第30話 お誕生日会なのに微妙な表情だったらしい
「ふう、お腹いっぱい」
夕食は景香お姉ちゃんの誕生日パーティーだった、
大きなホールケーキは景香お姉ちゃん史上最大だったらしい、
あと食事はちゃんこ鍋でした、昼前にさんざんパイ食べた僕には助かった。
(ひょっとして、ケーキでお腹いっぱいになるのを見越して?!)
大鍋から好きなだけちゃんこをよそうシステムなので、
胃のキャパシティをケーキに振り分けられて助かったというか、
みんなも昼に僕が持って来たお土産パイを食べたはずなのに、もりもりと。
(女性は甘いものは別腹っていうからね!)
あと女性陣も景香お姉ちゃんに、
個別の誕生日プレゼントを渡してたけど、
学校用品やお化粧用品とかだった、普通に喜んでた。
「僕の誕生日、あんな風に祝って貰えるかなあ」
いやね僕の場合はタイミングが悪いんですよ、
何せ誕生日というのがですね、よりにもよって12月にじゅ……
コンコンッ
「はいっ?!」
「リョーちゃん、いいかしら」
「HEYリョーイチ、Open the Door!」
陽菜ちゃん&ケイさん、夕食直後に何だろう、
まさか2人して僕をお風呂に入れて洗いたいとか?
ってどこの大型犬だよ僕はゴールデンレトリバーじゃないぞっと。
「はいはい、どうしました」
「んー、とりあえず入ってもいい?」「何もしなければ」
「ダイ・ジョーブ! Just the tip!」「どういう意味ですか、まあどうぞ」
なぜか陽菜ちゃんは部屋に入れる抵抗が無い、
飼い猫がぬるっと入ってくるような感覚かな、
ケイさんの方はちょっと緊張する、これから何が始まるんだって感じの。
「じゃあ失礼して」「excuse me for disturbing」
「適当な所に座って下さい」「じゃあベッドに、んしょ」
「リョーイチがMEの膝枕に寝てクダサーイ」「なんでぇー?!」
まあいいや。
「リョーちゃん、なんだか誕生日パーティーのとき、微妙な顔してたけど」
「えっほんとにい?!」「ヨバレタ忘年会で知り合いが1人も居ない状況みたいなfaceダッタヨ!」
「いやそれどんなシチュエーションなんですか」「NoNoNo、Situation!」「発音はどうでもいいですから」
でもまあ、心ここに在らずって顔はしてたかも。
「でリョーちゃん、何を考えてたの?」
「ええっと、夕食前に、れいさんやえみとさんにも相談したんですが、
僕に対してあまりにぐいぐい来過ぎて、焦ってるのか生き急いでいるのか、距離を詰められ過ぎて困っています」
誕生日パーティーのときも、
隙あらば僕に絡みついてきていた、
なので少し距離を取ったりして、その時の表情が気になったのだろう。
「若いからねー、キョーちゃんまだ16歳ですもの」
「男の人って密着すると喜ばれるって夜のお店で教えられましタ、feverするッテ」
「いやまあ、景香お姉ちゃんも家族の呪縛、農家の娘って立場から解放されてハイなのはわかるけど、うーん」
陽菜ちゃんが僕の頭を撫でてくれる。
「これは推測だけど、まずリョーちゃんが、そういうのに慣れてない」
「誕生日会ですか」「女の子によ、まあ急に婚約者6人出来て戸惑ってるんでしょ、その延長線上ね」
「言われてみれば、確かに」「ただ、私の見た感じだと、キョーちゃんだからっていうのが大きいわね」
そこは、あまり突っ込まれたくない。
(ていうか鋭いな、さすが25歳)
この瞬間だけお姉さんな表情をしている。
「まあ、従姉ですから」
「んー、考えられるのは2つ、おケイさん、わかる?」
「ワカリマセーン!」「面倒くさくて逃げたわね」「真面目に答えても多分、間違ってるでしょ」
あっ、ケイさんのマジトーンが聞けた!
「多分これは違うと思うけど、『従姉』と結婚するっていう重圧、すなわち」
「Bloodデスネー」「そう、イトコ婚は血が濃くなってリスクがある、それをリョーちゃんが怖がっているか」
「まあそれは、まったく気にならない訳じゃないけど」「でも実際にそれを気にするのは、本当にキョーちゃんを選んでからね、だからまだでしょ」
うん、そこまではまだ行っていない。
「モーヒトツハ?」「多分こっちが合ってると思うけど、リョーちゃん、キョーちゃんに何か負い目というか、素直に受け入れられない何かがあるでしょ」
「な、何かって」「つっかえてるものよ、喉に刺さったトゲみたいな」「OH! シタギヌスンダトカ?」「してないしてない、最後に会ったの小4だったし」
「小4でも盗むでしょ」「ショーヨンダカラコソ、ヌスムデSHOW!」「そういうのじゃないから! でもまあ、うん、鋭いなあ、とだけ言っておきます、はい」
これ以上は、
掘り起こされたくない。
「それでリョーちゃんは、その『引っかかり』を取りたい気持ちはあるの?」
「うーーーん、触れられたくない」「untouchableデスネー」「そっとしておいた方がいい?」
「ですね、こればっかりは言いたくない」「それはキョーちゃんを選んだとしても?」「……ノーコメントで」
そもそもまだ誰も選んでない、
それどころか、選ぼうとすらしていないから。
「わかったわ、私はここまで聞ければ満足よ」「陽菜ちゃん的に?」
「どうね、おケイさんは?」「リョーイチ、気を紛らわしたかったらMEとお話しまショウ」
「う、うん、ありがとう」「じゃあリョーちゃん、私からは以上よ、今日はね」「ワタシは今日はリョーイチ当番death!」
あっそうだった、
そしてその言い方!
「今日はもうお風呂に入るだけだから、大丈夫だから」
「ワッカリマシタ、マタネ、リョーイチ」「明日は私が当番よ」「はい陽菜ちゃん」
「デハgood night!」「また明日、リョーちゃん」「おやすみなさい、ケイさん、陽菜ちゃん」
2人が出て行ったあと、
大きくため息をついた。
「……今更、真実を話してもなあ……」
まあいいや、
お風呂を済ませて、
後はネット見てから寝ようっと。




