# 第14話 東部戦線、光と雷
撤退から数日。同盟軍は態勢の立て直しを図っていたが、帝国軍のサイボーグ部隊は勢いを緩めることなく、各戦線で猛攻を続けていた。
「雷帝様、東部戦線より緊急の報告です」
伝令兵が息を切らして駆け込んできた。
「光月律様のパーティが、機械化兵の大部隊に包囲されています。このままでは……!」
「律くんが……!」
葵は即座に立ち上がった。
「私が行く」
「葵、待て」
蒼真が地図を指しながら険しい表情を見せる。
「中央戦線も、まだ楽観できる状況じゃない」
「わかってる。だから――蒼真くん、結衣さん。中央は任せていい?」
葵の真剣な眼差しに、蒼真は少し驚いたように目を見開き、それから静かに頷いた。
「……ああ。君が思うように動け。ここは、僕らで持たせる」
「葵ちゃん、律くんのこと、お願いします」
結衣も力強く頷いた。
「ありがとう、二人とも」
葵は最小限の精鋭部隊を率い、東部戦線へと急行した。
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馬を駆りながら、葵の脳裏に律との日々が蘇る。
初めて出会った日の、どこか浮世離れした無表情。八咫光鏡の練習に行き詰まっていた放課後。「先輩の雷を、僕の鏡で通してみたいです」という、まっすぐな言葉。
あれから律は独り立ちし、それぞれの道を歩んできた。だが、あの光雷連携の感覚は、葵の中に今も鮮明に残っていた。
(待ってて、律くん)
葵は手綱を強く握り、馬を急がせた。
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東部戦線に到着すると、そこは既に凄惨な光景が広がっていた。
機械化兵の大群に包囲され、律のパーティは満身創痍で応戦を続けていた。八咫光鏡も、以前ほどの精彩を欠いている。
「くっ……! これ以上は……」
律が膝をつきかけたその時。
「――律くん!」
紫電を纏った一閃が、律を囲もうとしていた機械兵の群れを一瞬で薙ぎ払った。
「先輩……!」
律が驚愕の表情で振り返る。
「待たせたね、律くん」
葵は不敵に笑った。
「まだ、戦える?」
「……もちろんです」
律の顔に、力強い笑みが戻った。疲弊していたはずの身体に、確かな活力が蘇る。
「光を通します。先輩、合わせてください」
「うん――いつでも」
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八咫光鏡が六枚、律を中心に旋回する。葵は刀を構え、紫電を練り上げた。
「行きます!」
律の号令とともに、葵の紫電が刀身から放たれる。それは、かつてのように鏡に反射され、屈折し、幾重にも折り重なりながら、圧倒的な軌跡を描いていった。
だが、その精度は以前とは比較にならなかった。
律の光は迷いなく雷を導き、葵の紫電は寸分の狂いもなく敵の急所だけを正確に射抜いていく。互いの成長が、噛み合うようにして、かつてない威力を生み出していた。
「これが……僕らの、今の連携……!」
律が興奮した声を上げる。
紫電と光が織りなす閃光の乱舞が、機械化兵の大群を次々と沈黙させていく。半刻も経たぬうちに、包囲していた敵部隊は壊滅した。
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戦いの後、律は荒い息をつきながら、それでも晴れやかな表情を浮かべていた。
「先輩、ありがとうございました」
「律くんが頑張ったから、間に合ったんだよ」
「いえ……」
律は、少し照れたように鏡を抱え直した。
「先輩がいれば、僕はどこまでも強くなれる気がします。……それだけは、独り立ちしても変わりませんでした」
その言葉に、葵は温かい気持ちで胸が満たされるのを感じた。
「これからも、必要な時はいつでも呼んで」
「はい。……先輩も」
束の間の安堵に包まれる戦場。だが、葵がふと東の空に目をやると――
遠く、雲の切れ間に、これまで見たこともない巨大な影が、ゆっくりと蠢いているのが見えた。
「……あれは、何?」
葵の呟きに、律も同じ方向を見つめ、表情を強張らせた。
「先輩……あれは、只事じゃありません」
新たな脅威の予感が、静かに、しかし確実に、二人の間に広がっていった。




