第51話 やっと2人きりの登校、とはいかないらしい
「涼一、今日はゆっくり行こう♪」
「う、うん、まあ早めに出ちゃったからね」
「公園でも寄っちゃう?」「そんなのあったっけ」「探しましょ」
とまあ景香お姉ちゃん待望の、
ふたりっきりの登校、でもれいさんは、
来週には何らかの方法で一緒に登校するのだとか。
(変装でもするのかな?)
いや、あのお胸は隠しようが無いのでは。
ちゃっかり僕の腕を組んで肩にもたれかかっている景香お姉ちゃん、
これ完全にデートモードじゃないか、どう見ても単なるイトコ同士じゃないぞ?!
「景香お姉ちゃん」「なあに?」
「ここまでくっつくのは、まだ早いと思うんだ」
「えー」「まだ登校2日目だし」「他の生徒が見えるまで、ね?」
これ6年間の空白を埋めようと必死な感じだ、
今日は赤いリボン、ポニーテールが揺れている、
良い匂い、いきなり付き合って3年くらいの関係だ。
(小4の夏から、何事もなくずっと関係が続いていたとしたら……)
いや、そういう『もしも』は、やめておこう。
「公園じゃないけど土手はあるね」
「涼一、座ってちょっとお話でもする?」
「放課後ならまだしも、今日はちょっと寒いかな」
中学校時代、
正直、こういうのはまだ早い、
高校生になってからだと思ってたけど、入学即こうなるとは思ってもみなかった。
(ヘタレと言われても良い、明日から車通勤を考えよう)
ちょっと自販機でジュースを買う事で離れてみる。
「私、ミルクセーキ!」
「あー、栃木では買ってくれてたのに」
「東京では、涼一が買うのよ」「そうですか」
とやっていると……
「小泉さん!」「景香! 景香じゃないの!!」
「あっ、本間さん、ひろみちゃん!」「おはよう」「おっはよう!」
「涼一、同じクラスの本間志保ちゃんと、石原ひろみちゃん」
いかにもスポーツ女子って感じの2人だ。
「どうも初めまして、小泉景香さんの従弟の遠藤涼一です」
「へー、イトコなんだ」「確かに顔とかよーく見ると、そんな感じ」
「お隣さんなんだ~、だから一緒に登校」「お姉ちゃん過保護過ぎるから」
とまあ弟アピールを。
「でも小泉さんって栃木だったのよね?」
「一緒に状況してきたとか?」「ううん涼一はずっと東京」
「はい、栃木へは良く行って遊んで貰って、本当のお姉ちゃんみたいなイトコとして」
再度、近親アピール。
「そうなんだー、お隣さんってことは食事やお弁当を作って貰ってるとか?」
「一応、週に1回、勉強のために作ってくれるみたいです、昨日入学だからまだだけど」
「それ以外の日は?」「ウチにはお手伝いさんが居まして」「そうなんだ」「本当は毎日作っても良いんだけどね」
と本間さんに話す景香お姉ちゃん、
歩きながら今度は石原さんが話し掛けてきた。
「遠藤くんはスポーツとかやるの?」
「Jリーグを観戦には行くけど、自分でするのは」
「そうなんだー、私はバレーやってるんだ」「背が高いですもんね」
景香お姉ちゃんも実はそこそこ高い、同学年にしては。
「本間さんはソフトボールなのよね」
「うん、小泉さんは中学は陸上だっけ」「色々と掛け持ちも」
「でもこっちだとバイトって言ってたよね、もったいない」「助っ人なら行けるかも」
もう友人にそんな所まで話してるんだ、
逆に部活に誘われたから教えたのかな。
(これで僕が本当に恋人だったら、バイト代わるから部活行ってきな、とか言う所なんだけど)
まだそこまで親密じゃない、
いやもちろん婚約者ではあるのだけれども。
あっそうだ、今のうちに、というか今だからこそ!
「景香お姉ちゃん」「なあに涼一」
「せっかく方向が同じなら、これから本間さん石原さんと登校したら?」
「それ良いわね、小泉さん」「景香、弟くんがこう言ってくれてるんだし」「ええぇぇぇ」
何そんなハシゴ外されたみたいな顔して!
やっと2人きりの登校なのに、って感じかな、
そうはいかないのですよ、ええ、景香お姉ちゃんは急ぎ過ぎなのです。
「じゃあ僕は先に学校へ行ってるから、じゃっ!」
「あっ逃げた! んもう涼一ったら」「恥ずかしいんじゃない?」
「中学の時も弟にべったりのクラスメイトいたわ、それ思い出したわー」
ということで今回は回避?
いやこれには少しだけ理由があって、
まあそれは過去のトラウマにもちょっと関係がある。
(もう大丈夫とは思うんだけど、ね)
ただ、さすがに毎日逃げるのは、可哀想かなあっと。




