第21話 恋愛を勉強すること
6月24日月曜日、今日は朝っぱらから、陽人と話がしたくて堪らなかった。というのも、僕は陽人にこんな頼み事をしようと企んでいた。
「陽人、聞きたいことがあるんだ」
「どうした? どっちと付き合えばいいかって質問には答えないぞ?」
「別に答えなくていいから……」
僕は息を整えてこう言った。
「お前が失策だったと思う香織とのやり取りを知りたいんだ」
「そ、それはいいけどさ……ちょっと唐突すぎないか?」
「いや、僕らしくていいだろ」
「今日、一緒に飯食えるか?」
「あぁ、もちろん」
昼食の時間になって、僕と文明の輪に陽人が入って話を進める。
「いやぁ、悪いな文明。こんな話題に巻き込んじまって」
開幕早々、僕は謝意の言葉を述べる。
「いいんだよ。僕も勉強になるからさ」
「……それで失策はどんなものがあった?」
「うーん、そうだね。一つは香織の周りを見れていなかったことかな」
「なんだか、漠然としているね」
「そうだな……どういうことだ?」
すると陽人は一呼吸おいて、こんな言葉を続けた。
「香織と行ったファミレスで、隣に同級生が座ってきたんだ」
「ほう」
「その同級生は香織のことを煽っていたんだけど、俺はそれに気づかなかったんだ……」
「……それのどこが問題なんだよ?」
「気丈に振る舞えない男は嫌いだって言われちゃったよ」
「あぁ、そういうことか……」
『……香織ってちょっとじゃなくて、かなり面倒な性格しているな』
「女の子の心理を知るって大変だね」
「全くだよ……」
陽人はため息交じりでそう言った。
「……あとはトークの反応が遅すぎるっていう理由で怒られたり、結婚願望がなさそうという理由でため息つかれたり」
「なんか……ちょっと理不尽だな」
「かなり理不尽だね」
『……そんな性格していて、どうして僕に惹かれるんだろう?』
僕は頬杖を突いて「うーん」と唸る。僕に香織を幸せにできるだけの胆力があるとは思えなかったのだ。
「俊、どうした? 急に考え込んじゃって」
「いや、なんか前に、誰かさんに誰かさんのことを幸せにするように言われたから……」
「うーん、誰だろうなぁ」
陽人は白々しい棒読みでそう言った。
「え、誰誰?」
何も知らない文明はそう呟くが、残念ながら華麗にスルーされてしまう。
「まぁ、ここで逆に香織の機嫌をとれたことについて語るけど」
「う、うん……」
「淀みない笑顔か自信に満ちた発言をしたときだったよ」
「……すごく抽象的になったね」
「うん……抽象的だな」
僕と文明は顔を見合って、陽人の言葉を噛み締める。
「とりあえず、向上心があれば嫌われることはない。俺にはできなかったけどな……」
「そうなのか……? お前の性格的に自信に満ちた発言なんて、軽々とできるだろ?」
「そうだよ。僕じゃないんだから……」
「自己肯定と同じぐらい、自己否定もしていたんだよ。対して俊は、自己肯定だけだから香織にはいいんだ」
「……そうか」
『自己肯定と自己否定か……。別に自己否定しても、彼女が鼓舞してあげればいいだけなんだけどな』
僕は難しい恋愛の世界に片足を突っ込んで、途轍もなく頭を悩ませるのだった。
「……恋愛したくなくなったかもしれない」
「お、おい!」
【最後に】
どうか★をください(切実)




