第60話 芋は野菜で良いらしい
夕食は陽菜ちゃん曰く『一汁三菜』ということで、
ご飯にサラダはレタスの上にブロッコリーとヤングコーン、
メインディッシュの皿はサーモンのマリネ、そして和な器には肉じゃが、汁はワカメスープ。
(陽菜ちゃんによれば『大人のワカメスープ』だそうです!)
確かに味が濃い、
ともかく窓の外は雨が降る中、
みんなでの食事で僕がふと疑問を。
「芋って野菜ですよね?」
「涼一くん、芋は芋よ、でもこのジャガイモはナス科ね」
「さすが凪さん」「穀物デワ?」「ケイさん、芋って事で言うと?」
三大穀物では無いはず。
「リョーちゃん、根菜だから野菜で良いんじゃない?」「陽菜ちゃん、なるほど」
「でも~、芋は野菜かって聞かれると~、イモ類では~」「れいさん、凪さんが最初に言ってたことかぁ」
「ふふっ、ここは専門家に聞いてみたら?」「えみとさん確かに、ということで大農園出身の景香お姉ちゃん、答えをどうぞ!」
って、なぜかムクれている。
「私からしたら農作物は全部野菜みたいなものよ、そんなことより涼一」「はいっ」
「ずるいわ、私に内緒でボウリングへ行くなんて」「あっ」「私も行きたかったのにぃ」
「来てたらケイさん陽菜ちゃんコンビと僕&景香お姉ちゃんコンビの対決になってましたね」
ってジロリと見られちゃった。
「呼・ん・で!」「バイトは」
「4000万円さしあげますって電話だけだったわ」
「えっマジで?!」「だからまず40万円振り込んでくれって」「詐欺では」「詐欺よ!!」
これ全パティーンの電話番号試してかけてくるタイプのヤツだな。
「ねえ、ひょっとして私、小4の夏に何か嫌われるようなこと、した?」
「いやいや、景香お姉ちゃんは問題なかったかと」「じゃあやっぱり恥ずかしくなって」
「そ、そういうことにして良いけど、今ここで言うことかな」「だったらデート連れて行ってよー!」
すっかりハブられて怒ってる、
まあ高校生だからね、大人の余裕は無い、当たり前か。
「ええっと、土曜日にJリーグの試合が調布で」「それよ!」
「席は今回は僕の隣しか」「いつも空いてるの?」「うん、父さんの分があるから」
「来るんだ」「ううん、年間チケット買ってるけどめったには、母さんと一緒に観てた席をずっと守ってるんだって」
で、母さんの席は僕の席になりました、SSS席。
「もったいないわね」
「いつもは荷物置きかな、小学生時代は、保護者って事でたまにメイドに座って貰ったりはしてたけど」
「じゃあこれからは毎試合、私と」「栃木のチームはどうしたの」「あそこはどっちも、って言っていい?」「やめておこう」
何だかよくわからないけど嫌な予感がする。
「涼一くん、私も行きたいわ」
「うん、VIPルームを父さんにメールで頼むつもり、全員行けるなら日曜かな」
「HEYリョーイチ、そんなにeasyにとれるノ?」「申し込みが早ければ何とかするって」
今からなら夏かな、
平日ナイターなら5月でも行けるかもだけど。
「ショーとかあるのかしら?」
「陽菜ちゃん、たまにヒーローショーが、最近は歌手のライブとかが多いかな」
「やはり~、人は多いのでしょうか~」「れいさん、5万人収容だからね、少なくとも1万人以上は」
平日夜の天皇杯で相手がアマチュアとかなら5000人も行かないけど。
「ふふ、プロレス観戦くらい近いと良いわ」
「えみとさん、そもそもプロレスのリングとサッカーのピッチは大きさが」
とはいえプロレスのリングの大きさがよくわからない、
幼い頃に両国国技場で大相撲の溜席なら座らせて貰った事があるけど、
びっくりするくらい狭かった印象、記憶がある、まあプロレスはプロレスで楽しもう。
「それじゃあ涼一、今度の土曜は私で」「あっはい」「やりぃ」
了承しちゃった、
父さんの年パスでチケット譲渡サービス使わなきゃ、
他のみんなも今回に関しては何も言わないよね、多分。
「あっそうだ、『どの席でも使える招待券』あるから僕の近くの席をあと誰か」「涼一!」
「景香お姉ちゃん、そんな声を強めてどしたの」「今回は私と2人っきりで、ね?」「ええー」
「ね?」「うーん」「ねっ??」「まあ確かに今からで周囲が空いているか」「ねっっ?!?!」「は、はいっ」
押し切られちゃった。
「よろしい♪」
機嫌が治っちゃった。
「涼一くん、私と映像ミュージアムへ」「凪さんのそれも忘れてません」
「リョーイチ、2人でドッカ行きマSHOW!」「ケイさんともまた、いずれ」
「ねえ、リョーちゃんに『大人のデート』を教えてあげたいわ」「陽菜ちゃんが?!」
いや中身は25歳だ。
「涼一さ~ん、別荘があるって本当ですか~?」
「れいさん、箱根のあそこのことかな、あれってまだあるのかなあ?」
「ふふ」「えみとさん、プロレスの日程がはっきりしたら教えて下さい、で希望者はみんな行きましょう」
いやほんとデートの予定もぎっちぎちの予感、
これ本当に部活動とかやっている暇とか無いな、
もちろん勉強も塾に行かない分、やらないといけないし。
「あっ、れいさん、やってみたいことが」「なんでしょ~」
「Jリーグ試合当日、スタジアムの周囲に屋台とかキッチンカーがいっぱい出るんだけど」
「売り子とかでしょうか~」「ううん、弟の大君を野に放して、腹いっぱい食べさせたい!」
なんだかんだで彼が気になる。
「良いですが~、それ自体は喜ぶかも知れませんが~」
「何か問題でも」「試合は観ないで帰るかも~」「入場だけしてくれれば、あと早く行けば並びも少ないし」
「だったら構わないと思いますが~、涼一さんが~、大の食べる所とかを見たいのでしょうか~」「ううん、全然」
満足さえしてくれれば、
僕としては、そしてサポーターとしては、
それでもう十分、良いのですよ! 何なら飲食代を出したいくらいだ。
「わかりました~、聞いておきます~」
「それで涼一、土曜はどこ集合? 駅前?」
「いや集合も何も一緒に住んでいるんだから!」
あえて別々に出て、
待ち合わせしてデート気分にしたいのかな、
そんなの普通に一緒に出たら良いのに、あっそうだ!
「ファンクラブ会員が貰えるTシャツ、余ってるからあげるよ」「本当に?!」
「試合会場でたまに無料で(先着順で数に制限あり)貰えるユニもあげる、ってあれめっちゃ薄いから重ね着で」
「そんなに薄いの?」「向こうが透けて見えるくらい、昔はそこまでじゃなかったって父さんが」「ふうん」「なにその笑み」
さすがに下着にアレじゃあ出歩けないぞっと。




