裏 第一章 5人目 橋本園美渡の感想 うっすらとした覚悟が今、現実になっている
「ふう、眠る前のヨガは落ち着くわ」
ベッドの上で身体をほぐした私、
明日も早く起きてジョギングをするために眠らないと、
そう思いつつも婚約者である遠藤涼一くんのことを考える私。
(ほんっとうに、私は売られて来たのね……)
こういう可能性をまったく考えて居なかった訳じゃない、
工場の経営は私が物心ついたあたりから『厳しい、厳しい』言われていて、
いつ傾いてもおかしくない、ただパパや職人の維持とプライド、あとバブル期の貯金でなんとか持っていると。
「豪華な屋敷もバブル期に建てたもの、ただ、高価なものはかなり前に売ったらしいわ」
大きな壺も綺麗な絵画も、
写真でしか見たことが無いうえ、
設備の老朽化でお金はかかる一方。
(パパが冗談で『お前を売るようになったらいよいよだ』とか言ってたのは、笑い話じゃなかった)
実際には売る前に自ら夫婦で責任を取ろうとして、
結局、私は自らの意思で売られて工場は助かった、
ほぼリニューアル、人手不足も東南アジアからの研修生? で一気に解決できた。
「うっすらと覚悟はしていたわ、私が売られるの」
姉が海外でダンサーになりたいと渡米したとき、
そうなると工場としての『いざというときの』売れる財産は、
必然的に私となる、もちろん姉が大成功を収めれば……それはまあ、宝くじと一緒、あてにはならない。
(そして私は、現実にこうして売られた)
どんな汚い金持ちの老人に売られるのかと思いきや、
何の事はない普通の紳士にその独り息子である高校生、
悪くは無い、売られた先としてはむしろ、チョロい、まである。
「ただし、同じような境遇のライバルが5人、まさにサバイバル……うーん」
実家が埼玉のメガバンクから借りた莫大な借金、
3年間はほぼ無利子、このあたりのからくりは遠藤さんの管轄というか、
発生しても遠藤さんの方で立て替えてくれている、そして3年後には利息が払える状況になっている、はず。
(ただ、その借金を一気に解決する方法が、私の肩にかかっている)
それは涼一君と結婚すること、
もしそうなれば血で完全に繋がるため、
借金に関しては遠藤さんが事実上、全て肩代わりしてくれるらしい。
「正確には借金分の資金提供ね、遠藤さん自身の」
聞けば総合商社時代、
執行役員として一晩で150億円動かした事もある敏腕ビジネスマン、
今は身軽になって世界中で日本との懸け橋になる仕事をしている隠れた大富豪。
(私が涼一君を射とめれば、パパもママも楽になる、お姉ちゃんだってお金さえあれば)
すでに私の仕送りで本当に助かっているらしく、
オーディションを受けまくりつつ色々と動いている、
アメリカは広い、お金もかかる、それを私は毎月30万円で支援している。
「お金のため、私は売られてさらにその相手をもぎ取とうとしてる……それの何が悪いのかしら?」
むしろ真っ先にお金目当て、
実家の工場と姉の夢のためって理由があるのは、
はっきりしていて良いわ、もちろん涼一君に言える事じゃないうけど。
(それでお互いが幸せになれば、何の問題も無いじゃないのよ)
いかも趣味のポールダンスも好きに出来る、
実際に結婚出来れば私もセレブの仲間入り、
夫を愛しつつ私は豊富な資金でもっと色々なことが出来る。
「夢のようなチャンス、6人で競う席はたった1つ……ふふ、負けられないわね」
確かに私は工場存続のため、
パパとママの命を助ける引き換えに売られた、
でもその売られた娘が不幸になるとは限らない、むしろ自分で幸せを掴める。
(もし、誰も涼一君と結婚したがらなければ、私がする契約……)
私にはむしろ嬉しいけど、
ここまでの4日間のライバルを見ると、
みんな乗り気だったわね、15歳なんで自分で好きに、自由に再教育できるもの。
「パパもママも応援してくれている、涼一君を『工場に持って帰る』くらいの気持ちで……ふふっ、嫁に出たのにね」
幸いなことに攻略のチャンスは均等に与えられる、
1人の高校生を6人で奪い合うのはなかなか修羅場だわ、
しかも、おかしなことをすれば退場させられる審判付き……
(でも、抱いちゃいけないってルールは、無い)
誰が一番最初に関係を結べるか、
けん制し合って、もしくは涼一君の意思で、
3年間誰とも、という可能性もあるけれども、逆に……
「男性経験の無い私が、どこまでついて行けるのかしら」
不安は尽きないけれど、
疲れた体がもうそろそろ寝ましょうと言っている、
頑張って涼一君を手に入れて、尻に敷いて幸せになる未来を夢見ながら眠りましょう。
(ありがとう、私を買ってくれて……)
こういう幸せもある、
という結論にするために、
私はこの恋のサバイバルに勝たなくちゃ。
「ふふ、我ながら……吹っ切れているわね」




