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親友の元カノに家へと誘われたら、僕が命を救った可憐なJCが妹として待ち構えていた話、します?【長編小説】  作者: 金森 亮
第五章 カップルの様相

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第20話 姉妹のどっちを選ぶ?

 6月22日土曜日、授業が終わって、僕は一人、帰路を辿ろうとする。今日は姉妹との勉強もなく、久しぶりに誰とも言の葉を交わさずに帰れると、そう確信していた。


 すると、下駄箱に着いたところでこんな言葉が聞こえてきた。


「今日は一緒に帰らないのか?」


 声の主は陽人だった。久しく話していなかったものの、僕はどうにか平常心を取り繕った。


「別に付き合っていないからな」

「あんな美人、放っておいたらすぐに取られちゃうぞ……?」

「放った張本人がなに言っているんだよ」


 なぜか、今日もまた一人での帰宅は許されなかった。


『なにかの呪いにでもかかったのか……』


「香織は今日も元気そうだったな」


 歩道に入ると突然、陽人がこの話題をぶっ込んできた。


「いつもあんなもんだろ」

「お前が近くにいるからじゃないのか?」

「……なんだ、それは僕への当てつけか?」

「親友に楯突くほど性根は腐ってないよ」


 少しの間、車の走行音だけがあたりを包み込む。


「それで、お前はどっちを選ぶんだ?」


 僕が二の句を考えていると、陽人がそう尋ねてきた。


「どっちって……なんの二択だよ」

「決まっているだろ。姉妹のどっちと付き合うか聞いているんだよ」


 僕は目を見開いて「へ?」という声を漏らしてしまう。


『二人きりだからって、ちょっと踏み込みすぎじゃないか……?』


「……は、陽人は大丈夫なのか?」

「別れたんだから、それ以上でもそれ以下でもない。今は切り替えているしな」

「それはそうかもしれないけど……」

「後ろ髪はひかれていないから大丈夫だ」


『そりゃあ、陽人はいいのかもしれないけどさ……』


 僕は唇を押し付けあって、どうにか自分に対する不満を抑え込む。


「お前がどうにかして幸せにできるなら、お前に香織のことを幸せにしてほしい」


 陽人は少し笑顔を見せてそう言った。


「……でも、美紀もいるし、お前から香織を奪った気がしてあまり気分が良くないんだ」

「こっちはたかだか一年しか付き合っていないんだから、お前が何年も付き合って上書きすればいい」

「なんでそう前を向いて歩けるんだよ……」


 するとどういうわけか、陽人は髪をポリポリかいて顔を火照らせた。


「……俺には仲の良い女友達がいる。最近は色々と悩みを聞いてもらっていた」


『ん、ん……?』


「だから……新しい恋に向けてちょっと色々と考え始めているんだ」

「そ、そうなのか」


『……ほ、本当にバッサリ縁を切ったってことか?』


 陽人は香織の存在を乗り換えようとしていた。そして、僕にはそんな陽人を邪魔する資格なぞなかった。


「後ろめたい気持ちとか、後退りしている自分とか、本当にそういうのないから」

「……分かったよ」


 陽人の新しい恋を応援するべく、僕と香織が良好な関係を築いておくことは、手段として悪手ではなかった。


「付き合うかは知らないけど……それなりに仲良くはするよ」

「あぁ、頼んだ。お前ならやってくれると信じているからな!」

「……頑張ってはみるから」


 そうして、陽人は立ち止まって手を差し伸べてきた。僕はそれを笑顔で握り、残っていた心の蟠《わだかま》りを解消していった。


『これで……僕も後ろめたい気持ちがなくなった。本気で香織のことを幸せにする資格ができた』




―――で、でも………美紀が。美紀もいるんだ。僕はどう動くのが正解なんだ……?―――




「あ、一つ言うの忘れていた」


 僕が姉妹のことを思案していると、陽人はそう前置きを言って、こう続けた。


「俺は負け犬じゃないからな!」

「遠吠えすんな」

「と、遠吠えじゃねぇ!」

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