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紫電の救世主 〜蒼雷の使い手、努力の果てに最強の雷帝へ。相棒の黒炎を救う神速の一閃〜  作者: 九十九夜


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# 第13話 戦線拡大

 三国同盟軍の編成が、瑞穂皇国国境沿いに完了していた。


 瑞穂皇国軍の指揮は、雷帝・葵。ノドリス軍は剣帝ガインの精鋭騎士団、ラグナリア軍は賢帝セレイアの魔導部隊が、それぞれ三方面の戦線に展開する。


「鳴依さんは北の戦線を、魁さんは南を頼みます」


 葵の指示に、鳴依が薙刀を担いで頷いた。


「承知しました。……葵、無理はしないでくださいね」


「わかってる」


 魁も大剣を肩に担ぎ、静かに頷く。


「俺の大剣、存分に使ってやる」


「私と結衣は、葵と一緒に中央戦線だ」


 蒼真が地図を広げながら言った。


「敵の主力は、恐らくここに集中する」


 結衣が扇を握りしめ、小さく息を吐いた。


「みんな、無事に……」


 誰もが、それぞれの持ち場で戦う覚悟を固めていた。


---


 開戦の狼煙が上がったのは、その日の未明だった。


「敵軍、視界に入りました……! ……なんだ、あれは!?」


 偵察兵の悲鳴じみた報告に、葵は前線へと駆けつけた。


 地平線を埋め尽くすヴァルハイト帝国軍。だが、これまでとは明らかに様相が違った。


 金属の身体を持つ兵士たち。人間の輪郭を保ちながらも、四肢の一部が機械化された異形の軍勢。


「サイボーグ化された兵士……! こんな規模、聞いたことがない……!」


 蒼真が驚愕の声を上げる。


「技術総監とかいう奴の差し金らしいぞ」


 伝令兵の一人が、青ざめた顔で報告した。


「ヴォルケナーとかいう、帝国の魔導開発局長が、この戦力を作り上げたと……」


 その名前を聞いた瞬間、葵の中で何かがざわついた。まだ何も確証はない。だが、煉の一件と、何か繋がっている予感がした。


---


「――行くぞ!」


 葵は紫電を纏った刀を構え、機械化兵の群れへと斬り込んだ。


 一閃、また一閃。紫電が閃くたびに、敵兵が次々と沈んでいく。


 だが、敵の数は尽きなかった。倒しても倒しても、次から次へと新たな部隊が押し寄せてくる。


「葵、後ろ!」


 結衣の警告に振り向くと、複数の機械兵が同時に襲いかかってきた。


「くっ……!」


 紫電で薙ぎ払うが、体力の消耗が着実に葵を蝕んでいく。


 中央戦線だけではない。北の鳴依、南の魁からも、次々と苦戦の報告が届いていた。


「このままでは、押し切られる……!」


 蒼真が険しい表情で戦況を分析する。


「一度、態勢を立て直す必要がある」


 葵は歯噛みしながらも、その判断を受け入れざるを得なかった。


「――撤退だ! 全軍、後退!」


 葵の号令とともに、同盟軍は苦渋の撤退を開始した。初戦は、辛勝どころか、明確な後退という結果に終わった。


---


 戦線を下げ、仮の陣営で息をついていた葵の元に、一通の緊急連絡が届いた。


「雷帝様、光月律様のパーティより連絡です」


 葵は急いで手紙を開いた。


『先輩、僕たちも東部戦線で交戦中です。厳しい状況ですが、必ず食い止めてみせます。――律』


 短いが、確かな決意の込められた文面だった。


「律くんも……戦ってるんだ」


 葵は手紙を握りしめ、静かに空を見上げた。


 鳴依も、魁も、蒼真も、結衣も、そして律も。それぞれの場所で、それぞれの戦いに身を投じている。


「これは、長い戦いになる」


 葵は自分自身に言い聞かせるように呟いた。


 世界大戦は、まだ始まったばかりだった。そして、その裏で蠢く「ヴォルケナー」という名前が、これから葵たちの運命を大きく揺さぶっていくことになる。

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