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紫電の救世主 〜蒼雷の使い手、努力の果てに最強の雷帝へ。相棒の黒炎を救う神速の一閃〜  作者: 九十九夜


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# 第15話 試作兵器、始動

「葵、律くん、聞こえるか」


 通信用の術具から、蒼真の声が響いた。


「例の『巨大な影』について、鹵獲した資料と捕虜の証言から分析が進んだ」


「何かわかったの?」


「ああ。……あれは、帝国の試作段階の魔導兵器らしい。まだ実戦投入には早いはずだったが」


 蒼真の声には、緊張が滲んでいた。


「恐らく、この戦況を打開するために、無理やり前線に出したんだろう」


「試作、段階……」


 葵はその言葉を反芻した。完成されていないということは、裏を返せば、まだ付け入る隙があるということだ。


---


 その直後、南の戦線から緊急の報せが届いた。


「魁様の戦区に、正体不明の巨大兵器が出現! 応戦中ですが、苦戦を強いられています!」


「魁さんが……!」


 葵と律は、すぐさま南へと駆けた。


 現場に到着すると、そこには想像を超える光景が広がっていた。


 鋼と魔力が異形に融合した、巨大な人型の兵器。魁が渾身の一撃を叩き込んでいるが、装甲にわずかな傷しかつかない。


「くそ……! 硬すぎる……!」


「魁さん!」


 葵が駆けつけると、魁は肩で息をしながら振り返った。


「葵、律……! 助かる。だが、こいつはこれまでの敵とは、明らかに違う」


---


 三人がかりで攻撃を仕掛けるが、兵器の装甲はびくともしなかった。


「先輩、光を集めます!」


 律の八咫光鏡が、兵器の弱点を探ろうと光線を走らせる。だが、増幅された光さえも、表面で乱反射するだけだった。


「これも……回路の歪みなのか?」


 葵は一縷の望みをかけ、紫電を纏った刀で兵器の中枢部らしき場所へ切り込んだ。


 だが――


「……通らない?」


 これまで、どんな敵の回路の歪みも見切ってきた葵の感覚が、この兵器に対しては全く機能しなかった。人の魔導回路とは根本的に異なる、無機質で歪な構造。そこには「正すべき歪み」すら存在しない。ただの、暴力のための機械だった。


「これは……人じゃない。人を模した、ただの兵器だ」


 葵は歯を食いしばった。紫電の本質が通じない相手。これまでとは違う種類の戦いだと、痛感させられた。


---


 それでも、三人は諦めなかった。


「魁さん、あの右腕の関節部、狙えますか?」


 蒼真からの通信で、装甲の継ぎ目という物理的な弱点が伝えられる。


「わかった!」


 魁が大剣を全力で叩き込み、律の光が着弾点を正確に照らし出す。そして、葵の紫電がその一点に集中する。


「はああああっ!」


 三つの力が重なった一撃が、ついに兵器の関節部を破壊した。


 バランスを崩した巨体が、大きく揺らぐ。


「今だ! 畳み掛けろ!」


 立て続けの猛攻に、兵器はついに機能を停止し、その場に崩れ落ちた。撃破ではなく、あくまで機能停止――試作品ゆえの脆さを晒しての撃退だった。


---


「……終わった、のか」


 魁が、荒い息を吐きながら剣を下ろした。


「試作品で、これか……。完成すれば、一体どうなる」


 葵は、崩れ落ちた兵器の残骸に歩み寄った。


 装甲の内側、剥き出しになった機構の奥に、小さな金属片が埋め込まれているのが見えた。丁寧な文字で、何かが刻まれている。


「……これは」


 葵はそれを拾い上げ、目を凝らした。


 『V. Volkner』


 その名を見た瞬間、葵の中で、ずっと燻っていた予感が確信へと変わっていった。


「ヴォルケナー……あなたは、一体何を……」


 崩れた鋼の残骸を前に、葵の呟きは、戦場の静寂に静かに溶けていった。

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