第24話 姉妹の軋轢=嫉妬
7月12日金曜日、学校は家庭学習の期間に入った。というわけで、僕は朝から夕方まで北村家に浸っていたのだが……。
『く、空気が悪すぎるだろ。なんだ、この誰も言葉を交わさないこの空間は……』
「べ、勉強、捗っているか?」
「そうですね」
「そうね」
明らかに会話のターンが短い。一日二日で一変した日常の一幕に、僕は思わず言葉を交えてしまう。
「……なんかさ、二人とも急に口数少なくなった気がするんだけど?」
「気のせいですよ」
「気のせいじゃないかしら」
「そ、そうか……」
ふと、僕は二人とデートをしている事実に気づいてしまい、これが火種になった線に恐怖する。
『……これ、僕のせいかもしれない』
「も、もしかして……二人とも、僕に怒っているのか?」
「そうじゃないです」
「怒ってなんかいないわよ」
その後も沈黙がつづく。この間、二人は勉強に勤しんだり……かと思えば、スマホを弄ったりの繰り返しで、取り留めもない時間が流れていく。
「どうしちゃったんだよ!? 勉強に目覚めたわけでもなさそうだしさ……」
「どうもしていないですよ」
「いや、どうかしているだろ!」
「俊が勝手に錯覚しているんじゃないの?」
「違うだろ……。一体何がこうさせているんだよ……?」
すると、姉妹は計らったように「はぁ」と溜息をつく。そうして香織は僕にこう呟くのだった。
「この国って一夫一妻制よね」
「な、何を今更……」
「……見てわかりませんか? どっちが駿さんを捕るのか、競争しているんですよ」
『なるほ……ど? うん? うん!?』
「どっちともデートしたんですよね?」
「ごめんね、俊。私が導火線切っちゃったのよ。でも……仕方がなかったから」
「何しているんだお前は……」
香織は反省の色をこれっぽっちも見せようとはしない。
姉妹は互いに嫉妬していた。僕の獲得に躍起になってどうかしている。
「そ、そんな、他にも星の数ほど男なんているだろ?」
この急展開に、僕は思わず本音を漏らしてしまう。
「その星のうちの一つを掴みたいんじゃないですか!」
「私たちは星を輝かせたいだけよ!」
だが、この嫉妬の裏を返せば、それだけ互いが互いのポテンシャルに気づいているということでもあった。
「別に僕は恋していないし、するつもりもないから。そんな野暮な喧嘩はやめろ」
「へ……?」 「え……?」
僕が本音をつらつらと言うと、姉妹は二人して当惑した様子を見せた。
「むむむ、無責任ですよ!」
「そうよ! せめてどっちかと結ばれないと卑怯じゃない!」
「その逆お局みたいな展開やめろ……」
僕は息を整えて、不満気な顔色を見せる二人にこう告げる。
「い、いいか? 僕はお前らの勉強のための潤滑油なんだからな?」
「そんなの知ったこっちゃないです」
「知ったこっちゃないわ」
『知ったこっちゃあってくれよ……』
「結局、どうやったら機嫌を取り戻してくれるんだよ……?」
「付き合わないにしても、一番がどっちかってことを決めてもらわないと」
「そうね」
『親友に一番も二番もないだろうに……』
というわけで始まったのが、僕への溺愛行動……だったのだ……。




