスマホでも下ネタ吐かないんだから、家《うち》でも何もしないでしょ?」

「もしかしたら、僕がムッツリスケベかもしれないだろ」

「え、そうなの?」


 僕は自分の失言に目を四方八方にキョロキョロさせる。


「……少なくともムッツリではない」

「とにかく、何かあったら始末するだけだから大丈夫よ。私も傍にいるし」

「サラッと脅迫するな……」


『まぁ、既に確約しているようなもんだしいいか……』


「分かったよ。ちょうどテストも終わったからな」

「ありがとう。流石はできる男ね」

「褒めても出るのは啓蒙ぐらいだぞ」



 そう話している間に時刻は午後3時半を回り、店を出た僕らは最寄りの学園前駅まで歩みを進めていた。


「……私、伊賀のこと、人としてかなり好きだから」

「……へ?」


 僕は突拍子もない言葉に、思わず彼女の方を一瞥する。


「それって、告白となにが違うんだ……?」

「いい、伊賀くん」

「は、はい」

「女は振られても、安易に他の男に目移りしない生き物だから」

「主語が大きすぎると思うけど……とりあえず、人として認めてもらったって認識しておく」

「まずまず、私が告白したところで、どうせあなたは断るんでしょ?」


 香織は吐息交じりでそう呟く。


「まぁな。僕は高校時代に恋愛をするつもりはないし」

「何回も聞いたわ」


 無言の時間が五秒ほど流れると、香織はこう告げてきた。


「だけど……すごく信頼はしているから」

「そうか。よかった」


 不意に僕は陽人の顔を脳裏に浮かべる。


『……まぁ、流石に交際関係に至ったら困るしな』

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