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親友の元カノに家へと誘われたら、僕が命を救った可憐なJCが妹として待ち構えていた話、します?【長編小説】  作者: 金森 亮
第三章 祝、家庭教師就任

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第9話 妹とディトの約束をする

 僕は「ふぇ」という変な息をつく。


「流石は姉妹だな」 「お姉様にもそう言われたよ」

「そう言われたとは……?」

「人として好きだって」

「……そうなんですか」

「ありがとうな」 「僕を嫌わなくて」

「嫌うわけないですよ!」 「俊さんは私の命と心の恩人ですよ!?」


『こ、心……?』


「心ってなんだ?」


 すると二分ほど返信が帰ってこない。


『変なこと聞いちゃったかな……』


「さっきのは気にしないでください」 「深い意味はないんで」

「それならいいんだけど」


『いや、どこもよくはないか……。もしかしたら重要な意味が……考えるだけ時間の無駄か』



 5月16日水曜日、午前8時前、月寒中央駅から学校までの歩道。僕はぼけぇっと何も考えずに歩み進めている。


「あぁ、俊さん! おはようございます!」


 すると一気に喧騒が舞い込んできた。


 美紀は僕のところに腕を振りながら小走りで駆け寄ってくる。


「おはよう。美紀さんは今日も元気はつらつだな」

「また私のこと‟さん”付けしている……」


 美紀は上唇と下唇を口の中にめり込ませて、なんとも口にし難い表情をする。


「よその中学生を呼び捨てで呼ぶほど、僕も腐りきっていないんでね」

「そんな気にすることかな……私がいいって言っているのに」

「僕が嫌なんだ。美紀さんは中学生で思春期真っただ中。そんな女子の逆鱗に触れようものなら、たぶん明日の命はないだろうな」


 僕は話を面白がって鼻で笑う。


「もう、憶測で語らないでくださいよ……。私はそんなことしないし、第一既に事故のときに身体は……身体は」

「あ、あれはノーカンだ!」

「……都合のいい人ですね」


 美紀は少し右の頬をふくらませる。しばらくしてぱっと口を開き、もとに戻す。

 やがて顔を赤らめ、恥じらう様子を見せるようになる。


「あ、あの、俊さん……」

「なんだどうした?」

「私とデートしてくれませんか」

「……はい?」


『いやいやいやいや、突拍子がなさすぎるだろ!?』


「クラスに風采のいい男子の一人や二人はいるだろ……?」

「ふ、風采ってなんですか?」

「要するにイケメンの一人や二人はいるだろ」

「勝手に面食いにされても困るんですけど……」

「そもそも、美紀さんは受験生なんだから、勉強に没頭しないとダメだ」

「い、一日で変わるぐらいの勉強じゃ大して変わりませんって……」

「うん、まぁそれはそうかもな」

「そ、そこは納得するんですね……」

「あぁ。だけど美紀さんは、まずその一日一日を大切に使うことから始めないと。僕は絶対に同行しないからな」

「じゃあ……私はひたすら勉強すればいいんですね」

「無論だな」

「……来週、模試があるんです。そこで志望校の判定が良かったら、一日だけデートしてください」

「D判定だ。それが最低ライン」

「……それ、私とデートしたくないって言っているようなもんですよ」

「別に美紀さんとデートしたくないなんてことはない。僕に懐いてくれる美人で健気な中学生なんて、金輪際現れないだろうしな」

「ふ、ふうぇっ⁉」


 美紀は驚きのあまり右の半身を後ろに下げて、手はおばけのような形をする。


「とりあえず、美紀さんは今日から勉強漬けだ。僕も協力する」

「……い、一年生の範囲からやったほうがいいですよね?」

「当たり前だ……。これから週に二、三回はやるんだから、その時間もたっぷりあるだろ?」

「そうですね!」

「今日とか行けそうか?」

「すみません……今日だけはお家で勉強できないんです……」

「親御さんがいらっしゃる日なのか?」

「いえ、ただお姉ちゃんが友人と遊びに出かけていないので……。それでやっぱり二人きりは社会的によくないかと……」

「なんだよ社会的って……」


 僕は少し美紀の容姿を見つめる。


『うん、客観的に見てもやっぱり美人だな。だとしても、親友の元カノの妹に危害を加えるわけないだろうよ……』


「まぁ、ちょっとだけ不健全かもしれないしな」

「……そうですか?」

「僕だって一端《いっぱし》の高校生だ。いつなにがあって理性が崩壊するか……い、いや、とにかく香織の言うことは真っ当だ」

「……ふーん。お姉ちゃんのことは香織って呼ぶんだ」

「なんせ同級生なもんでね」

「はぁ……私も俊さんと同級生だったらよかったのに」


 僕は少し顔を神妙な面持ちに持っていって、真面目な話題へと移る準備をする。


「昨日、トークで送ってきたやつ。あれはどういう意味だ」

「あれって言われてもどれのことか……」

「僕のことが割と好意的だ……なんだの言ってただろ?」

「あれは深夜テンションってやつです。忘れてください」

「全然深夜ではなかったと思うんだけどな……」


『深く考えるまでもなかったか。この子は中学生で、僕は高校生。全然立場だって生きている世界線だって違うんだ』

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