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親友の元カノに家へと誘われたら、僕が命を救った可憐なJCが妹として待ち構えていた話、します?【長編小説】  作者: 金森 亮
第二章 出会い別れ

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第4話 家庭教師の約束

 午後4時の少し前、校門を出た僕は一人で自宅までの帰路を辿る。


『……あの二人、どうなったかな』


 脳裏に陽人と香織の顔が思い浮かぶと、目の前にぼんやりとポニーテール姿の少女が見えた。焦点が合うと、その少女が美紀だと分かった。


 美紀は昨日と同じく一人で歩いてはいるものの、前を向いて安全に下校している。


『これなら僕が見守る必要もないな』


 僕は信号待ちする美紀を追い抜いて、一人で駅に向かう。


 すると二十秒くらいして足音が響くようになり、僕はそれがある程度大きくなったところで立ち止まった。そして真後ろには息の整わない、美紀の姿があった。


「しゅ、俊さんって上の名前、なんていうんですか?」

「二つ上の先輩に会って最初に言う台詞がそれかよ……」


 僕は「はぁ」とため息をついて、両手《《をぶらぶら》》とぶら下げる。


「……悪かったですか?」


 僕は姿勢を元に戻して、美紀にニンマリと笑いかける。


「いや、いかにも中学生って感じで安心したよ」

「……なんです、私を馬鹿にしているんですか?」

「むしろこっちが中学生相手に誑かされているようなもんだろ……」

「あぁ、たしかにそうですね!」

「納得するな……」


 僕は「ふぅ」と吐息を漏らし一呼吸置く。


「それで話に戻るけど、僕の苗字は《《伊賀》》だ」

「伊賀……忍者みたいですね」

「……よく伊賀が忍者の街だってこと知っているな」

「最近の中学生を舐めないでくださいよ」

「ど、どうもすみませんでした」


『やっぱり押されるんだよな……』


「ちなみに、私の苗字は北村といいます。これ、必修ですからね」

「北村……なのか?」

「そうですけど?」


『あれ……たしか北村って。まぁ、そんなミラクルないか』


「じゃあ、これから《《北村さん》》って呼んでいいか?」

「そしたら、私は躊躇わずに《《俊》》って呼びますけど?」

「……やっぱりなんでもない」



 僕は美紀と横並びで歩みを進める。無論僕が道路側に立ち、それこそカップルみたいな様相を呈する。


「というかさ」

「なんですか?」

「美紀さんは、どうして僕と関わろうとするんだ?」

「だって、まだお礼が済んでいませんから」

「大丈夫だよ。昨日のお悩み相談で十分元は取れたから」

「私はそうは思わないですけどね」


 美紀は目を瞑ってなぜだか不満気な表情を露わにする。


「鶴の恩返しバージョン2(ツー)でもしようって言うのか……?」

「私が好んでやっていることですから、俊さんが気にすることはないです」

「中学生に恩着せがましいことしてどうするんだよ……」

「……中学生、中学生って。俊さんの中で私はどういう位置づけなんですか」

「ギリギリ《《ロリっ子》》だな」

「そんな……」


 美紀は口を窄めて拗ねた様子を見せる。


「別にいいだろうよ。そのうち高校生になって、そのうち大学生になるんだから」

「それでも……私は女性として見られたいんです!」


 美紀は俊の方をみて目をかっ開き、切実な様子を見せる


『……ちょっとデリカシーがなかったか。そうだ。相手は思春期真っ盛りの女子中学生なんだ』


「……言い方が悪かった。ごめん」

「そ、そんな謝らなくて全然大丈夫ですよ!」

「でも、やっぱり中学生に恩返しされ続けるのは気分が良くないんだ」

「……そうですか」


 美紀はしょげて、涙を流す一歩手前のような悲しみに満ちた顔をする。


「な、なんでそう残念そうな顔をするんだ。まだ会って一日だろ……」

「そこは……私にも色々な感情があるんです」

「そうか……。大変な時期だとは思うけど、頑張れよ」

「ありがとうございます。できれば……誰かと一緒に頑張りたいんですけどね」

「へ?」

「いえ、なんでも」


 美紀は純粋なものではない、どこかに切なさを感じさせる笑顔をする。


『僕に妹がいたらこんな感じだったのか。いや、実際はこんな関係にはならないだろうけど……』



 月寒中央駅に辿り着くと、二人してホームに降り、二人して同じ栄町方面の列車に乗り込む。


「ねぇ、俊さん」

「なんだ?」

「私、いいこと思いつきました」

「つまりよからぬことを思いついたんだな」

「……違いますよ。知っての通り、私、今年受験生なんです」

「そうだな」

「それで俊さんは今年、受験生ではありませんよね?」

「そう……だな」

「そこでなんですが……私に勉強を教えてくれませんか?」 


 美紀は手をもじもじさせて懇願する。


「勉強……って、受験のか? 基礎ならいけるけど本番の対策は……」

「あぁ、大丈夫です! 私、基礎から何も勉強できないですから!」


『一周回って現実逃避したな……』


 僕は少しひいてしまい、目を細めて作り笑いをする。


「お願いします……。頼れる人が《《先輩》》しかいないんです」


 美紀は両手を合わせて、上半身を左右に揺らしながら、例の如く上目遣いをする。


『先輩……先輩……くっ!』


「……もう、分かったよ。これもなにかの縁だしな」

「え、縁……」

「なんでそこに引っ掛かるんだよ」

「い、いえ、これから楽しい日々が続きますね!」

「楽しすぎて燃え尽きても仕方がないけどな……」

「そうですね!」


 だが、僕の中には一つだけ疑問が浮上していた。


「でも、どうやってお礼してくれるんだ? 負債のほうが貯まる一方だろ……?」

「あぁ、それはそのときがきたら、最上級のおもてなしをしますから!」

「だから別にいいんだってば……」



 電車が学園前駅に停車すると、美紀は「あっ……それでは、私はここで」と言って、列車を降りていく。


「じゃあ、《《また》》な」

「はい! また会いましょう!」


 美紀は人目をはばからず、俊に満面の笑みで手を振る。


 今までそんな気づかなかったけど、中学生にしては別嬪だよな……』


 僕は美紀を親さながらに見つめながら、無意識に手を振った。



『彼女はなんで僕の前であんなに幸せそうに振る舞うんだろう……』


 自室に籠る僕は漠然と美紀の笑顔を思い浮かべる。美紀の健気さに少し惚れ惚れした僕は、顔を薄っすら赤に染める。


『ちゅ、中学生相手に何考えているんだ馬鹿野郎……。とは言っても、実際はたったの二歳差なんだよな』


 その日の晩、僕は陽人、香織両名から別れた旨の連絡トークを受けた。


『これで一件落着か。ふぅ……』


 僕が落ち着いて少しすると、スマホの通知が鳴り響き、香織からのトークだった。


「今度、どっか一日お茶できる日ない?」 「話したいことがある」


『……へ?』

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