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親友の元カノに家へと誘われたら、僕が命を救った可憐なJCが妹として待ち構えていた話、します?【長編小説】  作者: 金森 亮
第三章 祝、家庭教師就任

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第11話 デート・データー・デーテストの思案

 6月1日土曜日の帰り道。今日の僕は、美紀と初めて待ち合わせをすることになっていた。いざ校門に向かうと、そのわきで空を見上げ静かに佇んでいる少女の姿があった。


「悪い、遅くなったな」

「大丈夫ですよ。新幹線に乗り遅れるわけでもないですし」

「いや、まぁそれはそうだけど……」


 僕らは歩道に出てすぐに左折して、いつも通り帰路を辿る。


「デートの行き先は決まったか?」

「はい! ちょっとお金はかかりますが、とてもいい場所を見つけたんです!」

「二万を超えなきゃどこでもいいよ。それでどこに行くんだ?」

「ざっくり言うと小樽です」

「うん、まぁまぁざっくりだな」

「えへへ」


 彼女は日常と化した笑顔を見せつける。


「……小樽か。たしかに、札幌の人間は仕事でもない限り、行く機会がないよな」

「あとはこの辺だと、羊ヶ丘の展望台もそうですよね」

「あぁ、幼稚園児の頃に連れていかれた記憶しかない。そういう近くて遠い場所に行くのもいいかもな」

「私、かなり褒められましたね!」

「そうだな」


 美紀はその場で作り出せる最大限の笑顔で、俊にその喜びを見せつける。


「まぁ、言葉選びなら誰よりも自信があるもんでね」

「あ、その一言で全部雰囲気壊れたんですけど」

「いや、流石に難しすぎるだろ……」


 僕らは美紀を事故から救った例の交差点を横目に左折して、駅のある方に向かう。


「なぁ、一つ聞いてもいいか?」


 僕がそう言うと彼女は機敏に反応する。


「なんでも聞きますよ!」

「どうして僕と一緒に出かけてくれるんだ?」

「……本質的なところですか」

「僕なんて所詮、美紀さんを事故から救っただけの男で、一回謝られたらそれで終了なはずだろ?」

「そう……なんでしょうか」

「それなのにどうして僕と絡んでくれるんだ?」


 美紀はなぜか笑顔にほんの少し悲しみを滲ませる。


「俊さんのそばにもう少しだけ長くいたいから……ですかね」

「なんだよ。まるで僕に恋しているみたいじゃないか」


『やっちまったか……? 結構踏み込んだことを聞いてしまったなぁ』


 美紀は「え、えへへ」というような少し乾いたような笑いをする。


「私、恋をしたことがないんです」 

「……そ、そうなのか!?」

「えぇ。なのでこの気持ちは、もしかしたら恋なのかもしれませんし、そうじゃないのかもしれないです……」

「そうだな……」


 僕は回答を濁し、俯いてしばらく黙って思案する。


「僕は美紀さんに恋されることが凄く嬉しいけど、同時に申し訳なくも思う」

「……え、なんでなんですか?」

「美紀さんが僕を美化しているような気がするんだ」

「び、美化ですか……?」

「つまり、事故から救った救世主、白馬の王子様的な感じに受け取られているんじゃないかって」

「それももちろんあります。だって本当にそれで救われた命ですし……」


 美紀は包み隠さずそう言った。僕の人間性に少なからず好意を持っている様子で、僕はそれを否定なぞしなかった。


「まぁ、そうだよな」

「ですが……私が惹かれそうになっているのは、俊さんの態度なんじゃないかって思うんです」

「なんだなんだ、僕の人を啓蒙する姿勢に惹かれているのか……?」

「……成長できたんですよ。自分を大人に一歩近づけられた。俊さんのお陰なんです」

「僕じゃなくて、それを理解して受け入れた美紀さんが凄いんだよ」

「そういうところですよ……自覚ないんですか」

「へっ?」


『まずい。全く以て自覚がない……』


 僕は何度も瞬きして動揺する様子を隠さずにいる。

 美紀は僕の様子をみて少し呆れたようで、そっけない態度をとるようになる。


「まぁ、いいです。とりあえず私はいま、《《片思いしている》》ってことにしておいてください」

「いいのか……?」

「いいんです。これが恋という概念だと理解するのも、きっと時間の問題だと思いますし」

「そうか……」


 美紀は思い出したかのように笑顔を取り戻す。


「でもなにはどうあれ、楽しみにしています、デート」

「僕もだ」


 美紀は僕の方を見て目を煌めかせると、また前を向いて歩みだす。僕はそんな美紀の知らないところで、うっすらと笑顔をつくった。

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