第32話 早朝デートの選択肢のひとつらしい
(うう、全然眠れなかった……)
凪さんと景香お姉ちゃんに挟まれて、
どっちを向いてもどっちかの顔と合ってしまい、
上を向くと左右から見られているようで気になった。
(寝てるよね? と思ったら目が開いて怖かったり)
幼い頃と違って、
やっぱり視線が気になってしまう、
目を瞑っても胸の鼓動がドクドク言って眠れなかった。
(今って時間は……まあいいや、もう起きちゃえ)
とりあえずベッドから抜け出す、
潜って下から……変に起き上がると起こしちゃいそう、
まさに脱出という感じで足元からするりと、そしてそーっと部屋の外へ。
「……ふう、居間に到着っと」
時計を見ると午前4時20分、はやっ!
いかに土曜でもこの時間に出来る事ってなんだろ、
いや、いっそここのソファーで寝てしまおうか、って誰か来た?!
「あらリョーちゃん、おはよ」
「陽菜ちゃんおはよう、ちょっと、いや、あんまり眠れなかった」
「どうして?」「ベッドに凪さんと景香お姉ちゃんが」「あー、挟まれちゃったのね」
いやまあ、別に何かされた訳じゃないけど。
「あれも夜這いっていうのかな」
「徐々に、女性に慣れさせたかったのかもね」
「どうしよう」「別の部屋があるんでしょ?」「あっそうか」
29階で今から寝なおそうか。
「でも、もう眠くないかも」
「じゃあ今からどうするの?」
「どうしよう」「……大丈夫?」「多分」
ちゃんと眠れてないから寝ぼけてるのかな。
「私も早く目が醒めちゃったの」「ど、どうして」
「ほら、今日ってリョーちゃん当番だから」「あっそうか」
「それでお水でも飲もうと思ったらリョーちゃんが」「うーん、陽菜ちゃんと2人で……何かする?」
笑顔になって両手を合わせる陽菜ちゃん。
「じゃ、デートに行きましょ」
「えっ今から?!」「この時間だからこそよ」
「このタワマンの、24時間やっている施設とか?」「外よ」
またジョギングとか?!
「うーん、今日は走るのはちょっと」
「歩いて間に合うわよ」「えっ」「着替えて来て」
「う、うん、って凪さん達が起きちゃったらどうしよう」「そーっとね、私も着替えてくるわ」
一旦部屋に戻る、
音を立てないように……
そしてこっそりウォークインクローゼットへ。
(デートって言ってたよね?)
ここは灯りつけても大丈夫だよな、
一応、外出着に……よし、あとは戻って財布とスマホと入構証を手にして、
いやほんとスヤスヤ眠っているな、凪さんと景香お姉ちゃん、このまま抱き合いそう。
(間に僕が居ると思って眠ってるんだろうなぁ)
再度、居間へ行くと陽菜ちゃんはまだだ、
女の子だから時間がかかるのかな25歳だし、
とか思ってたら結構、可愛らしい格好でやってきた。
「おまたせ~♪」
「あっ、デートみたい」
「デートよ」「はい、じゃあ」「行きましょ」
手繋ぎでマンションのエレベーターへ、
今日はちゃんと1階で降りるみたいだね、
さすがにあのバイクで2人乗りは無理だろうから……
「この時間帯、穴場なのよねー」
「何のですか、ていうかどこへ?」
「行けばわかるわ、ちょっと歩くけど」
エントランスのロビーは、
こんな時間でも警備員さんが居る、
さすが高級タワマン、そして外へ、今日は寒い。
「リョーちゃん、昨夜、軽く雨が降ったみたいよ」
「えっ、あっほんとだ路面が濡れてる」「さあ、こっちよ」
「職務質問とかされませんよね?」「免許書持ってきているから」
という感じで街灯を目印に、
歩き続けること十数分かな?
到着した建物は、商業施設だ。
「あー、ここは」
「映画館よ、土日は朝5時から」
「観たい映画あるんですか」「リョーちゃんとね」
そっか、こんな時間でも、
こういうデートの選択肢もあるのか。
「えっとじゃあ僕は学生料金で」
「観る映画はこれよ」「えっ?!」
「春といえば、この映画!」「アニメですよね、しかも……」
ということで、
一緒にニチアサの『魔法少女バトル系アニメ映画』を観たのでした、
いやあ、まさか土曜朝にプリ●ュアを観るデートをするとは……陽菜ちゃん大喜びだし、まあいっか。
(ずっと手繋ぎで観ていました!)
そして映画が終わってロビーで感想会。
「まさかあそこであのプリ●ュアが出てくるなんてねえ」
「ていうか、こんな時間でも子供が結構居ましたね、いいのかな」
「逆に言えば大人も落ち着いて観られる時間よ」「まあ確かに」「ふふっ」
すっごい笑顔だ。
「ご機嫌ですね」
「だってリョーちゃんとデート出来たのだもの」
「いやそんなに喜ばなくても」「で、この後どうする?」
いや、どうするも何も。
「帰って朝ごはんを」
「わかったわ、食卓でみんなに自慢しちゃお~♪」
「ちょ、それは」「まだグッズ売ってる時間じゃなくて残念だわ~」
いや陽菜ちゃん、
ノリが完全に幼女なんですがー!!




