第33話 山盛り朝ごはんはデフォらしい
「お帰りなさい、ってジョギングって格好じゃないわね」
「ただいま景香お姉ちゃん、ちょっと陽菜ちゃんと早朝から映画を」
「さくっとデートしてきたわ、リョーちゃん、ずっと私の手を握ってくれて」
いやそんなマウント取りに行かないで!
エプロン姿の景香お姉ちゃんの表情が少し曇っちゃった。
「そう……あのね、私、起きた時……ううんいいの、朝食出来ているわよ」
ダイニングへ向かう景香お姉ちゃん、
昨日プレゼントしたピンクの大きいリボンで、
ポニーテールを結んで……なんだろう、ちょっと胸が痛む。
「リョーちゃん、キョーちゃんが何を言いたかったかわかる?」
「うーん、起きた時、キスしたかったとか?」「えっもうしたの?!」
「してないしてない、僕ってキス自体、まだ」「そう、じゃあ早い者勝ちね」「いや言い方!」
食卓に到着すると、
みんなもう待ってくれていた、
LINEで今から帰りますって伝えてあったからね。
「涼一くんおはよう」「うん、おはよう、凪さん」
「ベッドで言いたかったわ」「いやその、あはははは」
「景香ちゃんも、起きて最初に涼一くんを見たかったって」「田中さん!」
お姉ちゃん焦ってる、
そっか、言いたかった事ってそれかな、
でもまあ、もう誕生日終わったし、サービス期間は終了ってことで。
(向こうとしては、添い寝っていうサービスをしたつもりだったりして)
逆に眠れなかったっていう。
まあ、まったくの『ありがた迷惑』では無いけれども!
そして僕にほかほか御飯が盛られる、って山盛りだなこれ!!
「景香ちゃん、これって」
「男の子ってこれくらい食べるでしょ?」
「小泉家では普通なんだ」「というか常識よ」
ちょ、そんなの持ち込まないで!
まあ食べるけど、おかずは野菜炒めかぁ、肉どこ?!
「涼一くん、これは私が作った豚の角煮よ」
「あっ美味しそう、ありがとう凪さん、別皿かぁ」
「ご飯のおかわりはどんどん言ってね、では、いただきまぁ~す!」
景香お姉ちゃんの言葉にみんな食べ始める、
朝食は僕を添い寝した2人で作ってくれたのか、
これはある意味、疑似新婚初夜明けとでもいうか、いや何もしてないから!
(でも、僕が選ぶ相手を2人にまで絞らせたかったのかなあ)
そのための共闘とでも言うか、
確か父さんの話だと足の引っ張り合いは駄目だと、
だからといって協力するのは駄目とは言ってなかったよね、むしろ婚約者同士、仲良くしろみたいな。
(仕事関係の面もあるんだろうな)
ただ、僕が選べるのは、たったの1人だ。
「それにしても、もやしが多いね」
「大家族だと、どうしてもそうなっちゃうみたい」
「いやそれ小泉家の基準では」「そうかなあ、近所も結構こうみたいよ」
栃木のね。
いや、変な偏見持たせないで!
「そういえば~、そんなアイドルアニメありましたね~」
「れいさん?!」「うっうー!」「何ですかその鳥の鳴き声みたいな」
「アイドルキャラです~、もやし大好きな女の子で~、大家族設定です~」
有名なのかな、
僕は知らないけど。
「HEYリョーイチ、昨日はお世話係なのにあんまりお世話できなくてSorry」
「いえケイさん、十分ですよ」「なので、お世話係とは別に『添い寝係』を新設しまSHOW! オッケー?」
「大丈夫です、逆に緊張して眠れないってわかったので、朝ごはん終わったら二度寝します」「では熟睡してから添い寝シマース」「いいですから」
映画館では意外とうとうとしなかったな、
おそらく朝食でお腹がいっぱいになったら眠気に襲われるはず。
「では涼一くん、午後からデートしない? 映像ミュージアム」「あっ、凪さん行きたがっていましたからね」
「リョーイチ、一緒にお部屋でポテチと謎コーラでダラダラ過ごすのも良いデス!」「謎コーラって、でもそれはそれで良さそう」
「ねえリョーちゃん、今日のリョーちゃん係は私なんだから、このあとお買い物デートも良くない?」「陽菜ちゃんと引き続きかあ」
今日見た女児アニメのグッズ買わされそう。
「あの~、涼一さんと~、カラオケボックスに行きたいです~」「れいさんの歌声は、確かに聞いてみたい」
「ふふ、私と下町散策しましょう、おやつにお好み焼きとか、もんじゃ焼きとか食べて」「それも、そそられるなぁ」
「涼一、あのね私、スイーツバイキングのお店に行ってみたい」「あっ、今度は食べ放題かあ」「いま、苺フェアですって」
6人の婚約者に、
それぞれデートのお誘いを受けた、
ここは誰を選ぶべきか、これって今、チョイスした方が良いよね?
「うーーーん……」
「涼一くん」「リョーイチ!」「リョーちゃん」
「涼一さ~ん」「ふふっ、涼一君」「涼一、一緒に行こう?」
山盛り御飯を見つめながら、
僕が選んだお相手は……!!!




