第42話 いよいよ明日から高校入学らしい
「ふう、完全に1人だ」
パーティーの後、
入学式の準備をして、
それを持って降りてきた29階、僕のプライベートルーム。
(ここは僕が呼ばない限り、誰も来ない)
一応は寝坊した時のため、
時間になっても連絡なければ、
れいさんがここに突入する事になっている、が、それは避けたい。
「ここのお風呂、初めて入ったよ」
さすがにこっちの掃除は僕が自分でやらないと、
でも今は、今夜は誰にも邪魔されずに寝てしまおう、
こういった時のための避難ルームだ、きちんとぐっすり眠るためにも。
(……これから3年間、やっぱこっちで1人で生活します、って言ったらどうなるんだろ)
そうなれば父さんが、
婚約者を総取っ換えしそうだ、
栃木から引っ越してきたばかりの景香お姉ちゃんとか可哀想なことになる。
「婚約者、かあ」
明日の高校入学を前に整理しよう、
僕の置かれている立場、そしてこれからについて……
そういえば入学式、母親代わりって誰が来るんだろう、まあそれは置いといて。
「僕に母性を、姉を、恋人を、かあ」
小4夏休みの『あの』事件以来、
僕は亡き母の双子の姉が居る小泉家と絶縁し、
母親代わりが居なくなった、父はその立場をメイドで埋めようとした。
(しかし、父の望む『母親代わり』と、メイド長の捉え方はまるで違った)
おそらく感情的、
言い過ぎれば愛情的な意味で母親みたいに僕に接しさせたかった父と、
金持ちの坊ちゃんに悪い偏見があり、あくまで事務的な面でしか母親代わりをしなかったメイド長。
(事実を知って、父さんはショックだったらしいけど、僕はそこまで寂しかったり嫌だったりはしなかった)
そこで僕が高校入学するのに合わせて、
慌てて準備して揃えた僕の婚約者たち6人、
みんな『母であり姉であり恋人』で居るための存在らしい。
「まずは田中凪さん、とんでもない美人才女……」
インテリで女社長、なんで僕の所なんかに、
と思ったら全身に酷い火傷がある訳アリだそうだ、
しかも元婚約者が居て、ということは相当な事情が……
(でも、僕にはそんな事は関係ない、はず)
落ち着いた、
大人過ぎる感じが眩しい、
デートに博物館とか美術館とか欲する相手に僕がついて行けるかどうか。
「次に佐藤ケイさん、ハーフで健康的なお姉さん……」
おしゃべり好きだけあって飽きさせてくれない、
あきらかにキャラ作ってる喋り方はちょっとアレだけど、
夜のお店のトークテクニックが身に沁みついているんだろうね。
(ああいうのが彼女だったら、毎日が楽しいだろうなあ)
男性経験とかどうなんだろうか、
夜の接客業っていうことは、そういう事も……
もうその仕事を辞めているのであれば、関係ないか。
「最年長は丸瀬陽菜ちゃん、どう見ても小3・4年生だよね」
いきなり補導されそうになっててびっくりしたけど、
中身はバイク乗りの健全な、そして大人なお姉さんだ、
いや、ヒーローショー好きとか怪獣着ぐるみパジャマとか子供っぽい面もあるけど!
(でも、6人の婚約者では、一番しっかりしている感じ)
おそらく本当に困った事があれば、
相談すべき相手は彼女なんだと思う、
とはいえ10歳差の重みは、3年かけて考える事ではある。
「一番といえば、胸が一番大きいのが、野沢麗さん……」
あの爆乳はとんでもない、
高校生になる僕でも男の人生を狂わせる破壊力なのはわかる、
その結果がストーカー被害を受けるはめになったのも頷けてしまう。
(弟さんにまで、その被害が及んでるんだっけ)
彼女を救うという事を考えれば、
もう結婚しちゃうのが一番の近道かも知れない、
でも理由がそれで良いかというと、僕は嫌だ、ただアニメ・ゲーム好きは気が合いそう。
「あとお尻が一番大きいのが橋本園美渡さん……」
21歳なのにあのアダルトな感じは見ていて震えるレベル、
妖艶な色香っていうのは、えみとさんみたいなのを言うんだろう、
ポールダンスはスポーツ競技と言われても、あのセクシーさは否定しようがない。
(工場再建のために犠牲になった、でいいんだっけ?)
僕の父さんの口利きでメガバンクから融資が貰えて、
工場の機械が新しくなって、海外からの労働者もその融資からかな?
ただ、そのために僕の所へドナドナされて来た事実があるなら、ちょっと抵抗あるかも。
「そして約6年ぶりに再会した、小泉景香お姉ちゃん……」
物心ついた時から学校の長期休みのたびに、
栃木まで連れて行かれて一緒に過ごしていた幼馴染、
小4夏までは本当の姉弟いやそれ以上の関係性だった。
(まさか婚約者だったなんてねぇ)
ただ、とんでもないネックがある事は誰にも言えない、
もちろんイトコ同士、血の濃さというネックも別であるが、
素直にお嫁に貰える気がしない、そう、あの事件のせいで……。
「みんな、ほんっとにヤベエお姉ちゃんたちだ」
6人の婚約者と過ごす3年間の高校生活、
相手はいつでもチェンジ出来ると父さんに言われたし、
すでに追加ように1部屋空けられている、でも、僕は……
(この状況、嬉しいんだろうか?)
押し付けられているとも取れるし、
本当は得るはずだった物を貰えるとも言える、
全ては僕次第だ、何せ僕が婚約者に嫌われる可能性だって十分ある。
「まあ、明日からの、高校入学からかな」
彼女達が、ヤベエお姉ちゃん達が、
それぞれ何を思って今、過ごしてるかはわからない、
ただ、みんな幸せになって欲しいとは思う、そのために僕は……
(……最終的に、誰を選ぶんだろう?)
その選択のための、
長い長い高校生活が、
ついに明日……始まる。
<第2章へ続く>




