裏4人目 野沢麗(22)の悲劇 私はこうして集団ストーカーにねらわれた!
「もう嫌ぁ〜、どうしてこうなっちゃったの〜……」
21歳の私、野沢麗は自宅に帰れず、
ネットカフェの個室で怯えていた、
家の周辺には、もうずっと『アイツら』が待ち構えている。
(私はただ、普通に夢を叶えようとしただけなのに……)
私は元々は声優になりたかった、
それで中学3年の時にオーディションを受け、
高校の3年間は部活のつもりで研修生をやっていた。
(そしてプロになった時のためにもと、始めたのが……)
女子高生コスプレイヤー兼配信主だった、
これが今にして思えば過ちだったのかも知れない、
引くほど投げ銭を貰えた私は、きっとプロとしてやって行けると。
(しかし現実は、甘くなかった)
研修生のままジュニア契約という『キープ枠』にも入れず期間終了、
結局、残った私はただ胸がでかい、下品な配信主というだけの存在に、
現実を思い知らされた私は、両親との約束もあり地味に、経理の専門学校へ進む事になった。
(でも、配信の一部ファンが、それを許してはくれなかった……)
初期に高校の制服で配信したのが不味かったのか、
身バレは早かった、ただプロの声優になる道だと、
私も父も母も弟も理解していてくれた、なのに、それなのに……
「結局は、結果的に沢山のストーカーを生み出してしまったわね」
そう呟いてため息を漏らす私、
これが実際にプロになれていれば、
ある意味、耐えられたというか、耐えていかなくてはいけない話なのだけれども。
(もう、普通の一般職でやって行きたいのに!)
私が配信主を引退すると、
投げ銭をしてくれていた視聴者を中心としたコミニティが、
どんどんと私の現在を特定して行った、そして家にまで押しかけてきた。
(警察に相談は、もちろんしているけれども……)
いくら地味な姿にした所で、
むしろそれが逆に良いだとか、
そういうキャラのコスプレですよねとか。
(いくら変えても、その胸は隠せませんね! とか)
実家には帰れなくなり、
安いアパートを転々としながら、
経理の専門学校を卒業後、普通に就職したのに……
(そこでも、つきまといは続いた、もう立派な集団ストーカーだわ)
会社にも多大な迷惑をかけている、
何より弟が病んで引きこもりになった、
両親にも迷惑をかけっ放し、この前も私あてにAVのオファーが来ていたらしい。
(そして、いま住んでいる場所もバレた……)
流石にこれ以上の引っ越しは金銭的にきつい、
何より絶えず周囲を警戒しながらの生活に限界を感じた、
早い段階で海外に逃げる手も、と思っても、もう色々と遅い。
♪~~~
(あれ、珍しい電話だ)
スマホを見ると、
発信元は『社長』だった。
「ついに〜、あぁついに〜」
社宅の女子寮にも迷惑をかけてしまった、
何より仕事中にも集団ストーカーは電話掛けてきたりもした、
さすがにもう、迷惑はかけられないわね、と覚悟を決めてスマホに出る。
「もしもし野沢クン、急な話で申し訳ないのだが」
「クビですよね〜?」「いや出向だ、場合によっては移籍を前提としてだが」
「はあ〜」「とにかく1度来てくれ、タクシーで構わん、代金はこっちで払う」
慌てて会社の社長室へ行くと、
そこには知らないおじさん、いえオジサマが!
社長に促されて名刺を交換する、て大きな総合商社の執行役員?!
「遠藤達保さん、ですか〜」
「彼は高校時代の同級生でな、話をしたら君を助けてくれるそうだ」
「野沢麗さん、話は伺っています、セキュリティが最高レベルのタワマンへ移住しましょう」
いきなりの話に、
私は戸惑ってしまう。
「で、でも〜、そんな家賃は〜」
「私が新しく独立する会社の寮と思っていただいて」
「あれ? タッチ、分割子会社とか言ってなかったか? ちなみにタッチは高校時代のあだ名な」「別動隊だコージ」
タワマン……
夢のようなお話!
「でも〜、お仕事は〜」
「引き続き経理で、あとここからは公私混同が入る」
「はっきり言うなぁタッチは」「その方が話が解りやすくて良いだろうコージ」
そして告げられた条件に、
私は深く深く悩むこととなった。
「……それは絶対、ですか〜?」
「形だけでも良い、君がその気にならなければ、それは息子のせいだ」
「……お断り、したら〜」「息子の件は無かったことにして大阪のタワマンで、仕事内容はほぼ同じだ、仕事は」
……大阪の方が、よりストーカーから逃げられる?
ううん、それよりも、私がいま、最も気に掛けているのが……
「あの〜,私もひとつ、公私混同が〜」
「なんだい、言ってみてくれ」「はい〜、弟の仕事先を〜」
「なんだ、そんなことか」「アルバイトで良いので〜」「わかった、交換条件だ」
うん、私はこの方に賭けてみよう、
迷惑をかけた社長さんがここまでしてくれたんだし、
何より……あのオジサマ、私の胸を、1度も見なかったのだから。
回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回
(息子さんは、見て直ぐに顔を逸らしてたけどね)
などと1年前の事を思い出していると……!
「ただいまー、野沢さん、涼一は、お友達とまだ勉強中?」
「あっ景香ちゃ〜ん、おかえり〜、もう終わるかも〜」
「そう、だったら6時になったら挨拶しようかな」「一緒に勉強したら〜?」「涼一とはそのつもりよ」
そう語ったセーラー服の少女こそが、
6人目にして大本命の、涼一の……従姉だった。




