裏 第一章 6人目 小泉景香の感想 大家族という労働からの脱出、そして私は大手を振って恋をする
「ほんっっっと、自由って最高だわ」
壁に掛けた高校の制服を見て、
喜びに打ち震えている私……東京に来て良かった、
もう早朝から毎日、様々な手伝いをしなくても良い!
(食事の準備も基本的には土曜だけ、それ以外はやるやらない自由!)
もう敷地内だからってトラックの運転させられたり、
弟たちがトマトを投げぶつけ合っているのを止めたり、
台風の日に田んぼの様子を観に行かされたりしなくても良い!
「何よりこのプライベート空間、最高!」
勝手に兄弟に侵入されたり、
ふすまの隙間から、じーーーーっと見られてたり、
少女漫画が必ずどこかの巻、抜けてたりとかしないもの!
(鍵がかかる、ただそれだけで嬉しい)
しかも隣の部屋は婚約者、
大手を振って恋をする事ができる、
もう邪魔する者は何もない、ライバルは居るけど!
「でも、みんなおばさんじゃないのよ……」
密閉された部屋だからって、
あえてこんなことも口に出して言える、
この解放感! 今ここで全裸になっても誰にも覗かれない!!
(だからって涼一のお風呂に突入したのは、やり過ぎだったわね……)
丸瀬さんに怒られちゃったっけ、
いやちゃんとバスタオル捲いていたから!
ちょーっと親密になろうとしただけ、6年前に比べたら気を使っている方だったのに。
「いいの、明日から一緒の学校なんだから!」
大農園という休みの無い環境、
大家族という兄弟からの呪縛から解放され、
大好きな涼一くんとの高校生活がスタートする!
(しかも、学校から早く帰ってちょっと電話番するだけで、月40万円のお小遣いが!)
平日毎日だから涼一と一緒の下校は難しいかもだけれど、
逆に登校は毎日出来る、いっそ腕を組んじゃおうかしら?
私と涼一だけの時間、これだけでおばさん達より絶対的優位に立てるわ!
「ほんっと、兄弟のおもりはうんざりだったわ」
誕生日プレゼントもどれもこれもセンス無いし!
いやね、実の兄弟というのは好きとか嫌いとかいうレベルじゃないのはわかっている、
でも『逃れられて、清々した』というのが正直な気持ち、ほんっと義理のお姉さん達には感謝だわ。
(これからは、涼一のためだけに働けば良い……)
ただひとつだけ想定外なことが、
涼一のお弁当を毎日作ってあげたいのに、
私の食事当番は土曜日、つまりお弁当を作らせて貰えない!
「これに関しては、要交渉よね」
たまにお昼だけでも作らさせて貰う、
涼一との仲が進めば昼食は私の担当になる可能性も!
やっぱり恋は『胃袋を掴む』のが一番だって少女漫画でも学んだし。
(同じクラスになるのを祈るばかりだわ)
涼一のお父さんなら、
それくらいの権力があってもおかしくない、
ウチの実家の農園、その事実上のオーナーって話だし!
「高校にそれくらい寄付してても、おかしくないかも」
さすがに妄想が行き過ぎかしら、
本当なら今日から一緒のベッドで起きたい所だったけど、
さすがにそれは早すぎるみたい、弟は幼い頃、隙あらば布団に入り込もうとしてたのに。
(あくまでも従弟、でも、結婚できる姉と弟……)
兄さんが血の濃さとか脅してきてたけど、
この世の中にどれだけ多くの『いとこ婚』があると思っているのよ、
正式に法的に許された、可愛い従弟との結婚だっていうのに、もう!
「あぁ、涼一……早く涼一を、姉弟や従弟よりも深い関係にしたい!!」
私をあの農園から解放してくれて、
欲しいものをこんなにも与えてくれた涼一、
今度は涼一に私の全てを、って私が涼一を欲しい!!
(もう抑えが効かないかも?)
学校でも行き過ぎないように注意しなくちゃ、
でも隣の机なんかになっちゃったら、もう、私は……
ドキドキして眠れない、いっそ涼一の居ない部屋で寝ちゃう?!
「って、実家で私の部屋に戻ったら弟が寝てたの思い出しちゃったわ」
しかも私の布団の中で……
さすがにそれは引くわね、でも気付かれなかったら?
きょ、今日はまだ我慢、まだ再会して4日なんだし、もうちょっと、ね?
(ほんっと、私、この日を待っていたんだなぁ……)
明るい未来しか、
もう私には見えない。




