第63話 景香お姉ちゃんは知らなかったらしい
「ええっ、みんなメイド服を支給されているのー?!」
「あっ、景香お姉ちゃん知らなかったんだ、まだ貰ってないだけ?」
「小泉さんはバイトですから、でも野沢さんに言えば手配して頂けるかと」
しとしと振る雨の中、
メイド服に眼鏡な新メイド長、
凪さんの大きな傘と一緒に登校、隣は普通に自分で傘をさす景香お姉ちゃん。
(兼メイドは正社員だけの話か)
お給料が違うからね、
とはいえ景香お姉ちゃんも、
希望すれば貰えるのか、ということは大くんも?!
「ねえ涼一、メイドお姉ちゃんってどう?」
「またそんな属性つけようとして、学園祭とかに備えて?」
「メイドって立場なら、いつでも涼一の世話出来るじゃない!」
うーん、凪さんの話だと、
メイドって立場だと恋人より下がるんだけどな、
景香お姉ちゃんは僕を世話できれば何でも良いのか?
(いや、もちろんメイドの立場、からの~、っていうのもあるだろうけど)
そもそも元からみんな、
僕のお手伝いっていう立場なんだから、
メイド服になった所で、そこまで変化は……視覚的にあるか。
「うーん、友達を家に呼んだ時に、メイドですって紹介するのもなあ」
「涼一くん、メイドは自慢したくないのね」「というか、嘘をつきたくないというか」
「ねえ涼一、同級生でイトコがメイドって、言い辛い事なの?」「それ言ったら同棲が言い辛い」
あくまでも『お隣さん』ということで。
「涼一坊ちゃん、バイトのメイドも存在しますよ」
「メイドモードの凪さんきたこれ」「本日から本格的な授業、頑張って下さい」
「うん、帰って復習するときは教えて」「私のようなメイドでよろしければ、好きにお使い下さい」
中学時代、こんなメイドが居てくれたら……
さすがにちょっと危険な匂いがするとでもいうか、
メイドの概念が僕の中で揺らいで来そうだ、もはやメイドプレイ?
「ねえ涼一、男の子ってそんなにメイドさんに憧れるものなの?」
「いや全然、でもメイド喫茶とかあるし、テレビアニメでもメイドは人気あるからなあ」
「野沢さんにお願いすれば、オリジナルのもっと違ったメイド服も可能かと」「イチから造るのかぁ」
セクシーメイド服とかあるのかな、
でもそれだと凪さんが露出しちゃう、
火傷の痕が……そのあたり夏でも長袖なんだろうか。
「私がメイド、ねえ」
「日本の農家にメイドって、泥だらけになりそう」
「涼一が出て行った前の日みたいに?」「あれは、まあ」
事情を知らないからって、
嫌なことを思い出させるなぁ。
「小泉さん、ご学友では」「あっ涼一、またね」
仲良さそうにクラスメイトと合流、
あのメイドさん誰? とか聞かれているけど、
景香お姉ちゃんとは『お隣さん』て事になってるから変に説明はやめておこう。
「坊ちゃまは途中でご学友とは」
「3人とも方向が違うからね、でも帰りに揃ってどっか行く、は今後あるかも」
「そうですか、ではご学友と一緒に帰られている時は邪魔しないように」「あ、うん、そうだね」
それにしても雨の中の新メイド長、
眼鏡モードでほんっと見栄え良いなあ、
おそらくメイドとしては若くて美人で実際、頭脳明晰……
(溢れ出る気品というかオーラが半端ない)
しかもこんなメイドさんが、
何でもしてくれて何しても良いとか、
小学生の頃から世話してくれていたら恋に落ちてもおかしくないな。
「あの坊ちゃま、前に水たまりが」
「えっ?! おわっと、ありがとう」
「いえ、傘で誘導したつもりだったのですが」
つい凪さんに見惚れちゃって、
とかは言えないけれど、ほんっと良いな、
こんな婚約者、僕が釣り合うのかって話になってきちゃう。
「凪さんとしては、そのメイド服を着ることについては」
「必要に応じて着る必要があると判断したので、特に抵抗は」
「そうですか」「でも」「でも?」「坊ちゃんに喜んで頂けているのであれば、嬉しいです」
確かについこの間まで、
中学生の時まで見慣れた同じメイド服だけど、
その中身が、着る人がここまで華があると、そりゃあテンション上がるよ。
(Jリーグの観戦中も、隣でずっとスマホ弄ってるってこと無さそうだし!)
と過去の事例を思い出してみる。
いや、さすがにこの姿では連れて来たくはないな、
レプリカユニに長袖もあったはずだし、よし、ここは!
「VIP席へみんなで行く時、全員のユニ買ってあげたいな」
「りょ、坊ちゃまがですか」「それくらいは出させて欲しいかも」
「遠藤さんに言えば経費で出るかと」「僕の趣味に付き合わせるのに?」「保護者としてです」
まあチームの売り上げに貢献できるなら、
そのお金の出所が父さんでも構わないのかな、
僕のお小遣いだって、そもそも父さんの稼ぎなんだし。
(メールで相談してみるかな)
ちなみに親子の会話は、
LINEではなくメールが良いそうです。
「あっ、もう学校が見えた、このへんで」
「いえ、きちんと校庭に入られるまでは傘を」
「うーん、まあ後ろめたい事はないし、まあ、いっか」
とはいえ、
周囲にめっちゃ見られていた。




