第15話 デートの計画を教える会
6月10日月曜日の放課後、僕は姉妹と共に北村家に向かうことになっていた。どうも美紀の方が僕にデートの計画を発表したいそうだ。
いつもの歩道で美紀とも合流すると、僕は周囲の空気に打ちのめされていた。
「……なんか同級生、異物を見る目でこっちをみていないか?」
「ハーレムですから!」
「ハーレムだものね」
「そんな淡々と言うな……」
今回、僕は私的な理由で、初めて北村家を訪れることになった。
「……まさか、勉強以外でこの家に来るとは思わなかったよ」
リビングで落ち着いた僕は、ボソッとそう呟いた。
「別にいいじゃないですか!」 「別にいいじゃないの」
姉妹は物の見事にハモリを見せて、僕に姉妹の威厳を感じさせる。
「それに、なんだこの大量に吊るし上げられたてるてる坊主は……」
「我が家の伝統です!」 「我が家の伝統よ」
「なんだ、梅雨の雨に抵抗しているのか?」
「そうよ」
「雨は気持ちが沈みますからね!」
「……そんな無茶な」
だが、姉妹二人が仲良くないとこんなユーモアも実現しないので、僕は仲睦まじい光景に、温かい目を向けておいた。
「……なにニチャアってしているのよ」
「なんでもないなんでもない」
「じゃあ早速……あ、お姉ちゃんは無理にここにいなくていいからね?」
「はいはい、お二人でごゆっくり」
香織は一度こっちの方をチラっと見て、そのまま自室へと消えていった。その様子を見た美紀は、ニヤリとして僕の方に身体を寄せた。
「ち、近くないk……」
「まず、最初は小樽に行きます!」
美紀は僕の言葉を遮ってそう言った。
「……“最初は”って、小樽を出るのか?」
「はい! その後、余市と仁木に立ち寄りたいです!」
「余市も仁木も近いけどさ……仁木にはりんごでも食べに行くのか?」
「あぁ、それもいいですね! そこは当日のお楽しみってことで!」
「……当日中には帰れるよな?」
「えぇ、もちろんですよ! だって、二人でホテル泊まれないですから!」
すると、ドアがガチャッと鳴る音が聞こえて、香織が鬼の形相でこちらにやってきたではないか。
「……いま、ホテルって聞こえたんだけど」
「お前は耳が敏感すぎるぞ……」
「そうかしら?」
「ホテルに泊まれないから、絶対に当日中に帰らないとって話だ」
意味合いを知った香織は、胸に手を添えてホッと一息ついた。
「失礼しました〜」
そう言って、香織はまた自室へと籠る。そうすると、美紀は僕を上目遣いで直視するようになる。
「な、なんだなんだどうした?」
「……本当にいいんですよね?」
「なにがだよ」
「私とデートすること……です」
今更すぎる質問に僕は拍子抜けして、顔を突き出して「へ?」という表情をする。
「……行かないならどうして僕はここにいるんだよ」
「あぁ、たしかにそれもそうですね!」
「これはもっと勉強が必要みたいだな」
「そ、それは結構です!」
「結構じゃないだろ……」
僕は「へぇえ」と言ってため息を漏らす。
「……実は私、物心がついてから、男の人と外出するの、初めてなんです」
「それじゃあ、僕を足掛かりにするんだな。レンタル彼氏的な」
「……え?」
彼女は絶句してしまった。僕の言い回しがあまりよろしくなかったようだ。
「み、未来なんて分からないんだからさ」
「……そうですね」
彼女は俄然、顔色を戻してはくれない。そこで、僕からこんな提案をしてみることにした。
「あのさ、オルゴール工房、行かないか?」
「オルゴール工房……?」
「互いに自家製オルゴールを作るんだ。とは言っても、オルゴールそのものじゃなくて周りの装飾を作るんだけどな」
「わぁ、それいいですね!」
彼女は顔色を元に戻すどころか、来たときよりも目を輝かせて、僕に高揚した様子を覗かせた。
「それで、最後にそれを交換するんだ」
「唯一無二のオルゴールを……なんかロマンティックですね! ぜひ、やりましょう!」
「あぁ」
そうすると、空のコップを片手に香織がやってきた。
「香織、もう大丈夫だ。ありがとうな」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「そうなの……まだ二十分ぐらいしか経っていないけど?」
「当日のお楽しみだからな。じゃあ、美紀、僕の提案も組み込んでおいてくれ」
「はい!」




